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透明探偵物語  作者: アマノヤワラ
13/14

○≧≫13≪≦● 【日曜日の朝】

≈≈≈


≈≈≈


 翌朝。


 朝の光がカーテンを貫き、オレの顔を照らす。

 おかしなことが起こった翌日にも、普通に朝は(おとず)れるものだ。少し夜ふかししてしまったオレは、まだ眠たい目をこする。

 今日は日曜だ。

 もう少し寝よう。


 そう思ったオレが、またベッドで布団をかぶり直すと、


「……(おどろ)いたわ。まさか幼なじみのあんたに『()()()()()』があったなんてね」


 寝ているオレの顔の真横から(つむぐ)の声が聞こえた。続けて耳の穴の中にフッ…と息を吹きかけられて、オレは思わず布団から跳ね起きる。

 上半身だけを起こしてベッドの端を見ると、床の上に横座りして両肘(りょうひじ)をオレのベッドにつけて体を預けた(つむぐ)が、眠そうな目でオレの顔を見上げている。


「………なんでいる?」


 息苦しくなるほどオレの心臓が激しく鼓動(こどう)を打つ。

 部屋の窓にもドアにもちゃんと鍵がかかっているハズだ。昨日オレの『趣味の時間』を誰にも悟らせないために、戸締まりを念入りに確認したのを覚えている。

 しかも、セリフから(さっ)するにこいつ(紡)はオレの秘密をすでに知っている!


「……なんでいる!」

 もう一度同じセリフを、オレは繰り返した。


 オレのベッドに肘をつけて頬杖をついていた(つむぐ)は、眠そうな顔にニンマリと笑顔を浮かべる。

 すごく面白そうなオモチャを見つけた子供のような笑顔だった。


「……一体いつからわたしが『この部屋にいない』と錯覚(さっかく)していた?」


「なん…だと……?」


 オレと(つむぐ)は、二人に共通する聖典(マンガ)の名ゼリフを応酬(おうしゅう)し合った。オレ(がわ)には『趣味を幼なじみに知られた…』という危機感と恥ずかしさもある。オレの全身を脂汗(アブラあせ)が伝い、緊張のあまり手のひらが(かゆ)くなってきた。


「……当然、『わたしの秘密』をバラしたら『君の秘密』もバラされる。その点はいいかな?ワトソン君…」


 ニヤニヤ笑いながら(つむぐ)はオレに言った。


 こんなゲスなホームズ見たことない。

 自分の秘密を守らせるために、逆に相棒(ワトソン)の弱みを握ろうとするホームズなんて…



「なんか変なことになっちゃったな〜って人知れず悩んでたんだけど、こういう『使い道』があったとはね〜。これから楽しくなりそうだわ……。

これからもよろしくねワトソン君!」


 オレに向かってそう言った後でニンマリ笑った(つむぐ)は、『両手のキツネさんをチュー』させて忽然(こつぜん)と姿を消した。

 カチッガラガラ…っという音がして鍵をかけていたはずの部屋の窓が空き、ピシャッ…という音とともに窓が自動で閉まる。

 (つむぐ)がオレの部屋から出ていったらしい。


 ……紡はいま、透明なまま窓を開けて出ていった。

 つまり、何らかの方法で『キツネさんのチュー』を継続したまま窓の鍵を開けたか、もしくは『キツネさんのチューを一旦(いったん)解除しても透明状態を継続できる』方法を、(つむぐ)は自分で編み出したらしかった。


 オレは無言で(つむぐ)が出ていった窓の鍵をかけ直す。そして大きく息を吸う。

 どうやら、こいつ(紡)は、(こいつ)が一番手に入れちゃいけない力を手に入れてしまったようだ。


「うああ゛ァーぁぁぁぁ…ぁぁ…ァァ゛ッ………!!」


 ()()()()()()()()()()()()『秘密』を(つむぐ)に知られてしまったオレは、部屋の中で(けもの)のような咆哮(ほうこう)を上げる。


「うるさいよ、健太郎!」


 一階から母親の声が聞こえた。


 オレは(まくら)に顔を(うず)めたまま、ベッドの上で体をねじり、しばらく身悶(みもだ)えを続けた。



…To Be Continued.⇒14

≈≈≈


≈≈≈

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