○≧≫10≪≦● 【常識的見地と感情的反応】
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「結論から言うと、科学的にはありえない、としかオレには言えない」
常識的見地に基づきつぶやくオレ。
「実際なっとるやろがい!」
感情的反応に基づき怒鳴り返す紡。
オレにそんなこといわれても。
「とにかくあんたに望むのは、一刻も早くこの現象の謎を解くことよ」
どうやら紡は自分の身に起きたことなのに、自分で考えることをすでに放棄したらしい。
「……一回見ただけで分かるわけないだろう。ある程度の経過観察が必要だ」
わりとマトモなことをオレは言ったと思う。幼なじみの身の上にこういうことが起きれば、普通もっと動揺するに決まっているのだ。
役に立たないワトソンね、とシャーロック・ホームズの物語を一度も読んだことのない紡はオレのことを評した。
こんな謎、ホームズにだって解けやしないと思う。
「とにかく、他の人には言うなよ。家族にもな」
ただでさえ変人なのに、さらに透明になれるなんて。こいつの人生はこれから一体どうなってしまうのか。
「……そうね。実験動物にされてコードに繋がれて電流を流されちゃうものね」
なんでそう思ったのかは知らないが、オレの言葉を聞いた紡は、真剣な表情で頷いた。
「自分からバラさなきゃ多分、一生バレないと思うけどね。『わたし両手で作ったキツネさんにチューさせると透明になるんですよ』、なんて」
オレは、自分で言ってて馬鹿らしくなった。
ただ、唯一の不安要素は、紡本人である。遣らなくていいことを遣り、言わなくていいことを言ってしまうのは、紡の本能のようなものだ。
「……裏切るなよ。もし他人にバラしたら…わかってるな?」
急に、マフィアのようなセリフと口調で、紡はオレに向けて言った。
「裏切らん」
自信満々でオレは紡に請け負う。
『オレの幼なじみ両手で作ったキツネさんでチューしたら、消えるんですよ(笑)』
なんて人に話せるわけないではないか。
オレの方がおかしいと思われてしまう。
…To Be Continued.⇒11
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