表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/42

24◆ごめんなさいのお茶会

オディールに化粧をされた三姉妹はいつもとは違う美しさである。

闇夜を照らす月のように静かな神々しさのディアナ、まだ誰も踏み込まぬ雪原の清らかさのスノー、賑やかな色合いの花畑のようなフローラ。

三姉妹の変身ぶりに夫人は何故か大笑いをする。


「なによお母様、笑ってないで褒めてくださらない?」

「なんでツボってるのよお母様」

「ダメよお姉様たち、放っておいてお茶を始めましょう」


スノーがオディールにお詫びのお茶会を開くことにしたのだ。庭園の真ん中にテーブルを用意させたので、これからみんなで移動するのである。

姉妹たちに続こうとしたオディールの腕を掴み、夫人はさっと柱の陰に連れ込んだ。先ほどとは打って変わった真剣な顔だ。


「ごめんなさいね、本当に。侯爵には私から説明して、ローレンス様にもお詫びするわ」

「いらん。言う必要もない。私は何も損じていない」


きっぱりと断言するオディールを夫人はじっと見つめている。

スノーが放った感情的な言葉など、オディールを少しも傷つけないのだ。それはきっと、彼女には確固たる自分があるからだ。


「あなたならアルゴンドラ領主の妻としてしっかりと支えることができますわね」

「さあな、それはわからんよ」


にい、と口の端だけ笑ってみせてオディールは娘たちの後を追う。

少し離れてそれを見ていたマリアは、どうしてあの人はいちいちやることがかっこいいのかと笑っていた。


「オディール様もめいっぱいおしゃれされたらいいのに」

「そうですわ!ローレンス様を驚かせてさしあげましょうよ」


どういうわけか婚約者がオディールだとバレており、話題は自然とその話になる。


「いや、今の私のテーマは「ひっそりと目立たず」だ。テーマを変更するつもりはない」

「なぜですの?」

「わかったー!あんまりお綺麗にすると男性から言い寄られて、ローレンス様がやきもちを焼くんですわね!」


無邪気なフローラの言葉にオディールは驚きである。侍女として後ろに控えているマリアも一瞬変な声が出た。


「すごいな、無い発想だった」


オディールは自分が美しく装ったところで、万が一誰かに言い寄られても、口を開けば去っていくだろうと思っている。ローレンスが焼きもちというのも、オディールにとってはあり得ない話だ。


「ヒッヒッヒッ、楽しそうだな娘たちよ…」

「お帰りなさいませお父様」


いつもとは何だか雰囲気の違う娘たちにサイモン侯爵は驚いたが、夫人が「あとで」と耳打ちし、この場では何も問わずにいることにした。

後ろから続くローレンスは姉妹たちを一目見て破顔する。


「オディール嬢の仕事だな」


ローレンスの笑顔に姉妹たちは舞い上がる。ワイルドなイケメンの笑顔は決まった相手が居ようがなんだろうが滋養に良いのである。

そんな様子を見ていたオディールはマリアにこっそり耳打ちする。


「あのアルゴンドラ辺境伯が美女にニヤニヤしているぞ」

「違います」


今あなたの仕事と言ってたではないかと激しくつっこみたいマリアである。


ローレンスとサイモン侯爵の椅子も用意され、賑やかな茶会となった。その日の天候は一日中崩れず、日が傾くまで楽しむことができた。

オディールはサイモン侯爵の前なのでYES・NOモードに切り替えようとしたのだが、やかましい娘たちがあれやこれやと聞いてくるのでそれもできず、いつもの貴族令嬢らしからぬ彼女のまま話していた。婚約者であることもバレているので、オディールは「もう知らん」の心境だ。

サイモン家の娘たちと楽しそうに話すオディールに、ローレンスは目を細める。いつの間にか婚約者であることも伝わっていたので懸念事項もなくなった。ここでもやはり、自分が言ってしまったことには気付かないローレンスなのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ