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1◆冷酷無比で変わり者な辺境伯への嫁入り話

すぐに終わるかと思いきや長くなってしまったので、ちょいちょい投稿していきます。

「ほう?冷酷無比で変わり者な辺境伯との婚約を、ミアーラではなくこの私にさせたいと。こう仰るのだな父上は」

「オディール、お前はもう少し貴族の娘らしい態度をしろというに」


ロッテンバッハ伯爵は屋敷の執務室で娘のオディールと向き合っている。

彼女はアイラインをキツく引き、深いブルーのアイシャドウがひんやりとした表情を作る。貴族令嬢の化粧にしてはあまりにも尖っている。

妹のミアーラはどこに出しても恥ずかしくない花のようなレディに育ったというのに、教育方針は特段変わらないオディールは何故か、父親と話すときに仁王立ちをするような娘になってしまったのだ。

昔から口やかましく淑女らしくしろと言っていたがこんな娘なので聞きやしない。


怒りが頂点に達した時、ついに伯爵は「お前みたいな恥ずかしい娘はロッテンバッハ家から嫁には出せん!修道院へ入れる!」とオディールに言い放った。ここまで言えばしおらしくなるかと思いきや「そいつはいい。私も貴族社会には向かないと思っていたところだ。意見が合うな父上」などと宣い、淑女教育の一切を投げ捨て、興味のある分野ばかりに没頭し始めた。とんだ不良娘である。


「私は修道院へ入るのではなかったか?言ったことを違えるのは承諾しかねますなぁ父上」


愉快気に口の端だけを上げて笑いオディールは言う。ロッテンバッハ伯爵は娘と話しているにも関わらず、狸爺と交渉している気分である。

もういい下がれと怒鳴り退出させたいところだが、今日はそうもいかない。

ロッテンバッハ伯爵はなんと国王の不興を買ってしまったのだ。

とある他国との取引に不正が発覚し、ちょっとした事件になったのだが、なんとその事業に出資してしまっていたのだ。もちろんロッテンバッハ家が進んで不正を行ったわけでもなく、どちらかと言えば巻き込まれた形なのだが、関係者は大なり小なり全て処分されることとなった。

ロッテンバッハ家は「小」の方ではあったのだが、その処分が「冷酷無比で変わり者なアルゴンドラ辺境伯へ娘を嫁がせる」というものだった。


なぜ国王が辺境伯に花嫁を斡旋するのかと言えば、そこはきちんと理由がある。

まず、アルゴンドラ辺境伯は王家の血筋である。偉大なる英雄王ジークフリートの二番目の王子が王領の一部を賜り、アルゴンドラ辺境伯を名乗ったのが始まりだ。尊い身分である。

次にアルゴンドラ領近隣の山や森は魔獣の大量出没地帯であり、魔獣討伐の要所なのだ。安全な場所に作られた王都の兵士は魔獣と戦ったことがない者もいるが、アルゴンドラ領の兵士は体つきから違う本気の討伐部隊だ。視察に行った者が「どっちが魔獣かわからない」と言うくらいである。そんな兵士を束ねるのがアルゴンドラ辺境伯なので、国王は彼に重きを置いている。


そんなアルゴンドラ辺境伯が現在、大規模な魔獣討伐をした報告のために王都へやってきている。王に褒美として何か所望するものがあるかと聞かれ「後継ぎが必要なので結婚をしたいが、なかなか話が来ない」と言ったそうだ。

なんだそんなことかと、王は王妃に伝手で良い所の娘を見繕うように言ったのだが、王妃は微妙な顔をしていたという。


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