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「クレスコ・グランディーネ! お前だ!」


 翌朝、体力の回復した私を訓練場まで送ってくれたのはルストさんだった。

 短期訓練の最終日は合格者20名の修了式だ。

 彼女はその修了式も立ち会ってくれるそうだ。


 既に用意されていた正規軍の礼装に身を包んで修了式の時間を待つ。

 所定の時間になり訓練場の集会場にて終了式典が始まる。


 来賓の挨拶、ルドルス教官の挨拶に続いて、一人一人に修了証書と訓練完了を意味する徽章が与えられる。

 成績下位の者からはじまり私は一番最後になった。

 ルドルス教官の声が響く。


「クレスコ・グランディーネ伍長!」

「はいっ!」


 壇上へと進んで行けば教官が私を待っていた。


「クレスコ・グランディーネ! 成績優秀を持って所定の短期教習課程を終了したことここに認める」

「はっ!」


 敬礼をして証書を受け取る。その後にケースに入った徽章が与えられた。そして、教官に変わって壇上に現れたのはあの人だった。


「続いて、最成績優秀者に勲章を授与します」


 彼女の元には白銀色に光る勲章があった。天に向かって聳える大樹を模したもので、育成訓練における首席修了者に授与されるものだ。一般に〝育緑章(ヴェルダクレスキー)〟と呼ばれている。

 礼装の胸元にルストさんが付けてくれる。


「おめでとう」

「ありがとうございます」

「これからのあなたの活躍に期待します!」

「はい!」


 再び敬礼して壇上から降りて行く時、仲間たちからの割れんばかりの拍手が私を迎えてくれた。

 そして再び聞こえてきたのは敬愛するルドルス教官の声、


「修了おめでとう! これからお前たちを過酷な仕事場が待っている! 本当の戦いはこれからだ!」


 その言葉を受けて私は無意識のうちにこう叫んだ。


整列(ヴィチージ)!」


 即座に2列横隊に並ぶ。


敬礼(サルーティ)!」


 私の号令で20人全員が一斉に敬礼した。

 壇上から私たちを見下ろすルストさんが真剣な表情で私たちに告げた。


傾注(フォークソ)!」


 敬礼を解いて直立して傾注する。私たちの視線の中、彼女は語り始めた。


「2週間の短期育成訓練、無事終了したこと。心から感謝します。ですが状況は待ってくれません。皆さん方にはこのまま次の任務へと入っていただきます」


 異論は出ない。もともと特別任務に必要な人材を短期間で集めて育成するための特訓訓練だったからだ。


「詳細は現段階では開示できませんが、国家軍事機密に関わる重要案件だということは間違いありません。この問題を解決するにあたり、今までにない即攻性と制圧力のある、全く新しい戦闘手段が必要と判断しました。ここにいる20名はその必要性に合致したものたちです」


 壇上の上で、彼女のトレードマークといえるスカートジャケット姿の黒装束が眩しがった。


「皆の奮起が、祖国の将来を左右します! 作戦時においてはより一層の奮起を期待します!」

「はっ!」


 地獄の特訓を乗り越えた20名が一斉に返答する。

 そして最後の言葉は敬愛するルドルス教官からもたらされた。


「この20名はそのまま強襲制圧部隊として編成される。作戦完了まで部隊長は俺だ。そして部隊員のトップとなる第一班長は――」


 その時、ルスト〝指揮官〟とルドルス〝部隊長〟の視線が私へと向けられた。?


「クレスコ・グランディーネ! お前だ!」


 ルスト指揮官の言葉が聞こえる。


「より一層の奮起に期待します! クレスコ伍長!」

「はっ! 必ずやご期待にお答えします!」


 こうして私は自らの適性を見つけた。

 そして私たちはあの事件へと向かう。

 ルスト指揮官の指示のもと熾烈を極めるあの制圧作戦へと。


 そう。ここからの物語はルストさんの物語となる。

 誰もが国家的英雄と讃えるあの人の物語。

 そうこれは旋風のルストの物語なのだ。


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