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「やっと見つけたわね、あなたの適性」

「それはね、精術って術者の体力や生命力を力の源として発動させるんだけど、私みたいに小柄で体格に恵まれてない人間はスタミナ切れを起こしやすいのよ」


 意外すぎる欠点に私は驚いていた。


「だから優れた精術使いは比較的体格のいい人やがっちりした体つきの人が多いの。私の場合それに加えて背が低くて体格も華奢だから武器に頼ることもできない」


 彼女は過去を思い出すように目線を上に上げた。


「だから、精術の精度を上げる努力をしたの。少ない体力消耗で少しでも多くの威力を出す。そのために人の何倍も鍛錬を重ねた。より難易度の高い精術学を学ぶために軍学校からドーンフラウ大学に出向を願い出て難しい条件を乗り越えて学ばせてもらった。

 でもあの当時、小娘のわがままだと理解してくれる人はなかなかいなかった」


 彼女の言葉は続いた。否、努力は続いた。


「軍学校を卒業して軍に配属直前となった時も、実家の親から結婚を強要されそうになった。そしてそれまでの積み上げたものを全て捨てて家出した」

「それで傭兵に?」

「まぁ、そこまで行くまでに色々あったんだけどね」


 私の中で彼女に抱いていた〝才能に恵まれた人〟と言う色眼鏡が砕けた瞬間だった。

 その時彼女の口から意外な言葉が出てきた。


「だからね。今回の短期の特別訓練で一人だけ女性が志願してきたと聞いて、いてもたってもいられなかったの。そして都合をつけて最終訓練に立ち会った。そして迎えたあなたの番、岩場の上で引き金を引き続けるあなたを見て私はこう思ったの」


 ルストさんは私の顔をじっと見つめてこう口にした。


「『ああ、あそこに私がいる』って!」


 その言葉が私の心を撃ち抜いた。そして同時に自分の思い込みがどれほど矮小なものなのか思い知った。


「大雨にずぶ濡れになっても引き金を引き続けるあなたは、誰にも頼らずに精術の研鑽を続けていた昔の私と同じ! 同じなの!」


 そして彼女は私を抱きしめてくれた。


「よく乗り越えたわね!」

「は、はい……」


 万の褒め言葉よりもその一言が何よりも嬉しかった。


「ありがとうございます」


 私の頬を大粒の涙が伝う。


「やっと見つけたわね、あなたの適性」

「はい」

「あなたの人生はこれからよ」


 私は彼女に憧れたことが間違えてなかったと思い知った。

 

「クレスコ」

「はい」

「これからも前を向いて努力を続けて。必ずそれに運命が報いてくれる時が来るから!」

「はい!」


 私の心を覆っていた黒くもやもやしたものが吹き飛んだ。

 彼女の名前はエルスト・ターナー、またの名を〝旋風のルスト〟

 今この国で最も名のある国家的英雄

 そして、私の憧れの人だ。


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