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第21話 キラーアントン

第21話 キラーアントン


地面が振動し、建物を揺らす。次にドーンと音し窓がガタガタと揺れる。

サトルは、ついに来たかと、起き上がり変身スキルで金髪エルフに姿を変える。

ロガスは今頃、火魔法で集合の合図をして、待機していた者に警戒の指示を出しているだろう。

サトルは、扉を開ける、コトリ達が出てきた。

コトリは、眠い目を擦りながら

「お兄ちゃん、蟻が来たの」

「間違い無いだろう、コトリちゃん達の力を借りるのは日が上がってからだよ。

もう少し寝ようね」

「うん、わかったの」

「お使い様、私達は目が覚めました。出来る事はありますか?」

サトルは、部屋から出て来たマーサと目が合い会釈する。

「城壁で戦っている人の朝食を頼む、片手で食べられる、ホットドックが良いな。

「ホットドック?」

「ふわふわパンにオークのハムと野菜を挟んでマヨネーズを掛けた物だよ。

後はスープも大量にお願い」

桜達は、マーサと朝食作りを始める。

サトルは、ナビに乗り、アップルを従え城壁に飛ぶ。

今日の警戒待機をしているのは、ロガスと奇数番号の者だ。

ロガスは、城壁が揺れると飛び起き素早く皮の鎧を着ると、城壁の上のお立ち台に立つ。ゴーグルを掛け暗視機能で坑道の方を見る。

赤い目が無数に見える、射程距離迄くるのはもう暫く掛かるだろう。

気をつけるのは、空からくる羽蟻だ。

待機していた7人が銃座に着くのを確認したロガスは大声で指示する。

「全員よく聞け、まず、ゴーグルを掛けろ。

自宅待機の者が来るまでは、空から来る羽蟻を警戒しろ、見つけたら大声で

報告しろ。良いな」

「「おーお」」


サトルが城壁の上に降り立つ。

「ロガスさん、どうな具合だ」

「偶数番号が来るまで、上空を警戒している。キラーアントンここまで来るのに暫く掛かると思う」

「では、もう少し詳しい状況を見ようか」

「ナビ、キックボードを飛ばしてキラーアントンの動きをスマホの画面に映してくれ」

「了解」

スマホの画面に無数に赤く光る目が段々と近づいて行く。画面を覗いていたロガスが驚きの声をあげる。

「お使い様は、これは!」

「ナビの特殊スキルだ、秘密だぞ」

「ああ、分かった。お使い様の持つ喋る魔導具は色々できるんだな」

サトルは、怒気を荒げ

「ナビとアップルは、俺たち同じ魂を持つ者だ、物扱いすると怒るぞ」

「すまない、俺たちと同じなんだな」

キックボードが近づきにつれ、数の多さと兵隊アリ以外の個体がいることがわかる。

「ロガスさん、兵隊アリより大きい約3mの軍曹アリ、その先に約6mの将校アリ、約10mの将軍アリもいる。厄介だな」

「見えない矢の魔導具で将校アリ、将軍アリは倒せるか?」

「将校アリは、数打てば倒せると思うが、将軍アリは無理だ、俺達が倒す」

「お使い様、ナビさんありがとう、この情報で指揮が取り易くなった」


偶数組が到着して、指定の銃座につく。

ロガスがお立ち台に立ち

「おーい、偶数組は注目、奇数組はそのまま警戒をしながら話を聞いてくれ

偶数組は、深呼吸して息を整えろ、はい、吸って、吐いて・・・・

良し、次はゴーグルを掛け暗視モードにして前を向け。

敵は、見ての通り大量だ、兵隊アリの他に軍曹アリ、将校アリとデカブツの将軍アリがいる。

お使い様の話では、軍曹アリは魔導具で1発だ、将校アリは数撃てば倒せる。

将軍アリは、お使い様達が倒す。

お前達の獲物は将校アリまでだ。お使い様達の獲物を横取りするな。良いな」

「「うおーす」」

「俺達は町を守る。続けて言え」

「「俺達は町を守る」」

15人の野太い声が響く

「俺達、大切な人を守る」

声が小さい、もう1度

「「「俺達、大切な人を守る」」」

声が小さい、もう1度


「「「「「・・・・・俺達、大切な人を守る・・・・・・・」」」」」


この声が夜の静まった町の中に響き渡る。

家で待つ者は、戦場に立つ者が必ず勝って、帰って来ると信じる。

7番から報告「兵隊アリ1匹が200mラインを通過、その後に多数の兵隊アリ」

ロガスが命令を出す

「全員射撃準備、自分の真正面の敵に照準、3、2、1、攻撃開始」

ショットガンから、弾が発射されるとシューと言う音が夜空に響き渡り、音が出る度に赤い目が消えて行く。


1番から報告「撃ち漏らしたアリが150mラインに到達、攻撃して良いか」

ロガスがサトルに

「お使い様、頼んで良いか?」

「任せろ、撃ち漏らした敵は、俺達でやる。当面今の攻撃を続けてくれ」

「頼む、撃ち漏らした敵はお使い様が倒す。真正面の敵を攻撃」

サトルはナビに乗り城壁の上から飛び立つ。

『アップル、150m付近の左側の撃ち漏らした敵を攻撃、止めを刺す必要はない

無力化できれば良い』

『了解、アップル行きます』

「ナビ、俺たちは右側、射程距離100mの上空から攻撃、味方の射線に入るなよ」

「了解、ナビ行きます」


アップルは、城壁から150m付近の上空から数十のアリを見て。

(流石に200m先の命中率UP 50%では撃ち漏らしがあるな。100mの距離なら

命中率100%、すぐに終わらせる)

アップルは、アリの頭に照準を合わせ徹甲弾を次々と打ち込む。


サトルとナビは城壁から右側150m付近。

「オーナー撃ち漏らしは100を超えています」

「15番が欠員のせいかな、俺達二人で充分だ、ナビは主に左側を頼む」

「了解」

サトル達も、アリの頭を次々と吹っ飛ばす。

アリの第一陣約1000体を殲滅して、今は、アリの動きが止まる。

夜が明け、城壁から150mから200mの地点。朝日がアリの外皮を反射してキラキラ光る。

まだ息がアリは尚も前に進もうと蠢く。

そのアリにシューと音がして頭が吹き飛ぶ。

ショットガンに魔力を注入していたサトルから叱咤の声が届く

「止めを刺すのは、全てが終わってからだ。魔力は無限じゃない」

止めを刺していた9番から返事がする

「はい」

サトルは、全員を見渡しロガスを見る(緊張が続いている。まずいな)

「ロガスさん、全員に休息命令を。ロガスさんも休息を、警戒はナビとアップルがする」

「気が付かずにすまん、全員休息、水を飲んで一休みしろ」

2時間が経過したが、キラーアントンが進撃する気配を見せない。

マーサさん達奥様方が朝食を配り始めた。

戦闘で目一杯腹をすかせていたサトル達は、ホットドックを旨そうに食べる。


桜がサトルに戦闘状況を聞く

「お使い様、嫌に静かですが、状況はどうですか?」

サトルは返事する為、ホットドックを飲み込む

「1時間前に軍曹アリが整列した後は、動きが全くない、ナビとアップルが空から監視しているんだが」

「不気味ですね」

サトルも何か、引っ掛かっていて

「桜達は、アリの軍団を見て何か気づかないか?」

コトリが腕を組みいつもの考える仕草をする。

「お兄ちゃん、道から兵隊アリ飛びだして馬車が襲われたよね・・」

「それだ、ありがとう。確認する」

『ナビ、すぐ戻れ』『了解』

サトルは、ナビに乗り50m付近から地上走行に切り替えて、ナビが魔力感知を

最大にする。

サトルは、75m付近で飛び降り土魔法で地面の中に壁を作り始めた。

『アップル、ロガスへ伝言(戦闘準備、アリは地下から来る)コトリ達には(力を貸してくれ)と伝えて』

『了解』

アップルはロガスに伝言を伝える。

アップルは、コトリ達を乗せてサトルの上空に転移し、援護の体制に入る。


一方ロガスは、お立ち台に座りながらホットドックをほうばりながら、サトル達が地面をゆっくり進んでいるのを訝しながら見ている。

突然アップルが目の前にあらわれて、驚きホットドックを吹き出す。

「ロガスさん、お使い様から伝言(戦闘準備、アリは地下から来る)」

「えーなんだって」

「ロガスさん、すぐに戦闘準備を指示して、地下からアリが来る、早く」

アップルはコトリ達を乗せ飛び立つ。

ロガスは、理解が追いついていないが

「全員戦闘準備、銃座に戻り魔導具を構えろ」

戦闘員の動きは鈍い、その時、ドカーンと音ともに地下の壁にぶつかった兵隊アリが地面から次々と飛び出し来る。


慌てた戦闘員は闇雲に撃ち、上昇中のサトルの結界に当たリ跳ね返る。

サトルは、精霊のお守りの自動発動魔法の結界に感謝した。

ロガスは、混乱している戦闘員に

「落ち着け、深呼吸しろ、そして、目の前のアリを見て引き金を引け」

「お前ら、次にお使い様に当てたら、キラーアントンより怖いお仕置きがあるぞ

落ち着いて、アリを攻撃しろ」

戦闘員は、苦笑いをして落ち着きを取り戻す。


先頭を進んでいたアリは、壁にぶつかり後ろから途絶える事のないアリに押し潰された。

限界を越えた圧力に、地面が吹き飛び一斉にアリが飛び出す。アリ達は後ろから押され前々へ進むそこには、城壁から徹甲弾が無数に飛んできて、アリの身体が吹き飛ぶ。

ただ、倒した後からアリが続々と続いている。


アップルはアリで黒く光る大地に向け並列処理でコトリ達の数倍の速度で徹甲弾を打ち出す。

「コトリちゃん、アップルに魔力を補充して」

「うん、分かったの、いくよ」

「コトリちゃん、私達のショットガンにもお願い」

「うん、分かったの」

桜は(城壁の上の戦闘員の魔力は大丈夫かしら)


「サトルさん、城壁の上で赤旗が上がり始めました」

「魔力切れか、ナビに魔力を注入。ナビ、自分は魔力を注入する為、転移する。

ナビは戦闘継続、頼む」

「了解」

サトルは、城壁の上に転移して赤旗が上がった者のショットガンに魔力を補充して行く。


サトルは(もう2000体は倒した、もう50m先はアリで埋まっている、女王蟻は

どの位の子を産んだのか?だめだ、考えがネガティブな方向にいこうとしている

サトルは自分言い聞かせ叱咤する、前を向け)


サトルは8番銃座脇の凸上に立ち、14名の仲間達と共に、アリを撃ち始める。

それを見ていた14名は奮い立つ(俺達には、お使い様とその仲間がついている

負けない、大切な人を守るんだ)

14名は、ただ真直ぐ前を見て、冷静に引き金を引く。

城壁のサトル達15名は正面から来るアリのみを見ている。

アップルとコトリ達は、黒い絨毯のように迫ってくるアリを狙い違わず頭を撃ち抜いて行く。

ナビは、城壁の上に立つサトルは心配しながら、眼下の敵を撃っている。


誰も空を見ていない。


黒い塊は山頂を突き破り、一直線にアリ達の一番の脅威であるアップルに向けて飛んで行く。

アップルはリソースの全てを並列処理で射撃にまわしている、だから発見が遅れた。

アップルが急に結界を張る、コトリは眼下のアリから目線を前に向けると黒い物が目の前に現れ、ガン、ガン、・・・ガシーンとアップルの結界が破れた同時に金色に輝くコトリのLV7の結界が展開されアップル達を球状に包む。

アップル達は気がつくと全方位、羽蟻に囲まれていた。アップル達は今は徹甲弾を羽蟻に撃つしかない。

サトルは、転移でナビに飛び乗り救援に向かう。羽蟻は渦を巻くようにアップルを取り囲み離さない。

『アップル、コトリ達は大丈夫か?』

『サトルさん、コトリちゃんの結界で今は持っていますが、魔力の消費が激しいです』

サトルは、コトリを誤射したらと思うと手が出せない。

どうすれば・・・何をすれば・・・助けられる・・・

サトルは、神など居ない事は知っている。

だから、願った。縋る思いで精霊に、コトリを助けて、俺はこの世から消えても良いだから、コトリを助けて、必死に祈る。

サトルの体から精霊の加護光が溢れ出し、光はサトルの右手の甲の集まる。

その光は一直線の羽蟻の中心にいるコトリの右手の甲に当たった瞬間、コトリを中心に光が爆発する。

何百、何千と数え切れない羽蟻は吹き飛び、次々と落下する。

薄暗くなっていた空間は、光りをとり戻す。


アップルは気を失ったコトリを乗せ城壁の上に着陸する。

マーサが駆け寄り、コトリを抱く。

サトルは城壁に転移して、コトリを抱くマーサに近寄り、コトリの頭に手を乗せ魔力を譲渡する。

マーサが非難するように

「お使い様なぜ、コトリちゃんを戦いに参加させたんですか」

サトルは、静かに

「コトリは、巫女としての自覚から戦う事を選んだ」

「こんな小さい子、なぜ止めないんですか?」

コトリが目を開け

「マーサおばさん、ネグロ将軍におじいちゃん、お父さん、お友達を殺されたの

コトリは、精霊様の巫女なのに何もできなかったの。

だからね、マーサおばさんもロガスおじさんも誰も死んで欲しくないの。

精霊様の巫女として戦うの。大好きな人を守る為にね」

コトリは笑顔でマーサを見る、マーサは笑顔の中に涙が光る。

「お兄ちゃん、精霊様が間に合うと言っているよ」

サトルは、ただ、頷く

「マーサさん、コトリちゃんを頼みます」

サトルはマーサの返事を聞かず立ち、城壁の上から徹甲弾を撃ち始める。

城壁から先は、アリの死骸が何段も積み重なった頃に漸く兵隊アリの進軍が止まる。

軍曹アリ、将校アリ、将軍アリが整列しているのが見える。

何かを待っているように。


ロガスから

「全員、戦闘体制のまま休息、水を飲め」

マーサ達奥様方が待避所から出てきて、冷たい水を配り始める。

アップル達も戻り、桜達は砂糖を一杯入れた冷たい紅茶を飲む。

サトルは、2つ目の青い実を食べ、渡された紅茶を飲みながらショットガンに魔力を注入して行く。

サトルが叫ぶ

「全員戦闘準備、アリ達が動き出した」

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