第20話 訓練とロダン
第20話 訓練とロダン
台所から朝食の準備の音が聞こえる。
マーサ、コトリ、桜、向日葵の笑い声が聞こえる。
「マーサおばさん、膨らんだでしょう。これを焼くと桜お姉ちゃんのお胸みたいにふわふわパンになるの」
「コトリちゃん、男の人の前では、ふわふわ禁止です。メーです」
「ここは、女の子しか居ないから、大丈夫なの」
「コトリちゃん、やっぱり、人前でふわふわ禁止です。恥ずかしいです」
また、みんなが、笑い出す。
・
朝食が終わり、サトルとロガスは訓練の打ち合わせをしている。
「カロンさん、15名の根性のある者を集めた。訓練場所は廃坑道の前の広場だ」
自慢気にロガス言う、
「ロガスさん、魔導具の数が足りないが、魔結晶の追加はあるのか?」
「シーダブル商会が運んで来た荷の中にあるそうだ、午後には手に入る。
すぐに魔導具は作れるのか?」
サトルは、自信たっぷりに
「大丈夫だ、俺の生産系スキルは強力だ。
女王蟻の倒す目処がたった、ロガスの父上に合わせてくれ」
ロゴスは、驚きと期待に満ちた顔で
「本当か、今すぐに親父に会いに行こうか?」
「いや、試作品を試し打ちを見てもらい、何がしたいのか理解してもらう必要がある。
訓練所に来てもらえないか?ロガスさんも確認したいだろ」
「親父も15名の一人だ。訓練所で紹介する。ぬか喜びしたくないから試し打ちを俺も見たい」
「話は変わるが、コトリ達の町の案内は誰がしてくれる」
「マーサが、案内する。事情も知っているから好都合だろ」
「助かる、ありがとう」
・
サトルは変身スキルで金髪エルフに変わり、緑色の服にゴーグルを掛ける。ロガスと共にアップルに乗り訓練所に行く。
そこには、屈強なドワーフ15人がいる。サトル達が降り立つと一斉に片膝を立てる。
サトルはこの様子を見て、自分は大した人間でないのに。
「みんな、立ち上がってくれ、堅苦しいの苦手だ、キラーアントンと戦う仲間の一員と思ってくれると、ありがたい」
「「うおーす」」と低い声と共に15人は立ち上がる。
「ロガスさん、打ち合わせ通りに、頼む」
「ドワーフの勇者よ、左から順番に番号を言ってくれ」
15人は顔を見合わせ、意味が分からずいる。
ロガスはもう一度、大声で
「左から順番に番号を、大声で」
15人はとりあえず番号を言う
「1、2、3・・・14、15」
「よし、この番号が戦闘時のお前達の名前になる、この時だけは親から貰った、立派な名前を忘れるように」
15番が代表するよう
「ロガス国王、これになんの意味がある」
「オヤジ・・いや15番、千を超えるキラーアントンの前で指揮の遅延が命取りになる、また、お前達の中には似たような名前がある。指示を取り違えない為だ。今の番号を忘れるな。
お使い様から対キラーアントン用魔導具を渡す。
全員知ってると思うが、強力な見えない矢を飛ばす。1番から順番にお使い様から受け取るように。また指示があるまで銃口は上に向け、引き金に触らないように」
最初に魔導具を受け取った1番は、手が震える。
その様子を見てサトルは、他の人にも聞こえるように。
「1番、これは兵隊アリを1発で倒す強力な武器だが、お前が作る切れ味鋭い剣と
同じだ。使い方さえ学べは恐れることはない。自分と大切な人を守る武器と思え」
1番の震えが止まり
「はい、お使い様。俺は守ります大切な人を」
サトルは、10番迄ショットガンを渡す。
「11番から15番は、午後に渡す。午前中は、10番の魔導具を交代して訓練する」
サトルは土魔法で的を作る。
ロガスは、全員を見渡し、
「今から訓練を行う1番から10番は前え進め、目の前に的がある距離は50m。
お使い様から魔導具の使い方を説明する」
サトルは、自分のショットガンを取り出す。
「構えは、ストックを肩にあて、照門、銃身のある凹と先端にある照星凸を的に合わせる、後は引き金を引くだけだ」
「1番前に出て、やって見ろ、的に当たらなくても良い、まずは魔導具になれろ」
1番は、少しぎこちないが構えて
「1番、撃ちまーす」と引き金を引く、弾は見事に50m先に当たる。
周りから歓声が消える、その声で1番は思わず構えたままで振り返る。
サトルの叱咤の声が飛ぶ
「1番、決して魔導具を人に向けるな、銃身を上に向けろ」
1番は、慌てて銃身を上に向ける。
「的とキラーアントン以外に決して銃身を向けるな、それ以外は銃身を上に向けろ。分かったな」
「「はい」」
「2番から順に同じように撃つように」
11番からも10番の魔導具を借り練習する。
・
訓練から1時間経ち休息にする。
サトルは台所の魔導具を出しみんなに冷水を配る。
1番が
「美味い、冷たい水がこんなに美味いとは思わなかった」
2番が1番の言葉に乗り
「エールも冷やしたら旨んじゃないか、お使い様、この魔導具売り出すか」
サトルは
「ロガス国王と検討中だ、全てはこの騒動が終わってからだ」
「違いねえ」
ロガスがロダンを連れてくる。
「お使い様、父のロダンだ」
「ロダンさん、女王蟻を倒すには、あなたの力が必要です。是非、力を貸して下さい」
「お使い様、話は息子から聞いている。早速、試作の魔導具を見せてくれ」
サトルは、試作レールガンを取り出し見せる。
ロダンは、鉄が2本並んだ銃を見て、なん言う不恰好で練習で使った銃より威力があるとは思えない。
「お使い様、本当に女王蟻を倒す威力になるのか?」
サトルは、この2本並んだ鉄だけ見るとそう思うよな。
「ロダンさん、試し撃ちをしましょう、威力が分かります」
サトル達は、訓練場の脇に行く。
サトルはレールガンに弾を乗せる。
「ロダンさん、初めは魔結晶1つを取り付けたレールガンです。約50m先の岩を狙います」
サトルは、レールガンを構え慎重に狙い撃つ。
金属が擦れるシューと言う音がし、岩に当たり跳ね返る。
「お使い様、あの魔導具より威力が無いと思うが」
「はい、魔結晶1つの場合はこの威力です、5個に増やします」
サトルは、岩に狙いを定め引金を引くと、スパークした光とドーンと音がして
岩は粉々になる。
ロガスとロダンは、あまりの威力に唖然としている。休憩していた人がこちらを見て、何事が起こったかと目を大きくしている。
「ロダンさん、ロダン、大丈夫ですか?」
ロダンは、深呼吸して
「ああ、大丈夫だ、この威力なら女王蟻を倒せるじゃ無いか、俺の手はいらないと思うが」
サトルは、レールガンを見せる。
「ロダンさん、打撃力はありますが、女王蟻の外皮を貫く貫通力がありません、
さらに、レールがこの通り真っ赤になって、内側が削れて次は打てません」
ロダンが、刺すような目で、
「貫通力とレールガンの耐久力の問題か?でも、お使い様、この試作品でも上級範囲攻撃魔法より威力ある。恐ろしい物を作ったな」
「これは、世に出しません。訓練で使っている魔導具もです」
「うむ、それが良かろう、わしは、何をすれば良い?」
サトルは、銀龍の槍と針を取り出す。
「ロダンさん、この槍をレールにする為厚さ1cm高さ4cmの板状にして下さい。
針は、弾丸にします。直系3cm先を円錐形に尖らせ下さい」
ロダンは2本の槍を手に取り
「ミスリルかこれなら耐久力は問題無いか、この1本は、凄い魔力を感じる。
なんじゃ、これは」
「銀龍の鱗を貫く為に、魔力を込め硬化の魔法を施しました、腕一本持っていかれましたが」
「お使い様、この槍でドラゴンを。硬化魔法を施した。お使い様、これは難物だ。出来かどうか、いや、やる女王蟻を倒すには、これしか無い」
ロダン真剣な目で、
「ロゴス俺は戻る。この槍と針の加工するにどれだけの時間が掛かるか、分からないからな」
サトルは、四つ葉のお守りにLV1のアイテムバックを付与してロダンに渡す。
「ロダンさん、このお守りを首の掛け、槍と針を触って収納と言って下さい」
ロダンは、説明がないサトルの言葉に訝し乍「収納」と言う。
ロダンは少し驚いたが、意味はすぐに分かった。
「ロダンさん、取り出す時は(取り出す)で、アイテムバックはロダンさん専用です」
「お使い様は、では、わしは加工しに戻る」
サトルとロゴスは、立ち去るロダンを見て
「親父のあの目を見たのは、久しぶりだな」
「一流の鍛治師の目だ」
サトルは、届いた魔結晶でショットガンを作り、11番から14番に配る。
・
この日は、的の距離を100m、150m、200m変え、弾がでなくなる迄続けた。
・
次の日は、ロゴスが、射手の番号言いを指示通りに撃つ訓練する。
・
3日目は、地上の的とアップルが的をぶら下げて飛ぶ蟻に見立てて訓練する。
・
4日目は、的の作成はアップルに任せ、サトルとナビは城壁の強化をする。
・
5日目は、サトルとナビは距離計変わりの塔と城壁に物見台と待機場を作る。
6日目は、完全休養
・
7日目は、ゴーグルを配り、夜間訓練もする。
・
そして、訓練と城壁の強化等をして10日経つ
・
11日目のまだ夜が明ける前、地面から微かに振動する、徐々に振動が大きくなり、ドカーン大きな音と地震のような振動がする。
坑道の口が大きく開き、赤い目がわらわら現れ始める。




