第18話 ドワーフ国と女王蟻
第18話 ドワーフ国と女王蟻
サトル達がドワーフ国に目指して9日目。
最初に泊まった宿には風呂もなく飯も不味い、コトリが明日から野宿用の小さい家で泊まると言い出した。地球人のサトルもその通りだな思い、次の日から宿場町との間で野宿することにした。
サトルは、街道から見えない場所の木を切り10m四方の広場を整地する。
ここに小さな家2棟を置く。
サトルは桜と向日葵に材料を渡し料理を頼む
「今日野菜炒めにしょう、野菜と肉ね、胡椒などは台所のいつも場所にあるから、インスタンスープの素も同じ所」
「お使い・・、カロンさん、今日こそはコトリちゃんに(ちょと変)とは言わせないようにします」
「向日葵、コトリが残さず食べているから、多分お母さんの味付け違うと思っているんじゃないかな。遠慮せずコトリに聞いてみるといいよ」
向日葵は、そうしようと思い料理を作る。
サトルは販売用のキックボードの試運転をコトリに頼む。
シーガスから3日目にコトリがキックボードに乗っているのを見た人族の子爵の息子がどうして欲しいと言い出した。サトルは子爵に試作品で運転が難しく怪我をするからと断ったが、なお取り上げ用としたので、ドワーフ国で改造した物を金貨50枚で売ることにした。子爵の5歳ぐらいの子にはチョコレートを渡しご機嫌を取ったが。
横暴な貴族の事、金貨50枚を払うかは疑問だが?
「うん、わかったの」
この販売用キックボードは、ホバークラフトの原理で、風魔法を地面に吹き付け浮かせる、キックボードの周りに結界LV1を張りスカート代わりにしている。
吹き付け後の風は、ゴミ箱(魔素の戻す)に入れている。
コトリは、広場の真ん中に置いた家の周りをキックボードで走り始めた。
暫くして、コトリは満足気に
「お兄ちゃん、変な横滑りをしなくなったよ、これで良いと思うの」
サトルは、冷たい水の入ったコップを渡し
「コトリちゃん、ありがとう。これで完成にするよ」
コトリは、目を伏せて
「お兄ちゃん、コトリ迷惑をかけたの?」
コトリなりに心配していたのかと思い
「全然、そんな事は、無いよ。これで、コトリが気兼ね無くキックボードに乗ることが出来るようになって、嬉しいよ」
コトリは、うれしそうに水を飲んだ。
・
翌日、魔結晶の数を増やした量産型のキックボードをコトリに渡し、耐久試験を
してもらっている。
ナビから念話が届く、
『オーナー、凄いスピードで数台の馬車がきます』
『ナビ、先行偵察』
『アップル、周囲を警戒』
『『了解』』
「コトリちゃん止まって、戻って来て」
コトリは、左足で地面を蹴りながら、戻ってくる。
「ナビから連絡で、数台の馬車がこちらくスピード出して来ている、危ないから
道の脇で待つことにするよ」
「うん、わかったの」
桜、向日葵も頷く。
『ドワーフ国の城壁にキラーアントンの群れが押し寄せています。馬車はキラーアントンから逃げ出した模様』
『ナビ、こちらに来る可能性があるか』
『オーナー、街道の地面からキラーアントンの歩兵アリが次々と飛び出して来て、馬車を追いかけ始めました』
『ナビ、キラーアントンの駆除開始、馬車を守れ』
『了解』
『アップルは、戻って俺達を乗せ上空から攻撃する』
『了解』
サトルは、コトリ達の不安な顔見て説明する。
「キラーアントンが馬車を追いかけてこちらに来る、俺達はアップルに乗って
上空から攻撃する」
以前作ったショットガンを改造した物をすぐコピー機能で作り桜、向日葵に渡す。
「桜、向日葵、このショットガンは徹甲弾を120発撃てる、キラーアントンを倒してくれ」
「了解」
「お兄ちゃん、コトリも戦いたいの」
サトルは、コトリの決意の目を見て、
「分かった、拳銃タイプを渡す、人には決して向けない事」
「うん、わかったの」
サトル達は、アップルに乗ってキラーアントンの群れに向かう。
・
俺は、シーダブル商会の3番番頭。トミラで仕入れた蒸留酒、エール等、ドワーフが喜ぶ物をシーガスから運んできた。キラーアントンが城壁に群がるのを見てなんとか馬車を反転して逃げだした。先頭にいた俺は最後尾。馬車の速度は落ちるが護衛の冒険者を見捨てる選択肢はない。捨子だった俺は、冒険者に助けられて
10歳迄面倒を見てくれて働き口を世話してくれた。
突然、土砂が舞い上がりキラーアントン群れが現れて馬車を追いかけ始めた。冒険者は、前衛が盾と剣を構え、後衛の魔術師がファイヤーアロー、ボールを撃つが、物ともせずに追いかけてくる。
ガッシンと言う音して、2mの歩兵蟻の牙が盾にぶつかる。俺は、膝をつく冒険者を支えた。目の前に俺の頭を食いちぎろうと牙が迫る(クソここで終わりか)と思った時、バシッと言う音がして歩兵アリの頭が吹っ飛んだ。
俺を襲いかけていた兵隊アリが見えない矢で頭を吹き飛ばされている。
「おじさん、大丈夫?」と子供の声がする、俺はなんとか声だし「ああ、怪我はない」と言うと空を飛び板に乗る4人が歩兵アリに向かって攻撃を始めた。
死んだ兵隊アリを見た俺は助かったと思った。
・
サトル達は、道路から見て水平に飛び4人を射線を確保して射撃を始める。
それは、ブルゾーザが土砂を押しのける様に歩兵アリを駆逐して行く。
コトリが拳銃の引き金をカチカチ引き
「お兄ちゃん弾が出なくなったの」
「拳銃を握る所に魔結晶があるから魔力を入れて」
「うん、わかったの」
桜、向日葵は、ショットガンの扱いになれ頭を打ち飛ばし始める。
「オーナー、城壁のキラーアントンが羽根をだし飛び始めました」
「ナビ、飛んでいる蟻を優先排除、町に入れるな」
「桜とコトリちゃんは、地面の蟻を駆除。向日葵と俺は飛んでいる蟻を撃つ。
向日葵、城壁の内側へ射線を入れるなよ」
「「了解」」
サトルと向日葵は飛ぶ蟻を撃つ落とし、コトリと桜は歩兵アリは撃ち抜いて行く。
・
街道と城壁付近には大量のキラーアントンの死体が溢れてる。
サトル達は、城壁の上で指示している男の所に降りる。
コトリ、桜、向日葵は、緊張が解けレベルアップ酔いで気を失った。
「お使い様、助かったぜ、俺はロガス、この国で国王だ。まあ名目だけだが」
サトルは、ロガスを顔を見てロジネに似ているな思う。
「お前ロジネさんの弟か?」
ロガスは驚く、「兄貴とお使い様になんの関係があるのか?」
「そうだ」
「後で話がある。蟻の始末はどうする。埋めるぐらい直ぐだが?」
「できれば一箇所に集めてくれ、後で俺たちが燃やす」
「そうか、俺の家族に近づかないよう指示してくれ、変な事をしたら分かるよな」
「おっかないな。そんな事をしたら、前のお使い様のように国を潰されたらかなわないからな。分かったよ」
サトルは、ナビに乗り土魔法で壁を作りブルゾーザのショベルの要領で蟻を一箇所に集める。
凸凹になった道を整地する。馬車まで行き、安全だから町に入る様に言う。
・
サトルは、城壁に戻りまだ気を失っているコトリ達を見て安心する。
「ロガスさん、あれで良いか。後、荷物を満載した馬車も直ぐ来るよ」
「お使い様、道まで直してくれて、至れりつくせりだな、ありがとうよ」
「コトリ達を休ませたい。風呂付きの宿はないか?」
ロガスは、宿に入れるとお使い様に迷惑をかけるかもと思い。
「うち来いよ、お使い様の活躍を見ている連中が宿まで押しかけるかもしれんし。風呂は立派なのがあるぞ」
サトルは、一理あると思う。
「ロガスさんの言う通りだな世話になる。よろしく頼む。キックボードの一番前に座って案内してくれ」
ロガスは、えーと思ったが、(こんな機会2度とない)と思い乗る。
・
サトル達は、道に沿って並ぶ石造の家を飛び、広い庭を持つ2階建て石造の家が見える。ロガスが「俺に家だ中庭に降りろ」と言う。サトルはキックボードを着陸させる。
キックボードから降りたロガスは
「最初は怖かったが、空を飛ぶのは、気持ちいいな?兄貴も乗ったか?」
サトルは思い出しながら
「あー、確か娘さんの家に行く時に乗せたな。桜と向日葵を起こすか」
サトルは、肩を軽く叩い二人を起こす。
桜はレベルアップの影響があり、朦朧としている。
「カロンさん、ここは何処、私はどうしたんですか?」
サトルは、名前いちゃたな、他の人にはその方が都合が良いかと思い直し。
「桜、向日葵、城壁に上で指示していたロガスさんの家だ。レベルアップ良いで気を失った。休めば良くなる。ロガスさん、部屋はどこだ」
「おぉ、こっちだ」サトル達を2階の客室に案内する。
サトルは、まだ気を失っているコトリを抱き抱え、桜達と一緒に寝かせる。
・
サトルとロガスはテーブルを挟んで向かい話を始める。
「ロガスさん、ロジネさんからの手紙だ、これを読めば何故、俺たちが来たの分かる」
ロガスは、手紙を読み、ロジネから両親とロガスの謝罪と水周り魔導具の贈る事とカロンの信頼を得たら、作成する方法を聞けると書かれていた。
ロガスは、兄が出ていった時の事を思い出す。根っからの職人気質のロジネは名目とは言え、国王になるのを嫌い、両親の説得にも応じず、仲裁の入った俺と殴り合いの喧嘩になった。ロジネは、その日の内に鍛治道具を纏めて出て行った。
ビオネジ王国で腰を落ち着け、結婚と同時に子供ができたと両親には手紙を送ったが、俺には梨の礫。今更謝罪などと思ったが両親の事を考えると・・・。
サトルは、ロガスが読みため息をつくのを見て、ロガスは苦労しているんだなと想像した。
ロジネは、気を取り直し
「名前は、カロンさんで良いのか?」
「その方が都合の良い、旅の商人カロンで頼む」
「カロンさん、水周り魔導具というのを見せてくれるか?」
「ここじゃ狭い、折角だから台所用を取り付けよう」
「えー見もしない物を。なんだか不安でよ」
「お前の兄貴が中途半端な物を両親に贈ると思うか?」
「確かに、半端は大嫌いだったな」
・
台所で食事の準備をしていた女性が、サトルの顔を見ると片膝を立てて
「お使い様、この町を救ってくれてありがとうがざいました」
サトルが、参ったな思い
「立ってください。俺は、堅苦しいのが苦手で、ここではカロンと呼んでください」
ロガスが紹介する
「カロンさん、妻のマーサだ。マーサ、弟子達はお使い様がここにいる事を知っているか?」
「いいえ、まだ、キラーアントンの後始末で帰って来ていないから」
「お使い様の事は秘密に。旅の商人カロンが届け物を持ってきた事にしてくれ。
カロンさん、この水瓶をどかすから、ここに頼む」
サトルは、土魔法で床を水平にしてから台所魔導具を設置する。
マーサは、訳がわからず見ている。
サトルは、
「マーサさん、左の蛇口を触って(水を出ろ)言うか、念じて止める時は(止まれ)です」
マーサは恐る恐る蛇口に触り声出す
「水を出ろ」ジャーと言う音ともに水が出て行く、マーサは唖然として見ている。
それを見ていたロガスは慌てて「溢れる、マーサ蛇口に触って止まれと言って」
マーサは慌てて蛇口に触り「止まれ」言う
ロガスは、水が溢れないのを見て不思議に思い、サトルを見る。
「カロンさん、なぜ、水が溢れないんだ」
「シンクの下のタンクには、ゴミ箱の魔法陣が書いてあり、魔素に還元しているんだ」
「お前、恐ろし事を平気で言うな。あそこに入ると鉄でも魔素になっちまうじゃないか」
「まあな、悪用しないよう排水口は小さいだろ、包丁も人を殺すからね。悪用を前提にしたら便利な物が出来なくなる、そう思わないか?ロガスさん」
ロガスは納得した様子で
「確かにそうだ、人を殺す剣を作っている、俺が言う事じゃないな」
サトルは、マーサに右側の蛇口を説明して、出した冷水をコップに入れて3人で
一息入れる。
マーサが
「カロンさん、この魔導具の便利さには、驚いたわ。他に洗面所とトイレがあるんでしょう」
「マーサさんトイレは、タミラさんがロジネさんの尻を叩いて取り付けさせた聞いているから期待して良いですよ」
「じゃカロン取り付けようぜ。あー、カロンこれって兄貴が両親に贈った物だった」
サトルは、二人の喜ぶ姿を見て
「ロガスさん、ロジネさんには、一生掛かるお願いをしているので、大丈夫ですよ」
「カロンさん、そのお願いとは?」
「水周り魔導具の利益でエルフ族が困ったら助けてくれとお願いしているんだ」
「カロンさんの信頼を得て、俺が水周り魔導具を任されることになったら何を望むんだ」
「ドワーフもエルフも人も亜人も区別なく受け入れる孤児院を作って欲しい」
「名目の王を嫌った兄が、一番、王様らしい事をして要るじゃないか。カロンさんの信頼を得て、孤児院を作ろうじゃないか、マーサ、頼む協力してくれ」
「頼まれる迄もないわ、お前さん、しっかりカロンさんの信頼を得てね」
「おぉ、任せろ」
「二人の息の合い方は、ロジネさんとタミラ夫婦と同じですね」
ロガスさんが凄い笑顔で
「そうかい、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
その後、両親の家を含め水周り魔導具を取り付けた。
・
コトリ達が夕方に起き、サトルが提供したふわふわパンとマーサの料理をコトリ達は美味しく食べ、風呂に入り、疲れたとまた寝てしまった。
・
サトルとロガスが向かい。サトルは懸念を話す。
「ロガスさん、キラーアントンの騒動は終わりと言う事になら無いんだろ」
「あぁ多分な、1月前にミスリル採掘坑道でアダマンタイトの欠片が壁に埋まっているのを見つけたんぜよ」
ロガスはこう話を切り出した
当然、俺達は、アダマンタイトの鉱脈がこの先にあるじゃないかと大きな期待をした。掘った先にアダマンタイトのドアを見つけて旧文明の遺跡かも知れないとさらに期待が膨らんでドアをこじ開けたら10m先にミスリルのドアがあった。
当然俺達は、このドアをこじ開けたら、開けた瞬間に凄い勢いで空気が開けた先に流れ込んで行った。
俺達は、中に入り確認すると赤く光る目を持った巨大なキラーアントの女王が鎮座していて、俺達に向かってきた。慌てて逃げ出しドアを閉め、土魔法で通路を塞いで帰った。
「そして、今日のキラーアントンの襲撃に繋がったようだ。カロンの見えない矢で女王蜂を倒すことは、できるか?」
サトルは、銀龍に空気圧縮弾付き徹甲弾が通じなかった事考える。
「ロガスさん、敵は、ゴールド級かランク外の可能性がある。今の力では無理だ」
ロガスは腕を組み
「カロンさん、今の力と言ったが、何か考えあるのか?」
「土魔法がLV7、空気圧縮弾がLV5以上になれば可能性がある。ただLV7する為に色々やっているんだが結果が出なくて、LV7になった人は居ないか」
「俺の親父がLV7だ」
「親父さんにどうしたらレベル7になるか聞きに行こう」
ロガスは立ち上がろうしたサトルを押し留め
「俺が知っている、親父と俺と数人がミスリルを掘っている時に落盤にあって閉じ込められた。狭い空間で手掘したら空気がなくなる、親父は一生懸命に土魔法で穴を掘ろうとしたが、ミスリルを含ん壁はLV6では発動しない、それでも親父は必死になり、酸素が尽きようとした時に奇跡的に発動し、坑道まで土砂を除け帰ることができた。後で調べたらLV7になっていた。
だから、レベルアップの条件は分からない」
「そうか、また、闇雲に訓練するしかないか」
「親父に見えない矢を教えることはできないか?」
サトルは躊躇した
「・・この話は、絶対に秘密にしてくれ。俺は、勇者と同じ国から来た。
魔法がなく科学が発達した世界だ。見えない矢は、科学の知識を元にして
発動させている。だから、無理なんだ」
「残念だ、えーー、お前勇者なのか?」
「違うよ、一般人」
「チンパンジーなのか」
「ただの人だよ」
サトルは久しぶりにこのやり取りするなと苦笑いする。