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ヨミガラスとフカクジラ  作者: ジャバウォック
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「しっかし、とんでもない兵器だなこれ」





「結局これ生き物なのか?機械なのか?」


「生命機関だっけか。それが組み込まれた……なんだっけ、有機性……有機性階差機関か。その中には一応生きてる鳥が組み込まれてるらしい」


「鳥?鳥が入って、レバーでも引いてるってのか?」


「いや、何て言ったかな。神経機構、いや神経拡張機構か。まぁ早い話が、生き物の神経やら筋肉やらを機械に繋いで、この機械を動かしてるんだとよ」


「…………どういう事だ?生きてんのか?」


「知るかよ。俺だって受け売りだ」


「おーう、何やってんだお前ら」


「お疲れ様です、いやこいつがグレゴリーとやらの仕組みが分かんねぇ、なんて抜かすもんですから」


「お前だって受け売りだろうが、馬鹿扱いすんじゃねぇ」


「あーこれか………まぁ、俺も全部が全部分かる訳じゃねぇけどよ。吸うか?」


「おっ、良いですか一本」


「ありがとうございます、んじゃ俺も一本」


「………何でも、この兵器は元々レガリスの帝国軍が発案した兵器だったらしい、まだ浄化戦争が続いてた頃だ」


「へぇ、そんな前からあるんですか?これ」


「にしちゃ最近まで全く名前すら聞きませんでしたけど」


「話を聞けってんだ、間抜け。最初は成功しなかったらしい、生き物の神経と機械を繋ぐってのが殆ど上手く行かなかったらしくてな」


「そりゃそうでしょうね」


「でしょうなぁ。神経なんたらも解明されたのってまだ、十数年前とかなんでしょ?仕方無いっすよ」


「その上、繋いでる鳥も賢いとは言え上手く行かない事も多くてな。命令しても転んだり腕を振り回したりして、上手く動かない事も多かったらしい」


「お前は人なのに転んでるけどな」


「蹴飛ばすぞ」


「んで一旦廃案になった筈なんだが………南方のニーデクラ出身のクリスだか何だかが、神経拡張機構とかいう技術で機械と鳥を見事に繋げたらしい。殴るも走るもお手のもの、てな具合にな」


「はー、天才ってのは居るんですねぇ」


「今更なんですけど、生き物の神経と機械を繋ぐなんて出来るんですか?有り得ねぇと思うんですけど」


「現に出来てんだからしょうがねぇだろ、あの域の天才様には俺達の分からねぇ世界があるんだろうさ。んで神経を繋ぐだけでなく、天才サマは鳥の調教も完璧にこなしたらしい。色んな薬とかを使ってな。おかげで俺達みたいな素人が命令しても素直に従うって訳だ」


「あぁそっか、神経繋いでも鳥がアホじゃあ話になりませんもんね」


「すげぇなぁ天才って………」


「んで、賢く調教した鳥を組み込んで、神経を繋いだ機械に命令を聞かせた結果、“自律駆動兵”とやらの完成って訳だ。すげぇよな、俺には頭が追い付かんよ。脳味噌が一世紀ぐらい先に行ってんじゃねぇか?ああいう天才サマってのはよ」


「……あの、ちょっと思ったんですけど」


「あん?」


「中に鳥が入ってるなら、その鳥は何食ってんすか?」


「確かにそうだ、こいつ何食ってんすか?てか窒息しねぇんですか?これ」


「コレ、稼働させる時に背中の装甲板と機関部を開けて“生命稼働薬剤”ってのを定期的に充填する様、マニュアルにあったろ?なんでも、あれが飯と水らしい。ついでにバルブに繋げたボンベで呼吸もするらしい。おかげで瘴気の中だろうと平気らしいが、どうだかな」


「………あんなんが飯ですか。長生きしなさそうですねこいつ」


「まぁクリス何たらも言ってたな。生命機関とやらの磨耗が激しい為、数ヶ月もしたら中身の有機性階差機関とやらを組み換えなきゃならないらしい」


「摩耗って事は………そういう事っすよね」


「組み換えるって事は、中身捨てちまうんですか?」


「そりゃそうだろ。こんなんの中で長生きなんて出来る訳無い、結局軸になってんのは生き物だからな」


「こんだけ技術が進歩しても、ままならないもんですね」


「歯車だけの機械が、こう、ゴゥーンゴゥーンて動いてくれたら楽なんですけどね。世話しなくて済むじゃないですか」


「お、此方向いた。気にすんな、向こう向いてろ」


「おおすげぇ、やっぱり言う事分かるんですね。中身が鳥とは思えませんね」


「気になったんですけどこいつ、どうやって物見てるんです?目ん玉なんて無いでしょう?」


「あー知ってはいるが………まぁ良いか。有機器官部品、て知ってるか?」


「はい?」


「何て言いました?有機器官?」


「有機、器官、部品。生き物の部品だよ。それが配線みたいに繋げてあるんだよ。さっき神経繋げるって話しただろ?」


「有機器官部品………」


「え、じゃあこいつ目ん玉繋げてるんですか?」


「ほら、あの頭の部分に何個も覗き窓みたいな部分が付いてるだろ。あの部分だよ。あの奥に、瓶詰めみたいにされたデカイ目玉が繋いであるんだ。多方向が見える様に何個もな。大型鳥類の眼球を使ってるらしいが……近くで覗き込んだりするなよ、ありゃ夢に出るぞ」


「………もう少しで見に行く所でした」


「自分もです……」


「見えるだけじゃなく、耳も体の反響管に繋いであるらしい。正式には耳じゃなくて鼓膜だか何だかの奥らしいんだが、よく分からん。忘れた」


「何というか、考え直すと気持ち悪いですね。こいつ」


「歯車だけじゃなくて、目玉だの何だのを繋いでると思うと、気分が悪くなりそうです」


「お前も全部繋がってるだろうが、何言ってやがる。まぁ俺達の言う事聞いて、クソレイヴンどもや亜人どもを叩き潰してくれるんだから、有難い事じゃねぇか。さて、いい加減行くぞ」


「……行きますか、おい行くぞ」


「わーってるよ、うるせぇな。あ、そう言えば最後に一個良いすか?」


「何だ?」


「中に入ってる鳥類って、何の鳥が入ってるんですか?相当賢くないと出来ないですよね、こんな事」


「確かに。ニワトリなんぞじゃ無理な芸当ですよね?」


「あーー、何だったか。俺も詳しくねぇが、えっと………あぁ、そうだ」






「噂によると、ヨミガラスとかいう相当賢い鳥を使ってるらしい。絶滅危惧種らしいけどな、天才サマには関係ねぇんだろ」

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