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1838年
レガリス中央新聞
薪山の月26日
“帝国の鉄の巨人、穢れた劣等種を踏み潰す”
先日のレスター・コールリッジ議員が黒羽の団に襲撃された事件において、正式にコメントを発表した。
コールリッジ議員は、帝国内において亜人等の劣等人種の不当な介入や勢力を規制する事に尽力しており、帝国の大多数の民から支持されている事で知られている。
そんな中、先日の夜キセリア人種の人権保護に対してコールリッジ氏に報復しようと目論んだ抵抗軍のレイヴンが、複数人にてコールリッジ氏の邸宅を襲撃し多数の死者が出る事となってしまった。
しかし、間一髪の所でコールリッジ氏が先日採用した新開発の自律駆動兵、"グレゴリー"が見事襲撃を防ぎ、完膚無きまでにレイヴン達を叩き潰した。
帝国の技術の粋が結集されたと言っても過言ではない最新式の自律駆動兵"グレゴリー"は、まだ有数生産及び採用に留まっているがこれまでの戦争を過去の物にする、と言われる程の戦闘力と強靭さを誇っている。
有機器官部品や筋電技術、神経拡張伝達機構を開発した稀代の発明家、クリストフォロ・ピアッツィ開発主任に依れば、最新式のディロジウム駆動機関を搭載した“新型自律駆動兵”は、地上戦に置いては一体で旧式のディロジウム臼砲にも匹敵する戦闘力との事。
事前段階から高度に調教した鳥類を特殊処理の後、内部の生命機関に組み込み、開発された“有機性階差機関”を主軸とする自律駆動兵は、生命稼働薬剤や各種気体、そしてディロジウム燃料を充填する事により、帝国軍の意のままに駆動する鋼鉄の巨人が誕生する事となる。
高知能の鳥類を特殊調教した後に組み込む事により、内部の生命機関の鳥類は我々の人語を介して巨体の神経拡張機構へと命令を下し、その鋼鉄の巨体を駆動させる事となる訳だ。
ディロジウム銃砲すら歯が立たない装甲に加え、此方の人語を介して的確に命令を遂行する自律的な知性。そして自律的な知性を有するからこそ出来る状況判断と戦闘能力。
レガリス、そしてバラクシアはピアッツィ氏の輝かしい頭脳によって新時代に到達したのかも知れない。
今の所は有数生産の為に一部の富裕層の採用に留まっているが今後、かのカルロス・ブリジットの再来とまで言われるピアッツィ氏の更なる開発が進み、量産化に対応する事が出来ればレガリスに広く普及する事も夢ではないとの事。
ピアッツィ氏によって現在、自律駆動兵は重装型の“グレゴリー”と機動型の“アナベル”の二種類が発表されている。
今回、抵抗軍からコールリッジを危機一髪で救いだした自律駆動兵は重装型のモデルだったが、今後は機動型も搬入するとコールリッジ氏はコメントした。
今回、帝国軍から派遣されていた専任憲兵と個人所有の自律駆動兵により、此度の襲撃を乗り越えたコールリッジ氏。奇しくも勢い付こうとしていた抵抗軍の凶行を食い止める形となり、今回の件に関してフラウンホーファー憲兵隊長はこう語っている。
「今回の凶行を食い止めた事により、帝国軍の士気も向上している。最近、抵抗軍の残党が活性化して凶行を繰り返していた為に抵抗軍が勢い付いていたが、今回の襲撃阻止で歯止めをかける事が出来た。この調子で抵抗軍排除に注力して残党を狩り尽くし、邪神グロングスを信仰する邪教徒及び、抵抗軍を過去の言葉にしていきたい」
今後ともキセリア人種の正当な権利の為に戦うコールリッジ議員には、民から絶大な期待と票が寄せられている。