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暗い雨の中、羽毛の束の様な物が泥濘に落ちていた。
浴びた様に血に染まり、錆びた足環で切れた鎖を引き摺る様にして、“それ”は倒れ付していた。
命の気配も息遣いもなく、羽に包まれた腐肉の様にしか見えなかった“それ”に、泥濘から滲み出た汚水が、雨を糧にして這い寄る様に水位を上げていく。
骨や羽毛が混じった汚水が“それ”を浸そうとした頃、“それ”が蒼く染まった眼を見開き、激しい動悸と共に血を吐き出した。
錆びた足環を填めた脚で、“それ”は暫し泥と血が混じった咳をした後、足環から重い鎖を下げたまま大きく翼を広げ、泥濘から羽ばたいて、飛び立っていく。
雨の中を羽ばたいていくヨミガラスを、ヨミガラスと同じく蒼白い光を眼に孕んだ梟が眺めていた。




