34/294
033
男が居た。
苦悶の表情で左手を抑え、顔からは玉の様な汗を流している。
時折呻き声を上げながら膝をついて苦しむその男を、巨大な梟が男のすぐ傍で眺めていた。
梟にとっては興味深いものらしく、梟は食い入る様にしてその男を眺めている。
男の押さえている左手から、眩いばかりの蒼白い光が溢れ始めた。その上、細い煙も左手を押さえる指の間から天へ延びていく。
そんな時、男の左手が弾かれる様に、吊り上げられるかの様に天に向けられた。そして、一際眩い光が放たれたかと思うと刹那、その左手から黒い霧とも煙とも言えない禍々しいものが吹き出す。
その霧の中から、両の目玉を抉り取られたおぞましい風貌のカラスが背筋の凍る様な声を上げながら、次々に飛び出していく。
梟は、そんな光景を眺めながら静かに呟いた。
「さぁ、どうする」




