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最近のレイヴン達はおかしい。
以前なら笑い話にしかならない話題だった筈だが、今ではレイヴンの間でも当たり前の様にあの大罪人を受け入れてやがる。
浄化戦争の英雄サマなんて疫病に罹った犬やシカと同じで、長々と飼う必要なんて何処にも無いのだから役目が終わったら直ぐに処分するのが常識だ。
というより、自分としてはそのつもりであのクズを引き入れたんだと、最初思っていた。
穴が開いた金属に木屑や木材を詰め込んで、間に合わせで塞ぐみたいに。
だから、あのクズとあいつ程じゃないクズ共である程度共食いさせて団が持ち直したら、適当に処分するつもりなんだと思っていた。
具体的に言うなら、長くても2月程度の話だと思っていたのに。
夏前だか夏頃だかに引き入れたあのクズは、そのまま平然と居座り続けてとうとう年を越し、春を迎えていると来たもんだ。
レイヴン達は口でこそあんな奴は受け入れてない、とは言うものの当たり前の様に来月も再来月も、あいつが居座っている前提で話をしてやがる。
勿論俺は誇り高きレイヴンとして黒羽の団の団長、アキム・ベジェレフに忠誠を誓った身だ。
あの人が団の為に戦場で死ねと俺に言ってきたならば、ひとしきり愚痴ってからそのまま戦場で死ぬ覚悟ぐらいはある。
だがあれだけ同志を殺して回ってきた胸糞悪い大罪人を俺達の隠れ家、カラマック島に引っ張ってきて猟用鳥として扱うどころか、誇り高きレイヴンと同等に扱うとなると話は別だ。
百歩譲って檻や地下室で鎖に繋いで飼うならまだしも、あのクズは平然と外を出歩いては技術班を含めた島の色んな所を出歩いているときた。
本当に誇りあるレイヴンなら、ああいう輩は今すぐにでも縊り殺してヤギやシカみたいに内臓でも抜いて、島から投げ捨てるべきだろう。
それなのに、レイヴン達は“気に入らない同僚”程度の認識で来週も来月も居座る事を暗に認めてやがる。
ふざけるな。
何度か仲間と深酒ついでに叫んだりもしたが、絶対にこんな事は許されるべきではない。
あれほどの罪人が、裁かれる事もなく曖昧なまま其処らで歩き回るなんて俺達全員に対する冒涜だ。
あのクズが居座る事を認めている理由を聞けば革命が終わるまでの話だ、なんて言う奴も居たがそんな言葉は言い訳でしかない。
これからもあのクズを飼うつもりな時点で腹が煮える思いだが、そもそもの話として革命を成した後はあのクズをどうするつもりなのだろうか。
まさか、革命が成功した後もあの大罪人を飼う訳じゃあるまい。
街を作れる程のラグラス人を殺して回って帝国に加担してきたあのクズを今の今まで飼っているのは、“革命に有用だから”の一点に尽きるのだから。
順当に行けば革命が成功する日か、その前日にでも処刑が妥当だろう。
流石に相手が相手だから手こずるかも知れないが、どのみちあのクズに此処以外の居場所は無い。前、地下牢に叩き込んだ時もそれを知ってか、大した抵抗も無かったと聞いている。
そうなれば処刑もそれほど手こずらないか。
いや、革命が成功したのなら奴に此処以外の居場所がある可能性は充分に有り得るか。
そうなると、それこそ手こずる可能性がある。
万が一ではあるが、あの大罪人がこのカラマック島で生き延びた上に革命が成された後にレガリスにでも逃げたとなると、相当面倒な事になるだろう。
何せ、帝国軍を裏切って我々にすり寄って来た様に奴には忠義心が無い。
自らの罪など忘れ去り、もしくは償いが終わった等と勘違いして、革命が成された後の街にぬくぬくと隠れ住む可能性は充分にあった。
そうなると非常に面倒だ。
部屋に隠れて見つからない毒虫と同じで、あんな奴が何処かで平気な顔をして生きてるとなると、腹が煮えるどころの話では無いのだから。
まぁ、その辺りについては幹部連中も考えがあるのだろう。
我々には言わないだけで、“用が済んだ”時の段取りはしている筈だ。




