表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨミガラスとフカクジラ  作者: ジャバウォック
285/294

277

『タラスは?』





『昨日から全く見てない、多分タラスは……もう、無理だと思う』


『畜生、タラスは上手くやれてたのに。あのクソ宗教の改宗課程でさえ何とか乗り越えたのに、今更やられちまったってのかよ』


『タラスが何で看守に目を付けられたのか、心当たりがある。多分、だけど』


『どうした?』


『最近、自分と居る時に看守が話してたのを聞いちゃったから…………タラスの故郷の、ニリラを更地にして重装刑務所を建てたって話をしていたのよ』


『ニリラが!?色抜きのクソどもが、あの場所は先祖代々伝わってきた歴史ある土地だってのに、そんな土地が刑務所にされるなんて………国の歴史を何だと思ってる、ザルファ教の礼拝堂だってあったんだぞ!!』


『………あいつら、もうペラセロトツカを“未開発の空き地”ぐらいに思ってるんだろうね。どんどん刑務所や廃棄処理場を建ててるって聞いたわ』


『レガリスではもう、強制収容所は閉鎖で戦時中に比べて数を減らしてるんだろ?なら何で、何でペラセロトツカで刑務所を建てたりするんだ、あいつら何から何まで訳が分からねぇよ』


『きっと、自分の国の土地は刑務所や廃棄場以外に使いたいんだろうね。単純に、レガリスからペラセロトツカに“見映えの良くない施設”を移転してるのかも』


『色抜きどもが、他人の国でもう我が物顔かよ。俺達の国に歴史が無いとでも思ってるのか?』


『無いと思ってるわよ。もしくは、無かった事にしたいか。だからこそ、帝国が考えた歴史を改宗施設で刷り込んでるのよ。知ってる?グヤーシュの話』


『グヤーシュ?グヤーシュがどうかしたのか?』


『………えっと、一応言うけど絶対にそっちより私の方が怒ってるからね。そこは忘れないでよ』


『何だよ?』


『……グヤーシュって名前は間違いで、これからはキロレン風シチューって名前に置き換えられるらしいよ。ここだけじゃなく、いずれレガリス全土でね』


『キロレン風、シチュー?キロレンって西方国のキロレンか?何だよ、キロレン風って』


『説明してるのが聞こえてきたんだけどさ。グヤーシュは…………ペラセロトツカの移民が、キロレンのシチューを真似しようとしたのが始まりだから、元を正せばキロレンの料理だってさ』


『何だよ、それ』


『他にも色々と聞いたよ。途上国の料理文化とか、ペラセロトツカの料理文化は元々キロレンやニーデクラの料理を真似ようとした事から始まったとか』


『……ふざけやがって……………』


『他にも文学の、ズビシェク・プルフが書いた“変貌”とか“城壁”とかも、元々はニーデクラの作家が書いたのを改変した事にされてる。元々はニーデクラの血筋だったなんて話もあるわ』


『ズビシェクは、ペラセロトツカでも有数の小説家だろ!?それを、それを外国出身にしようってのか!?』


『奴等、本気よ。ペラセロトツカの文化の全てを、レガリスやキロレン、ニーデクラが起源だと広めるつもりで居る。言ったでしょ、此方の方が怒ってるって』


『クソが………ふざけやがってあいつら、ふざけやがってあいつら!!』





「随分と楽しそうだな、お前ら」


「…………いえ、何も」


「随分と変わったマグダラ語を話す様だな?まるで禁止されてる汚染言語みたいだったが。汚い音が出ない様に、口を洗った方が良いんじゃないか?」


「いえ、あの、問題ありません」


「マグダラ語が通じないのか?俺は、洗うべきだと言ったんだぞ。それを、お前らは俺を否定してまで洗うべきじゃない、なんて言ってるんだぞ。随分と立派な口を利くじゃねぇか」 


「いえ……………」


「お前らは何度か洗った筈だが、もしかしたら口以外に問題があるのかもな?もう少し“消毒”した方が良いんじゃないか、汚い音が二度と出ない様によ」


「いえ、あの、いえ……………」


「おい此方に来てくれ、こいつらを取り押さえるぞ。こいつらの身体を消毒した方が良いみたいだ」


「来たぞ。何だこいつらか、確か先週騒いだタラスの知り合いじゃなかったか?」


「あぁ、二度とこいつらから汚染言語が出ない様に“洗う”必要がある。懲罰室の鍵を持ってこい」





「それと、煮えた油を用意してくれ。こいつらは石鹸程度じゃダメだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ