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「あのガキは使い物になるのか?」
「何だって?」
「ほら、今回の任務で使うんだろ。あの分かりやすい新入りを」
「あぁグリーナウェイか。まだ何とも言えないな」
「選抜の成績はそれなりだったらしいが、実戦で役に立たないのは勘弁だぞ。今は尚更大事な時期なんだ」
「言われなくても分かってるよ。だが任務にどれだけ役に立つかなんて、任務に連れていかなきゃ分かんねぇだろ。エグバートみたいによ」
「エグバートか……………」
「自分だけで帝国軍を皆殺しにしてやるだの、帝王の顔を踏んでやるだの、あれだけ強気な事を言っておいていざ初任務に連れて行ったら、トドメは刺せない緊張で頭は回らない、速いのは足だけと来たもんだ」
「人を殺す覚悟が、口に出すだけじゃなく実行するものだって分からなかったんだろうな。きっと毎晩、レイヴンとして華麗に立ち回って帝国兵を切り伏せる妄想でもしてたんだろう」
「それが今ではあのザマだ。当人も思い知ったのか、散々反省してからはそれなりに使える様にはなったが………それでも先陣を切らせる訳には不安な奴だ」
「全く使えないよりはマシだろ。それはそれとして、結局グリーナウェイは使い物になるのかよ?言っておくがーーーー」
「“俺はシッターじゃなくレイヴンなんだぞ”ってんだろ。言ったろ、現場に連れて行かなきゃ分かんねぇって。そりゃエグバートみたいになるかも知れねぇが、それを言えばディミアンみたいになる可能性だってあるんだからよ」
「ディミアンねぇ。まぁ、確かにディミアンみたいになってくれるなら、俺達もそこまで文句はねぇがな」
「初任務が始まる前はディミアンだってあぁだったろ、今にも吐きそうなぐらい緊張した顔で飛行船に乗り込んできた時は、そりゃ俺だって外すかどうか迷ったさ。でも、なぁ?」
「クソを漏らしてないのが不思議な程に緊張してたが、現にアイツは初陣から役に立った。敵は始末したし足は引っ張らなかった、新入りのレイヴンとしては及第点だろう。怯えきった態度だけは今でも気に入らんがな」
「まぁ、エグバートになるかディミアンになるかは任務で見極めよう。エグバートになりそうなら、俺達でケツを拭いてから拭いたケツを蹴飛ばせば良いさ。それに、俺は言う程心配してないからな」
「心配してない?あの様子を見てないのか?まだレガリスにも向かってないのにあのガキ、飯もまともに入らなくなってたぞ」
「あぁ。だがグリーナウェイはあの化け物、グロングスに付いて回ってたんだろ?」
「なら、少なくとも戦場や戦士がどういう物かは分かってる筈だ」




