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「本当に上手く行くと思うか?」
「何度聞いても答えは変わらないぞヴィタリー、ここは信じて待ってみようじゃないか」
「クロヴィス、何でお前はこういう時いつもそう楽しそうなんだ?宴会のゲームじゃねぇんだぞ」
「逆だよ。君がこういう時いつも必要以上に気を揉んで辛気臭い顔をしているんだ、もう少し気楽に考えてみた方が良いんじゃないか?」
「考えられるかよ、全く。アキムといいお前といい、何でこういう時だけそんなに肝が据わってるんだ?これでアイツがあのクソガキを説得出来なかったら、全部が全部じゃないにしろ、お前らが考えてた作戦の一部は練り直しになるんだぞ?」
「確かにそうなると面倒にはなるが、その時はその時さ。それに上手く行けば私達に取ってかなりの得がある。前例、という意味でもな」
「あいつが上手く行くのを前提に話を詰めるのはやめろ。信用の問題じゃねぇ、柔軟性の問題だ」
「心配せずとも彼なら上手くやってくれるさ。君も分かっては居るだろう、彼はしぶといし色々と上手くやれる。“狩り”にしろ“談話”にしろ、色々とな」
「それ以外が問題なんだよ。俺の私情を抜きにしても、あのクソ野郎は余りにも波紋を呼びすぎる。忘れてるかも知れないが、お前の言う“狩り”が取り分け上手いから俺達はアキムの意向でアレを飼い続けてるだけで、そもそもアイツは始末する話だってあったんだぞ。一応、暫くは延期になったがな」
「…………まぁ、そこを誤魔化すつもりは無い。確かにデイヴは団内でも随分と波紋を呼んだし今もデイヴの追放、と言うより処刑に関して署名を集めている連中も決して少なくないだろう」
「今の所は何とかなってるが、またアイツが何か面倒な事をしでかしたら次は処刑云々を止められるかどうか分からねぇぞ。本来、アイツは何があってもこの島に居ちゃならねぇ人間なんだ」
「だが、反対の署名が集まった事からも分かる様に彼にも味方は居る。彼が何れ程の物を犠牲にしてこの島に来たのか、理解してくれる者も確かに居るんだ。いやはや、あそこから一部とは言え人々に受け入れられるまでになるとは、デイヴも上手くやったものだよ」
「そこに関してだけは同感だな。よくもまぁ、あの経歴で一部とは言え此処の連中と仲良くやれるもんだ。あのまま始末する話もあった事を考えると、未だに信じられねぇよ」
「…………一応聞くが、デイヴをいつか始末するという方針は変わっていないのか?」
「当たり前だ。お前やアキムがどれだけ褒めようと感謝しようと、どれだけ黒魔術で帝国のクソどもを蹴散らそうとも、アイツは元々数えきれない程の人々を殺した大罪人だ。何があっても許されない程のな」
「何があっても、か」
「この島に来てからもアイツは猟犬と狂犬を行き来してるだけで、決して忠犬じゃない。アキムにも言ってるが、そこだけは履き違えるなよ」
「本当に、彼を始末する気なのか?」
「考えてもみろ。革命が成功して、現政権を打倒して、国に変革がもたらされたとして。片っ端から人々を喰い千切って国すら滅ぼしてきた怪物を、“用は済んだ”って適当な野山にでも放つつもりか?」
「ヴィタリー………………」
「あんな怪物は本来、居ちゃならねぇんだよ」
「唯の一人であってもな」




