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1839年
レガリス中央新聞
芽吹きの月19日
“自警団を名乗る者達による、市民への暴行事件多発。劣等種特有の精神病、隷属意識欠乏症とは”
年明け以来、レガリスの様々な地区で問題視されてきた一部の民衆の凶暴化、亜人の繰り返す犯罪行為や帝国憲兵に対する侮辱行為について、続報があった。
帝国本部の公式見解によると、現在レガリスの様々な地区において帝国軍に侮辱的発言を繰り返す亜人や、それらに影響された貧困層や無学かつ精神的に未熟な労働者による、犯罪行為が異常な比率で増大しているとの事。
以前も本誌で取り上げた、暴徒によるトゥールスフィル収容所襲撃事件についても、襲撃者の中に亜人の存在が確認されている事から決して、本件と無関係ではない。
今月上旬に話題となった奴隷貿易の経営悪化の際にも軽く触れたが、抵抗軍の破壊行為やそれに伴う破滅的な損害により、劣等種意識の欠如している亜人や暴力思想に取り付かれている犯罪者、またはその傾向が見られる貧困層の間で集団的な精神病が流行している、と帝国本部は発表した。
その集団的な精神病、または一種の精神症に罹患した者達が結託し、巷で“自警団”を自称しているとの事。
自警団を名乗るその異常者達は、レガリスの治安維持に努めている帝国軍憲兵や、帝国兵に迷惑行為や暴力行為、挙げ句には明確な殺意を持った殺傷行為を繰り返しているそうだ。
当然ながら、額に汗を流しながら毎日を生きている我が帝国の誇りある市民に取っては自称“自警団”など恐怖の対象でしかなく、本来レガリスの帝国で豊かな日々を過ごしている市民達は自称“自警団”などに警護してもらう必要も、融通してもらう必要も無い。
“自警団”が本当に人々を護りたいなら、民衆の豊かで満ち足りた暮らしを保証してくれる帝国軍、そして帝国が管理する施設を襲撃したり、収容所の人間を解放しよう等と考える筈が無いのだ。
それが人々に取って、何よりの証拠である。
心理学者フリーダ・ヴィルマ・キルシュは今回の件において、以下の様に述べた。
以前から、劣等種たる亜人の中でも一際異常が多く見られる血統では、隷属意識欠乏病と呼ばれている亜人特有の精神病を発症する事が、時折あります。
亜人が自身の意義を理解出来ない、または意図的に理解を拒否し、隷属を含む様々な義務から逃げ出そうとする精神病なのですが、精神的に不安定な人や劣等種の血を濃く引いている血統の人はごく稀ではありますが、正当人種でもこの精神病を発症、または罹患者に精神的影響を受ける事があるんです。
今回程のケースは初めてですが、抵抗軍の活動により多数の亜人、恐らくは隷属意識欠乏症に罹患した発症者が一斉に行動を起こした事で、大規模な伝播が発生したのでしょう。
尚、キルシュ氏によると隷属意識欠乏症について現在判明している治療法は、患者が亜人だろうと正当人種だろうと鞭や熱湯等による正当な刑罰により苦痛を与え、正式かつ正当な主従や自身の血統を再認識させる事が最も有効とされている。




