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「おう、遅れて悪いな」
「来た来た、やっとかよ」
「もうお前抜きで始める話が出てた所だぞ、約束ぐらい守れよ。最近はこの3人が集まるのも久々だぞ」
「そう言うなよ、飛び入りの書類が来たから仕方無いだろ」
「飛び入りの書類なら俺だってあったよ、それを片付けて此処に居るってのにお前って奴は」
「まぁまぁ、良いじゃねぇか。浄化戦争中なんだ、飛び入りの仕事なんて珍しくないだろ」
「そう言えばマジなのか?浄化戦争のあの話」
「あぁ?何がだよ?」
「浄化戦争が直に終戦する、って話さ。ペラセロトツカで大分デカい作戦が成功したんだろ、砦に引きこもってた亜人どもをとうとう皆殺しにしたとか」
「俺も聞いたなそれ、どうなんだ?何か知ってるか?」
「砦じゃなくて、礼拝堂な。マジらしいぜ、そいつの言う通りペラセロトツカの礼拝堂に引きこもってたクソ亜人どもを、隠密部隊が一匹残らず皆殺しにしたんだと」
「マジかよやったぜ、じゃあマジでいよいよ戦争が終わるのか?」
「考えてみりゃもう6年にもなるのか………長かったぜ、全く」
「我等が英雄サマが殆ど1人で皆殺しにしたらしいぜ、帝王からは特別な勲章が何個も貰えるらしい」
「英雄サマってあのブロウズだろ?はー、すげぇな相変わらず。あいつ、亜人をどんだけ殺したんだ?よくもまぁそれだけ殺せるもんだ」
「何が“あいつ”だよ、一目見ただけの癖に。まぁ間違いなく1人で街一つ、いや2つか3つ分は殺しただろうよ。ありゃ才能さ、心の底から亜人の駆除が好きでかつ殺しが得意じゃないと出来ねぇよ」
「はー、俺もペラセロトツカに送られてりゃなー、きったねぇ亜人を十人でも百人でもぶっ殺して、勲章取って将来安泰だったのによー」
「そのきったねぇ亜人がどれだけ強いか知らねぇのか?ペラセロトツカの軍隊に居る様な亜人は、猛獣みたいだって聞いたぜ。現に何人も帝国軍の連中、それも鍛えた奴等がやられてる。精鋭部隊だって殺されてる奴が居るんだ、俺ならペラセロトツカの前線に送られるなんて、それこそゴメンだね」
「どっちにしろ関係ねぇさ。あのブロウズは精鋭が揃う隠密部隊の中でも、取り分け強いってんだろ?俺は一度だけ、隠密部隊の人間を見た事があるが………」
「どうだったんだよ?」
「…………ありゃあ、バケモンだ。人なのに、こう、喰う側の眼をしてる。そいつは俺よりも背も低かったのに、俺は本当に怖かったよ。あんな連中の中で取り分け強い、なんて俺は絶対に戦いたくないね」
「正当人種が隠密部隊と戦う訳ねぇだろ、馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「あーあ、ブロウズはもうこれからの人生、バカ高い酒をバスタブいっぱいに注いで飲んで、バラクシア中の珍味と絶品を毎日ゲップが出るまで食って、メシのついでにレガリスで最高級の女と日替わりで遊ぶ生活か。全く、すげぇよな」
「それも、小さな島か島みたいな宮殿の中でな。噂によると、実際にブロウズの名前の船が造られる予定なんだろ?」
「らしいな。ま、船の話はまだまだ先らしいが。それより来月の休暇については大丈夫か?忘れてないだろうな」
「分かってるよ。ニンバラー地区の件だろ?いよいよだな」
「なぁ、グース・ガーデンには靴すら女が脱がしてくれるって本当か?」
「行った奴に聞いたが、本当らしいぜ。此処等のくたびれた女どもとは訳が違うんだ、それこそ英雄サマがこれから買う様な美女が幾らでも選べるってんだからな」
「あぁ、此処等で修道女やってる様な………いや、そうでもないか」
「何だよ?」
「いや何、ほら。去年か一昨年か、3人で修道女と遊んだ事があっただろ。あんなのばっかりなら良いのになと思ってよ」
「あぁ居たな、あれか」
「あれ?」
「ほら居ただろ。東の通りで、ほら」
「あぁーーー居たな。あの、満点の女だろ。修道女やってんのが勿体無い女が」
「あんだけ良い身体してんだからグース・ガーデンで働けば稼げただろうに、身の程を弁えないからあんな目に合うんだよ。自業自得さ。修道女は客が付かない女がやるもので、良い女は娼館に行きゃあ良いんだ。適材適所だろ」
「そういやあれから全然見掛けないが、アレどうなったんだ?死んじまったのか?」
「さぁ。案外、来月ニンバラー地区に行ったらそこの娼館で働いてたりしてな。おいグラスこっちに回してくれ」
「おう。しかし掘り出し物ってのはあるもんだな、こんな銘柄がこの辺りで見つかるなんて。これ中身合ってんのか?」
「別に格段安かった訳じゃなし、そもそも外の地区から流れてきたもんだ。別に裏通りで買った安物じゃないんだから、文句言うなよ」
「まぁ何でも良いさ、乾杯しようぜ」
「えーとじゃあ、いや何でも良いや。俺達のニンバラー地区に!!」
「グース・ガーデンに!!」
「靴を脱がせてくれる娼婦に!!」
「「「乾杯!!!」」」




