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「随分と濁っていますね」
「ゼナイド様………」
「座ったままで構いません。構いませんと言ったでしょう、座りなさい」
「………はい」
「その日は1人で買い出しに行ったそうですね」
「あの日は、はい、1人で行きました」
「貴女が引き受けたのですか?それとも頼まれたのですか?」
「私が、引き受けました」
「自分から言い出したのですね?」
「はい」
「理由は?」
「…………あの時は、その……」
「理由は?」
「あの時は、大雨が降っていて、買い出しが大変だから、私が代われば他の人も楽になると思って………」
「成る程、事情はもう分かりました。貴女は来週から、地下で恩寵を賜る予定でしたね?」
「は、はい!そうです、こんな怪我直ぐに治して地下で」
「貴女には、恩寵を賜る資格は無い様ですね」
「………………今、何と?」
「資格が無い、と言ったのです。いずれ恩寵を賜ると言っていたこんな時期に、自分から雨の中に駆け出してその身を穢されるなど、余りにも愚かで罪深い行為でしょう。修道院及び修道会に対して、無礼であると言えます」
「そんな、ゼナイド様!!私は決して!!」
「座りなさい。恩寵を賜る身となるなら、それを分かっているなら、殊更に自身の在り方には気を配るべきでしょう。それを軽率に周りの仕事を引き受けたりして、その結果、捧げるべきその身を穢すなどあってはならない事です」
「ゼナイド様、私は決してそんなつもりではありません、私は隣人を………」
「弁明は求められてから話す様に。貴女は周りの修道女より更に深い信仰の道へ、神に近づくべく身を捧げる筈だったのですよ。他の不始末や事件とは訳が違います」
「ゼナイド様………私は、私はただ………」
「今回の件は至らぬ者に恩寵を賜らせてはならない、という啓示でしょう。我々も魂を引き締めなければなりません」
「私は、ただ皆が助かればと………」
「明日からは、特別贖罪棟へ棟と向かいなさい。衣服と私物を纏めておく様に」
「………特別贖罪棟…………落伍棟ですか………?」
「今日中に部屋は清掃しておく様に。また明日、特別贖罪棟に着いたら他の修道女の指示に従いなさい」
「…………私は………」
「では、後程」




