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「じゃあ、ブロウズは今回の件で修道会をぶっ潰しちまったってのか!?」
「落ち着けよロニー、グロングスが潰したのは修道会じゃなくて修道院だ。メネルフル修道院を血塗れにしただけで、聖レンゼル修道会を潰したんじゃない」
「聖レンゼル修道会には、今回の件でかなりの痛手を負わせた筈だろ?何つったかな、功労者?だか何だかの化け物みてぇな奴等もブロウズが首を切り落としたって聞いたぜ!」
「重宝者じゃなかったか?まぁ、確かにブロウズが痛手を負わせたのは事実らしいが。俺としちゃ正直な所、“血塗れのカワセミ”の方がそいつらを食い破ったんじゃないかと思うがね。俺の勘じゃグロングスはカワセミの手伝い程度の役割だった筈だ」
「やっぱすげぇな、ブロウズは………これに加えて、違法な奴隷売買の件も明るみに出ていくんだろ?これからは、更にレガリスが大きく揺れる事になるぞ」
「…………まぁ、お前がどんだけグロングスを持ち上げようと勝手だが、成果としてはそうなるな。今回の件で奴隷貿易はかなり衰退に近づく筈だ」
「奴等もいよいよ怯えてる筈だ。今までは何よりも頼りになった聖書と聖職者が、いよいよカラスの餌になっちまったんだからな」
「他にも聖レンゼル修道会に所属する修道院はあるし、“重宝者”も居るんだぞ。そう簡単な話じゃないんだぞロニー」
「簡単な話じゃなく、純粋な事実さ。今回の件に限って言えばレガリスの、ラクサギア地区の清廉と伝統を背負い、帝国軍に靴を舐めさせてきた修道院は、俺達こと黒羽の団に無惨に破れたんだ。俺達の側が正しいって証拠さ」
「私情が入りすぎだ。よく言うだろ、“1つの勝利を誇示する奴は、次の勝利を遠ざける”って」
「小さくても勝ちは勝ち、とも言うけどな。んで、そういやブロウズは?あの任務からどうしてんだ?」
「さぁな。少なくとも聞いた話じゃ、またいつもの部屋に戻って大した騒ぎも起こしてないとか。個人的には、必要な時以外は籠から出てこないで欲しいけどな」
「全く、何であんな偏屈なんだ?もう少し陽気に過ごしたって良いだろ、バカ高い酒飲みまくるとか、バカ高い女を買うとか。一番盛り上がる時にいつもと同じ事しかしねぇなんてバカみてぇだ」
「なーにがバカ高い女を買うだ、お前こそ買えよ。いい加減童貞を何とかしろ」
「うるせぇ、今は狙ってる女が居るんだよ」
「………マジでお前、あの女狙ってんのか?絶対止めた方が良いって」
「美人じゃなきゃそもそも始まんねぇだろ、俺は絶対妥協しねぇぞ」
「何でよりにもよってカワセミなんだよ、マジで鼻か歯でもへし折られるから止めとけよ」
「其処らの男ならな。だが生憎と俺はもうレイヴンだ、其処らの男よりよっぽどチャンスがあるぜ?」
「言ってろよ、忠告はしたからな。全く、グロングスと言いお前と言い、あんなのと絡みたがる気が知れねぇよ」
「……………そういや、ブロウズは何でかスペルヴィエルと仲良いんだよな。今回の任務もペアだったらしいし、実力者同士の繋がりって奴か?」
「さぁな。怪物同士で通じ合う物があるんじゃねぇか?俺ならサメと遊ぶ方がマシだがね。あのグロングスもわざわざ今回の任務の資料を再び取り寄せて、部屋で読み込んでるらしいし怪物の理屈は分かんねぇさ」
「…………今回の任務の資料?もう次が決まったのか?」
「今回のって言ったろ。今回の、メネルフル修道院の襲撃任務の資料だよ。グロングスの奴、何を考えてんのか資料をわざわざもう一度部下に用意させたんだ。それも、説明の時と全く同じ資料をな」
「はぁ?何で終わった任務の資料を、わざわざ部屋で読み直すんだよ?全く同じ資料なんだろ?任務前に散々読んだ筈じゃねぇか」
「んなもん、俺が知る訳無いだろ。部屋に籠って、カラスと反省会でもしてんじゃねぇか?」




