223
1839年
レガリス中央新聞
夜霜の月25日
“有数の宗教地区、荒廃により無法地帯へ”
先日の残虐な事件を機に、有数の宗教地区と謳われていたラクサギア地区において、人々の道標となっていた修道院及び修道会が現在、著しく衰退している事が明らかとなった。
ラクサギア地区の無辜の民を導き、道を示していた聖レンゼル修道会及びメネルフル修道院だが、先日のレイヴンの襲撃により修道院長を含めた数々の要人を失い、その痛手に狡猾に付け込んだストリートギャング“トルセドール”が様々な条件と偶然により一時的に優勢な形となり、現在メネルフル修道院は衰退の一途を辿っている。
一部を封鎖されたメネルフル修道院の全体的な方針決定、ギャングへの対策において副修道院長ポリー・ファーノンの実力不足を指摘する意見も上がってきているが、今回の取材においても修道院側からの明確な返答、言及は無かった。
副修道院長は現在急務に追われているが故、と取材に対応した修道女及び労務修女は記者に語ったが、依然として修道院に対する不信感、疑問は拭えずにいる。
ラクサギア地区において聖レンゼル修道会に対し、街に害虫の如く蔓延っているギャング“トルセドール”は、修道女や帝国憲兵の殺害、公務への抵抗や妨害、共謀、暴動扇動、禁製品の不法所持、果ては悪辣な破壊工作や不法な取引に至るまで、悪行の限りを尽くしておりラクサギア地区の無辜の民からは、疫病の如く忌み嫌われている。
帝国本部から派遣された専門家、ナディヤ・クレムは今回のラクサギア地区の荒廃について、こう語った。
「宗教地区などの清廉だった街に、何かの間違いや偶然で裏社会から這い出てきた者が入り込み、街の支配などの実権を握ってしまった際、信仰心の低い薄汚れた街や区域に比べ清廉な街である程、急速に荒廃する事が多い」
現在もラクサギア地区においては修道院の実権及び実質的な能力の復旧、敬虔な教徒の保護が急務となっており、清廉な市民に協力と援助を扇ぐ日々が続いている。
ストリートギャング“トルセドール”の実質的なリーダー、ロドリグ・ラングランについてはメネルフル修道院及びラクサギア地区の憲兵により指名手配とされていたが、今回の件を重く見た聖レンゼル修道会は報酬金の増額を検討しているとの事。




