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「なんで“カワセミ”はあんなに荒れてんだよ?」
「荒れてる?カワセミがか?」
「だってそうだろ、ジョアンナの件を別にしても昨日またやらかしたじゃねぇか。もう少しでジェフリーも殺されかけたんだろ?」
「あぁ、ジョアンナよろしく鼻と歯、腕と指を折られるだけで済んだ。命あっての物種だとよ」
「全く、お互い鼻が折れてお似合いの二人だ。むしろ仲が深まって良かったじゃねぇか」
「深まる訳ねぇだろ、ジョアンナは今回の件でジェフリーを見限るとさ。まぁ、ジョアンナは鼻が折れてションベン漏らして落ち込んでる最中に、カワセミがダメだったからってマリーに言い寄ったんだぜ?」
「マジかよ、マリーに?あのカワセミの“彼女”に言い寄ったってのか?ジェフリーがまだ生きてんのが信じられねぇよ、それならまだカワセミ本人に殴りかかった方がマシだろ」
「あぁ、ジェフリーがどんな宗教を信仰してるか知らないが、きっと信仰してる神に感謝してるだろうよ。んで、ジェフリーの事を知ったジョアンナがお冠でな。“私があのクソッタレに、トドメを刺してやる”って大騒ぎさ、皆が必死になって止めたぐらいだ。カワセミもそれ聞いて、大笑いしてたぜ?荒れてる奴はあんな風に笑わねぇだろうよ」
「言いたい事は分かるんだけどよ、それにしちゃあ妙なんだよ。確かにそんな話なら、カワセミ………ラシェルは大笑いするだろうし想像も出来るんだが、それを踏まえても随分と荒れてる気がするんだよ。普段以上に煙草吸ってるしよ、この前なんか変に絡んできた女に煙吹き掛けて追い払ってたぐらいだし」
「よくある話だろ、考え過ぎだよ。カワセミなんて普段から生意気な奴叩きのめしてんじゃねぇか」
「俺だって普段なら気にしねぇがよ、最近は色々と不穏な事ばっかり起きてるだろ?あのクソッタレなブロウズのせいで帝国軍に本格的に眼を付けられたり、処刑の署名が集められたり逆に処刑阻止の署名が集められたりよ」
「まぁ、そりゃあそうかも知れないが………」
「用心はするに越した事無いぜ、“予防は治療に勝る”だ。今は黒羽の団に取って複雑かつ大事な時期なんだ、分かるだろ?万が一、って訳じゃないがもしラシェルやユーリが“黒魔術”………まぁ理由は何でも良い、トチ狂ってイカれた事を始めたら、俺達が止めなきゃならないんだよ」
「まぁ、言いたい事は分かるよ。俺も同感だ。でもな」
「何だよ?」
「仮にカワセミやユーリがイカれちまったら、お前どうやって止めるつもりだよ?ブン殴って止めるか?それとも蹴飛ばして止めるか?具体的な案はあるのか?」
「そこはまぁ、上手くやるさ。何か、こう、器用にさ」




