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「ドイブラー、調子はどうです?」
「あぁクルーガーさん、もう大分楽になりましたよ。ご迷惑お掛けしました」
「あぁ起きなくて良いですよ。熱は?」
「まだありますが、もう動けますよ。もう平気だと言ってるんですが、中々作業に参加する事が認められなくて」
「大事を取っておきましょう。このまま無理して作業に参加しても、回復が長引くだけですよ。早く作業に戻る事より、全快させる事を意識しましょう」
「ですが、人数も足りないと聞いています。今の技術開発班は、少しでも人手が欲しい筈でしょう?」
「人手は欲しいですが、病人を叩き起こして駆り出す程ではありませんよ。厳しい状況なのは否定しませんが、今は何とか回せています。貴方が全快して、作業に参加してくれたら益々早く復旧出来るでしょう」
「そう言われると、勝てませんね。まぁ、休暇だと思う事にしますよ」
「それが良いでしょう。焦ると治る物も治りませんから」
「あぁ、そう言えば雪害の設備復旧もそうですが例の…………その、“塔”の方はどうなったんです?結局人員は捻出出来たんですか?」
「その件ですか。心配ありませんよ、大丈夫です」
「そうですか?なら良いんですが………確か、本来の除雪人員は設備復旧に回されたり、自分みたいに厳冬にやられてるって聞いたので」
「当ててあげましょうか。自分がその“塔”に向かう人員に回されないか、気になるのでしょう」
「いえ、そんな事は。あぁ、何と言うか、その、はい。クルーガーさんには勝てませんね、その通りです」
「ミスゼレーニナの所には、既に人を送りました。食糧と物資も渡していますので、皆さんが全快して万全の状態で作業に取り掛かれるまで、作業の遅延を持ち堪えるには問題ないでしょう。むしろ充分過ぎる量です」
「…………この豪雪の中で物資を送ったんですか?その、どうやったんです?物を運ぶどころか、シャベルで雪を掻き分けながら進む事になると思うんですが」
「送った立場でこう言うのは心苦しいですが、恐らくは苦労していると思います。重い物資を背負って、同じく荷物をソリで引きながら、シャベルで雪を掻き分けて進めと言う訳ですから」
「例年の雪でも苦労していたのに、この豪雪じゃ下手したら辿り着けない可能性もあるんじゃないですか?あの塔、技術開発班の敷地とは言え、随分と我々から離れた場所に建てられてますし。それに………」
「それに?」
「………それに、こう言いたくは無いですがそうして辿り着いた“塔”には例の彼女が居るんでしょう?何一つ報われない仕事じゃないですか、そんなの。誰もやりたがりませんよ」
「まぁ、彼女は確かに社交的でない部分もありますが、かと言って雪の中に埋もれさせて良い様な方でもありません。他の必要な仕事と、何ら変わりませんよ」
「それにしても、あんまりな仕事でしょうに。あれ、待ってください」
「はい、何です?」
「既に人を送ったという事ですが、誰を送ったんです?元々、作業員は余裕の無い状態でしょう。まさかジェレミーですか?」
「いいえ。ミスターブロウズを派遣しました。幸いにも、本人が手伝ってくれるとの事だったので」
「グロングス…………失礼、ブロウズですか。またそれは、その、適材適所と言うか、何と言うか。まぁ彼なら魔女が相手でも平気でしょうしね」
「ドイブラー。彼に、そんな事を言うものではありませんよ。それに彼なら私と違って、ミスゼレーニナに多少なりとも融通を効かせられるでしょう。明確に約束した訳ではありませんが………恐らく今回の件に関して、彼もミスゼレーニナに幾らか譲歩する様に言ってくれる筈です」
「魔女の相手が出来る、ブロウズが凄いってのはまだ何とか分かるんですが………ブロウズは、あの魔女に言う事を聞かせられるんですか?クルーガーさんが、あれだけ言っても全く言う事聞かないのに」
「少なくとも私が言うよりは余程、角を立てずに収めてくれる筈です。彼が言って聞かないなら、大体の方が無理でしょうね。それこそ、幹部達が直々に口を出さない限りは」
「へぇ、そんなもんですか?正直、自分にはとてもそんな風には見えませんが」
「そんなものですよ。私達が思うより、彼等は親しい様ですから」
「……相変わらず、酷い雪ですね。下手したらブロウズも、積雪の中で氷漬けになってるんじゃないですか?」
「滅多な事を言うものじゃありませんよ、ドイブラー」
「失礼しました。ですが、大丈夫なんですか?ずっとこの調子ですよ?」
「彼ならまず問題は無いでしょう、ですがミスゼレーニナに限っては少し心配ですね…………」
「体調を崩してないと良いのですが」




