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「……マリー?何、どうかした?」
「ラシェル、大丈夫?」
「大丈夫って何がよ?まだ夜中じゃないの」
「貴女、凄い魘されてたわよ」
「…………ごめん、ちょっと嫌な夢見ちゃって」
「昔の夢?」
「大した夢じゃないわよ。でも久しく見てなかったから、ちょっとね」
「何か持ってくる?」
「別に良いわ、此方来て。ほら」
「大丈夫なのね?」
「もう大丈夫よ。昨日、その……ラクサギア地区の話をしたから、久々に思い出しちゃって」
「ラシェル………」
「あぁマリー気にしなくて良いのよ。あいつらは死んだ、もう昔の事なんだから」
「……そうよね、うん、済んだ事だものね」
「あぁもう、何で貴女が泣くの。ほら此方向いて」
「ごめんねラシェル、でも私どうしても貴女が………」
「ほらおいで。貴女が泣く様な事じゃないでしょ、私の話なんだから。マリーにはどうしようも無かったし、もう奴等も皆死んでる。済んだ事なんだから」
「ラシェル、灯り付けても良い?」
「良いわよ」
「……何でラクサギア地区の話なんて話す事になったの?誰かに聞かれたの?」
「少しね。別に真面目な話だし、怒る様な事じゃないわ。向こうも私個人の過去を掘り返す様な事はしなかったし」
「別に、わざわざ掘り返された訳じゃないのね?なら良いけど………」
「……ちょっと眠れそうに無いわね」
「何か食べましょうよ、私軽食でも作るわ」
「そうねぇ、せっかくだしマリーの手料理食べようかしらね」
「煙草とウィスキーも持ってくる?」
「ふふ、マリーがそんな風に言ってくれるのは嬉しいけど、ウィスキーは止めておくわ。午前中から用事があるからね」
「あら。1日飲んだくれるのも良いと思ったんだけど、何かあるの?」
「ちょっとね。面倒だけど、外せない用事だから。下手したら、夕方までまる1日使う事になるかも」
「そんなにかかるの?どうせ雪だらけだから、明日は1日ラシェルと一緒に居るつもりだったのに」
「ふふ、早く済んだらすぐ戻るわ。また部屋でゆっくりしましょ。用事が済んだらウィスキーも飲みましょ」
「約束よ?」
「えぇ、約束ね」
「………ねぇ、今更だけど本当に凄い雪よ。止めないけど、風邪引かないでね?あのお洒落な上着と手袋、ちゃんと着込むのよ」
「ええ。分かってるわよ、ありがとう」
「それと今日はまだ良いけど、いずれ雪かきするのも忘れないでね?」
「いずれやるわよ。いずれ、ね」




