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「間違いないのか?」
「あぁ、全て皆殺しだ」
「武装したレガリスの奴隷商達をか?奴等だって素人じゃない、憲兵でも無い軍人でも無い男が全員皆殺しにしたのか?」
「ライフルもピストルもサーベルも持ってる連中を、単独で1人ずつだ。其処らの憲兵じゃ逆立ちしても敵わないだろうな、格が違いすぎる」
「荒事には慣れてるらしいが、それでも殺しは初めての筈だろ?初めての殺しで14人も筋道立てて、殺したってのか?軍人でもギャングでも無かった男が?」
「下手なギャングより逸材だな。思わぬ拾い物かも知れん」
「………本気で勧誘するのか?幾ら殺しが上手くても、組織で使い物になるかは分からんぞ」
「あの様子なら特に問題ないだろう、聞き分けは良さそうだしな。それに戦い方が其処らの殺し屋とは違う。“我々”向きだ、このままレガリスで処刑させるには惜しい」
「分かった、本部に連絡を取ろう。カザドグに居る内に返信が来ると良いが」
「いよいよレガリスと戦争だからな、逸材は多いに限る。最悪、あの巨漢なら労働力としても役に立つさ」
「それにしても、まさか俺達が狙っていたリプスコムを無関係の男が殺すとはな………レイヴンになってそこそこ経つが、こんな経験初めてだ」
「俺もだよ。まさか暗殺任務で団員を勧誘する羽目になるなんてな」
「奴は言う事を聞くと思うか?」
「見た所、聞き分けは良さそうだ。どのみち、生きるつもりなら俺達に従う以外の選択肢は無い。このままレガリスに連行されて“誇り高い死”を望むなら、お相手の意思を尊重するまでだ」
「あいつ、先程から糸が切れたみたいに動かないが本当に立ち直れるのか?」
「さあな。あいつ次第だ」
「おい、カザドグ憲兵はたった2人か?あれだけの騒ぎになってるのに、たった2人しか憲兵は来ないのか?」
「良く見ろ、遠くから鹿車も来てるだろ。きっと、レガリスの連中に歯向かう奴等を捕まえるべく来たんだろうが、とんだ災難だな。あの惨状を見て腰を抜かさないと良いんだが」
「まさか特別認可を受けてレガリスから来た国際貿易奴隷商が、13人の武装した取り巻きごと引きちぎられて殺されてるなんて夢にも思わないだろうからな………」
「まぁ、まだ気が進む仕事だろ。そもそも自分達を奴隷にして売り飛ばしてる連中の肩を持たなきゃいけないのが、そもそもおかしいんだから」
「見ろ、血に気付いたぞ。ライフルを構えてる」
「憲兵に早とちりで撃たれないと良いが。これで勧誘する前から奴が死んだら、何しにリドゴニアのカザドグまで来たか分からねぇよ」
「それはそれとしても、奴隷商云々を抜きにして14人殺した男がその場で撃たれない保証は無いだろ。大丈夫なのか?」
「さぁな、あいつが普段憲兵からどう思われてるかに賭けるしかない」
「あいつの人柄次第だ」




