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「クソッタレめ、奴隷どもと戦争なんて本当にやんのか?帝国相手によぉ」
「心配なんですか?クエンティンさんは帝国どうこうなんて、儲けしか気にしてないと思ってました」
「リプスコムさんと呼べ。儲けでの話に決まってるだろうが、それ以外何があんだよ。帝国がペラセロトツカを滅ぼそうが知った事じゃねぇし、汚い亜人だらけの国なんて“浄化”しちまえば良い」
「じゃあ何が気になるんです?」
「てめぇの頭は、おが屑でも詰まってんのかアホが。ペラセロトツカがモメて入国が面倒になったら、俺達は亜人奴隷を何処から仕入れるんだよ?」
「あっ、成る程」
「だからこうして、わざわざクソ寒いリドゴニアの田舎街まで来てんだろうが。あぁクソ、聖母テネジアが訪れなかったのも納得だぜ。リドゴニア東部でこんなに寒いなんて北部はどうなってんだ?雪と氷と泥でも売ってんのか?」
「………あの噂本当なんすかね、リドゴニアの北部大陸は年中雪だらけで、そこに住んでる亜人の奴等は麦どころか草も生えないから、シカの内臓やらクジラの肉やらを生で食べるって話」
「俺も噂でしか聞いた事ねぇけどよ、それが本当ならそんな奴等が一人前に言葉喋って文明人のフリしてるなんて、俺達文明人への侮辱だぜ。奴隷以外に用途がねぇよ、そんな奴等。おい、火」
「あっ、はい」
「………まぁ今回は帝国軍の為に奴隷の女を仕入れるのが目的だ、戦争中も退屈しねぇ様にな。数は少なくとも、いつもより高値で売れんだろ。んだよこの煙草、変な味だな」
「リドゴニアで仕入れた煙草ですからね。女奴隷はそこそこ集まりましたけど、まだ何人か仕入れるんですか?」
「見た目の良い女をもう少し集めたらレガリスに帰るぞ。早く文明的なレガリスに帰りてぇよ」
「全くですよ。レガリスじゃ安物として売り払われそうな時代遅れのディロジウム原動機や駆動機関を、自慢げに使ってる連中なんて嫌になります。皆、カーペットと毛皮を縫い合わせたみたいな服ばっかり着てますし」
「レストランに入れば、当たり前みたいにサメ肉の料理なんて出しやがってよ。ピクルスじゃねぇ、シカの肉みたいに“ステーキになります”って出されるもんだから、もう少しで怒鳴る所だったぜ」
「サメ肉?レストランでですか?あんなの、奴隷にやるのが精々の安肉でしょう。キセリア人が食べる物じゃありませんよ」
「しかもそのサメ肉を、キセリア人の店主が出してんだぜ?この国は亜人だけじゃなく、キセリア人まで無愛想な顔してやがる。リドゴニアに生まれると、キセリア人でも中身が亜人になっちまうのかね」
「マグダラ語を話せない連中なんてそんなもんですよ。生まれが汚い事を後悔してもらうしかありません」
「何処行っても辛気臭いし、やっぱ途上国の大陸は駄目だな。テネジア教じゃない、ニヴェリム語とカラモス語の変な宗教も流行ってるしよ」
「リプスコムさんはニヴェリム語も分かるんですもんね、自分カラモス語は結構分かるんですけどニヴェリム語はもうダメです。店員に満足にオーダーも出せませんよ」
「別に良いだろ、どのみち亜人相手に公平な口聞いてやる必要もねぇしな。美人が居るかどうか聞き出せば、後は他の連中が上手くやるさ」
「しかし此方の連中はペラセロトツカに比べて随分と聞き分けが悪いですね、此方はレガリスから特別認可を受けてる公式な貿易だってのに」
「周りにも金を出すって言ってるのにな。亜人の癖に“金の問題じゃない”なんて抜かすもんだから、結局は手荒になっちまう。大人しく従えば多少金も出してやるってのに、何でわざわざ怪我して金も貰えない方を選ぶかね」
「亜人の自覚が無いんでしょう。こんな国に住んでるから、自分達とキセリア人が平等に口が聞けると思ってる。奴隷民族が俺達と同じ目線で喋るなんて、反吐が出ますよ」
「仕方ねぇさ、俺達は仕事をするだけだ。さて、もう一本吸ったら行くぞ。」
「まだカザドグを離れられないんですか?もうこんな田舎大陸嫌になりますよ。せめてリドゴニア東部でも、大陸じゃなくて空中都市に移動してダイナーにでも行きましょうよ。リドゴニアに娼館ってあるんですかね?」
「まぁ空中都市にまで行けば、都会だろうしダイナーぐらいあるか。それに娼館なんぞ行かなくても、女なら仕入れたばかりのが幾つも居るだろ。俺達は奴隷商だぞ?出荷前の亜人で遊んだ方が手っ取り早い」
「まぁそれもそうですね、結局は暇潰しになれば良い訳ですし。さて、一仕事頑張りますか」
「そうしろ。取り敢えずは此処等で噂になってる亜人の女が居る、顔はかなり良いそうだ」
「じゃあそいつを仕入れて、それで“遊んで”からにしますかね」
「無茶はするなよ。噂によると、他より身体が弱いらしいからな」




