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最悪の年末になっちまった。
結局、あれだけ俺達に迷惑を掛けた天下のクソ野郎デイヴィッド・ブロウズは無罪放免。
厳密には無罪放免とは違うだの何だの言う輩も居るが、俺達からすれば無罪放免以外の何者でもない。
黒羽の団を自分の都合であんな危機に晒しておいて、大した処罰も無しに平然と今も奴は生きている。
せめて何本か指を切り落としても良いぐらいだろうに、頭のイカれたクソ共が“ブロウズの処分に反対する”署名なんぞをかき集めてきたせいで、俺達の正当な主張は始末書みたいに破棄されたのだからやってられねぇ。
イラリオンはあれから荒れっぱなしで、昨日なんか昼間から飲んだくれては女に絡んでいた。
どう言葉を選んでも、酒浸りのまま若い女を自分の愚痴に付き合わせている姿は無様としか言えなかったが、気持ちは有り余る程に分かる。
あんなクソ野郎が支持されてまで救われ、正当な俺達の主張及び署名が却下されるどころか、“団内を駆け回ってまで味方をかき集めたのに言い負かされたアホども”として扱われているのだから、俺だって最初聞いた時は今すぐウィスキーの瓶で全てを投げ出してしまいたくなったさ。
きっと、この団に娼館があればその足で向かって思う存分、安い胸だの尻だのを踏みつけて憂さ晴らしに俺は没頭していただろう。
言いたくは無いが最近は俺を含め、友人の何人かはイラリオンに見切りを付けている。
その内、話題にも出さなくなるだろう。
どうしてこうなってしまったのか。俺達は、浄化戦争で散々ラグラス人を殺して回った上に黒羽の団にすり寄り、挙げ句迷惑を掛けに掛けて団自体を危険に晒した、煮詰めた小便以下のクズを追放、処刑するべきだと進言しただけなのに。
何故、あんな奴の味方が現れる?
先述した前科だけでなく、奴は今レガリスにおいて邪神グロングス、ラグラス人が不当な差別を受ける理由の一つとさえなっているのに。
そうだ、おかしい。
ラグラス人をあれだけ殺して回って英雄にまでなった男を、何故ラグラス人が支持できる?自分の親族を殺した男かも知れない、とは考えないのか?奴が居たからこそ奴隷貿易は廃止されず今も続いている、とは思わないのか?
訳が分からない、まるで狂気の渦だ。
あのクソ野郎のブロウズ、いや“カラスの怪物”が団に来てから何もかもおかしくなってしまった。
奴が居たからこそ出来た事がある、なんて戯れ事を数えきれない程聞いたがそれだって他のレイヴンでも出来た筈だ。
別に俺もイラリオンもレイヴンになった事は無いが、あんなクズに出来る仕事ならレイヴンにも出来る筈、いや出来なければレイヴン失格だろう。
そんな奴が、何故そんなに重宝されて持て囃されるのか。
このままでは帝国を倒したとしても、大罪人とその罪を旗に掲げる様な救いがたい連中になってしまう。
奴を野放しにする事は、我々が高潔で崇高な覚悟の為に戦っていると示す為にも、絶対に許してはならない。
そうだ。
どれだけクズを持ち上げる愚かな連中が犇めこうとも、我々が諦める訳には行かないのだ。
劣勢になったとは言え奴を追放する署名が集まった事は事実な様に、現に我々の味方は居る筈なのだから。
まだ、ブロウズのクソ野郎を団から追い出したい奴等は団に数多く居る筈だ。
必ず希望はある。我々は希望がある限り、諦めない。
ブロウズ追放の際に集まった署名をもう一度確認して、仲間をかき集め、また策を練ろう。
追放に署名した奴が、あのクズを味方する連中に影響されてない限り、まだまだ我々の助けになってくれる筈だ。
よし。
今年は景気づけに酒でも飲んで女遊びでもして、また来年から少しずつブロウズ追放に向けて動きだそう。
勿論、この団に娼館は無いし娼婦も居ないが、生憎と娼婦の同類かそれ以下の女は何人か心当たりがある。安さ故に顔や身体が気に入らなくても、少なくとも便所にはなる。
安酒を幾つか飲んで安い女を何人か抱いたら、また来年から頑張るとしよう。




