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1838年
レガリス中央新聞
氷結の月30日
“帝国本部、近辺空域から航空隊を撤収”
先日、帝国本部はレガリス近辺空域の捜索を終了し、レガリス国内に捜索範囲を狭めていた事を明らかにした。
近年活動が活発化し、無辜の人々を脅かしている抵抗軍“黒羽の団”に、手配中だった大罪人デイヴィッド・ブロウズが関与している事、またその工作員“レイヴン”として活動している事が今月に明らかになってからは、帝国軍は一時的に特別航空捜索部隊を設立。
帝国本部の指揮の元、特別航空捜索部隊は外国の非合法組織との癒着、また未だ判明していない黒羽の団本部が外国近辺にある可能性を視野に入れ、レガリス近辺の空域に加え東方国ペラセロトツカ、及び北方国リドゴニア近辺の空域捜索に乗り出した。
10日間にも及ぶ丹念な捜索が先述の空域において行われたが、黒羽の団に繋がる直接的な進歩は見られなかった。
帝国本部によると、今回の空域捜索によって国外、及び近辺の空域に黒羽の団が潜んでいる可能性を根絶出来たので、レガリス国内での捜査や巡回に注力していく、との事。今後は輸出や輸入に関しても規制を強化する予定、とも。
この頃、奴隷商が憲兵と衝突する事が増え、奴隷貿易関係者の横暴な態度や行動が問題視されている。
暴行や殺傷に関する事件から、ブージャムに代表されるギャングとの癒着が明らかになった奴隷商が3人、またそれに伴う関係者が先日逮捕された。
余罪は随時調査中だが、奴隷貿易関係者が暴力的になっており度々同業者との衝突が増えているとの事。
大罪人デイヴィッド・ブロウズが黒羽の団に属し、レガリス国内の空気が張り詰めている影響から本来亜人を扱う立場の筈の奴隷商にさえ違法行為、憲兵に反抗的な態度を取る者が明確に増加しているのではないか、と帝国本部はコメントした。
浄化戦争を乗り越えた我等は、今更なる敵と危機に直面している。
戦争に敗北し思い知らされた上で尚、我等に牙を剥く奴隷民族、ラグラス人こと亜人の暴走である。
一部では“褐色の疫病”とさえ呼ばれている近年の抵抗軍の活性化、それに触発された無法者達により、テネジアに祈るレガリスの無辜の人々は浄化戦争が終わった後も傷付き、悲しみ、涙と血を流している。
領分を弁えない奴隷との戦争は、未だ続いているのだ。
家で聖母テネジアに祈っている貴方や日々の労働に汗を流している貴方、そして勿論本紙を読んでいる貴方。
例え剣を握っていなくても、拳さえ握って居なくても貴方達の一人一人が立派な戦士、そして愛国者だ。
広がる亜人の暴走に、穢れた邪神崇拝に立ち向かうのに、貴方達の様な純白で高潔な祈りは欠かせない。
決して亜人の暴走を許してはならない。薄汚いコインを片手に、亜人が誘ってきても強く気高い心で断り、立ち向かう事が肝要なのである。汚い脱走奴隷やその仲間の口車に乗らず、はね除けなければならない。
キセリア人、誇りある正当人種として。
嵐の中では道標が頼りな様に、穢れた連中の手によって荒れ狂うレガリスにおいて、決して信心を失ってはならない。
暗い雲に囲まれている時においてテネジアへの信仰こそが、我々の道標なのだから。




