163
「もう消すのか?」
「あぁ、遅いならまだしも別に消灯が早くて怒られるこたぁねぇだろ」
「……仕方ねぇ、もう少ししたら今日はお開きにすっか」
「一応言っておくが、帰り道気を付けろよ。ランタンのカバーも忘れるな」
「分かってるっての。全く、面倒な事になっちまったな」
「暫くは仕事が短くなって楽になったと割り切るしかないさ、厳戒態勢で暫くは仕事も二の次だろうし」
「仕事が短くなったって“それ以外”も制限されちゃ、どうしようもねぇさ。酒だって幾らでもある訳じゃ無いしな」
「暫くの辛抱だと思うしかない。あのクソ野郎め、何から何まで俺達に迷惑かけやがって」
「黒羽の団に来て多少は役に立ったのかも知れんが、今回の騒ぎで帳消しどころか追放や処刑になっても、と言うかなるべきだろ。どうなんだ?」
「実際、そういう方向に動き出してるらしいぞ。まぁ元々、黒魔術がどうのと騒ぎになった時には処刑寸前まで行ったんだ、死に損ないに引導を渡すには良い機会さ」
「あぁそうか、そんな騒ぎもあったな。今考えればあの時処刑しておけばこんな騒ぎにはならなかったものを」
「全くだ。“その後も役に立った”なんて抜かす奴も居るが、ブロウズでなきゃいけない理由なんて無いだろうに。レイヴンなら代わりだって、むしろブロウズ以上に優秀な奴だって居る。何なら、あの“偏屈なノスリ”を引っ張ってきても良いぐらいだ」
「偏屈なノスリ?…………あぁ、ユーリの事か。そんな名前もあったな、確か本人が嫌ってただろその名前は」
「そんな事ねぇさ、最近話したがそりゃ誤解なんだとよ。まぁあの性格だ、誤解されるのも無理は無いし、誤解だと伝えたのは俺が初めてらしいがな。まぁ何にせよ、ブロウズより優秀で誇り高いレイヴンが居るのに、何もあんな汚水の中から這い上がった様なクズを使う事ねぇって話だ」
「そう言えばユーリはどうなんだ?」
「何がだよ?」
「そのユーリは今回の件をどう思ってるのか、って話だよ。確かユーリとブロウズは面識があるんだろ?自律駆動兵、だったか、あの任務に出るブロウズに付き合わされたとか言ってたじゃないか」
「…………あぁ、まぁ、そうだな」
「何だよ、急に歯切れが悪くなったな。どうかしたのか?ユーリが何か言ってたのか?」
「ユーリが特別妙な事を抜かした訳じゃないんだが、ブロウズの事で少しな」
「どうかしたのか?」
「ブロウズは今回の灯火管制やら厳戒態勢やらの原因だろ?それについて少し聞いてみたんだよ、お前はどうなんだってな」
「あぁ、そういう事か。幾らユーリが、“偏屈なノスリ”が変わり者でも、流石に今回のブロウズには憤慨してるんじゃないか?奴は“元テネジア教徒のクソ野郎”だ、歯か骨を四、五本へし折ってやらねぇと気が済まないだろうな」
「…………ユーリは、それでもブロウズの味方だそうだ。奴が黒羽の団に殺されないかどうか、心配してたよ」
「はぁ!?嘘だろ!?あのユーリが“元”とは言え、テネジア教の帝国軍の味方をしてるってのか!?」
「俺も信じらんねぇけどよ、確かにあいつはブロウズの味方だって言い張ったんだ。何なら、俺にも“ブロウズの味方になってやってくれ”と頼まれたよ。どうしちまったんだかな、調子狂うぜ」
「…………ユーリの奴、余程の貸しでもあるのか?酒のツケが溜まりに溜まってるのか、それとも元帝国軍のよしみで何か融通してもらってんのか?」
「笑わせんな、あのユーリがそんなのに靡く訳ねぇって事ぐらい分かってんだろ。酒も煙草も賭けも興味無し、コイン一枚でも借りたら靴を売ってでも絶対に返す様な奴だぞ?」
「………だよな、悪い。だが益々分かんねぇ、なら何でユーリはよりにもよってあのクズに味方するんだ?下手したらこの空で一番殺したい相手だろ、デイヴィッド・ブロウズは。それをどうして味方なんて出来る?」
「分からん、それこそ“黒魔術”でもかけられたのかも知れん。話半分だがあのクズ、ユーリだけでなく“カワセミ”も手懐けたって話らしいぜ」
「………………」
「止めろよ、酔ってねぇよ。その目を止めろ」
「シラフで言ってるんなら尚更だろ。“血塗れのカワセミ”があのブロウズに懐いてるって?マジかよ」
「女達の間で噂になったらしいぜ、“あの”カワセミがブロウズ相手に殴り合う寸前で、喧嘩を止めたって」
「“待て”が出来る様な奴じゃねぇだろ、歯が折れても噛み付く様な奴だぞ?」
「何にせよ、カワセミとブロウズが仲良くやってたのは事実だ。噂によれば笑顔で握手もしたんだとよ」
「…………何がどうなってんだ?訳が分からねぇよ」
「俺もだよ。こうして見ると“ブロウズの味方”なんてバカが増えてるのも、もしかしたら本当に黒魔術を掛けられてるかも知れねぇな、あの不気味なクソ野郎によ」
「あぁ、全くだ」
「そもそも脳ミソがまともな奴なら、あんな腐ったクズの味方なんてする訳無いしな」




