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「バカ言えよ、そんな訳無いだろ」
「聞いてくれよルドヴィコ、さっきもブロウズの奴が“魔女の塔”に入っていったんだ。ありゃ間違いねぇって」
「あの“魔女”の事は俺だって知ってる。お前らの騒ぐ様な事なんてある訳無いって言ってんだよ」
「何が“ある訳無い”だよ、よく言うぜ。あのブロウズの肩にカラスが留まった時には、あれだけ走り回ってた癖によ」
「黙ってろ、ブーツの底で話してやろうか?あんな悪魔達がお前らの言う様な、下らない事する訳が無い。あの“魔女”は、そこらの髪掴みあって金切り声上げてる、小娘連中とは違うんだよ」
「騒いでたのは事実だろうが、別に気取んなよ。“汚れたシーツ”なんて誰にでもある話さ。それより、この噂が本当ならかなりのニュースじゃねぇか?」
「クソ下らねぇな」
「あんまり固く考え過ぎんなよルドヴィコ、幾ら“魔女”ったって有角種の小賢しいチビに過ぎねぇんだ。所詮は惚れた腫れたで騒ぐ、年頃の女の子さ」
「ただの有角種のチビが“魔女の塔”を建てて閉じ籠って、クルーガーさんを言い負かして、幹部達に対等に意見してるってのか?バカも休み休み言え。あいつらはそんなタマじゃねぇ」
「認めろよルドヴィコ。確かにブロウズは疫病みてぇに不吉な化け物だし、あの“魔女”は有角種な上に不気味な小娘だ。だが、結局あいつらだって話もすれば飯も食うんだ」
「いいや、有り得ねぇ」
「考えて見ろよ。クルーガーさんみたいな技術者でも無い男が、あの“魔女の塔”に何度も踏み込んで、何時間も追い出されない理由なんて一つだろ?」
「いつまで言ってんだ、馬鹿馬鹿しい」
「ブロウズは、あのちっこい小娘に気に入られちまったんだよ。間違いないって、だからあんなに何時間も塔に居られるんだよ」
「有り得ねぇって言ってんだろ、“魔女”がそんな其処らの小娘みたいな理屈で動く訳ねぇ。もっと不気味な……恐ろしい理由に決まってる」
「考えても見ろよ。ブロウズみたいな怪物と、恐ろしい“魔女”の組み合わせだぜ?化け物同士、牽かれたって不思議じゃねぇだろ」
「童話とは訳が違うんだ、あいつらに普通の若者みたいな付き合いがある訳無い」
「むしろこれこそ童話だろ。カラスの怪物と、塔の魔女だぜ?ブロウズがあの塔に住み着いたって何ら不思議じゃねぇ」
「賭けても良い。これであの二人がカラスの卵でも産んだら、数百年は語り継がれる怪談になるぜ」




