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ヨミガラスとフカクジラ  作者: ジャバウォック
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 ライターのフリントをそろそろ替えるべきか。





 紫煙をゆっくりと吹かしながら、先週ディロジウムオイルを充填したばかりのオイルライターを眺めた。


 何度かオイル切れで不機嫌な目にあってからは、ディロジウムオイルは切らさない様に気を付けているのだがついつい、フリントの方の交換を忘れてしまう。


 今の彼女からのプレゼントという事もあるし、フリントを交換してオイルを充填して、末長く使って行きたいのだが。


 吸殻が幾つか溜まった灰皿に灰を落とし、長く伸ばす様に紫煙を吐く。


 そう言えば、このライターをくれた彼女と最近ゆっくり過ごせていない。また彼女の手料理でも食べながら寝惚ける程の長い時間を過ごしたいものだが、彼女も彼女で最近は忙しそうだから、そんな長い時間を取るのは難しいだろう。


 紙巻き煙草を咥えたまま、頭を掻いた。


 そろそろ昼食にするか、なんて考えた辺りで今朝食べた朝食の食器を全く片付けていない事を思い出す。


 使った食器を溜め込む癖はいい加減直さないと、また彼女に怒られるな。


 だが今咥えてる煙草と同じく、中々癖は治らないものだ。


 今日はどうしようか。上層部が匂わせている話によると、もうじき自分には普段の任務とは違う“特別な任務”が来るらしい。


 その特別な任務では、久々にウィスパーを操縦出来るそうだ。


 またあんな風に大空を飛べるかと思うと、任務だとしてもやはり気分が良い。自分の一挙手一投足で、あの果てしない大空をハネワシの様に思い通りに飛び回れるのは、ウィスパー乗りの特権だろう。


 しかし、“特別な任務”とは何なのだろうか?


 確かにウィスパー操縦は選ばれし者にしか許されない栄誉でもあるが…………単なるレイヴン等の人員輸送なら、何もウィスパーで無くとも小型船等でも良い筈だ。


 レイヴンをいきなり任務地のど真ん中に投げ込む、という事でも無い限りわざわざウィスパー乗りの自分を指名する事は無い。


 何もウィスパーに乗る仕事が少ない訳では無い、それこそ先述の通り“戦地のど真ん中にレイヴンを投げ込む”という任務を請け負った事も少なくない。


 だが、わざわざ“特別な任務”とついているのがどうにも気になる。


 それに加えて、どうやら聞こえてくる話によるとその話が立っているのは自分一人らしい。


 益々分からない。自分が想定している様な内容なら、もっと他のウィスパー乗りにも話が来ている筈だ。


 上層部は自分に何をさせるつもりなのだろうか?


 確かに、自分は他に類を見ないウィスパー乗りだと自負してはいるが……


 煙草の先が灰で長くなっている事に気付いて、悪態を吐いて吸殻の残った灰皿に灰を落とす。


 寝起きの下着姿のまま着替えてない事もあって、足か腕に灰でも落とせば不機嫌になる程度の火傷にはなるだろう。


 また治りかけの火傷を目敏く見つけられて小言を言われては、たまったものではない。


 そう言えば、いつまでも下着姿で居るなと彼女に怒られた事もあったな。


 休暇の時ぐらいは一日中下着でも構わないとおもうのだが、彼女はどうやらそういう質では無いらしい。


 ふと自分が昨晩飲んでいた、半分程残ったウィスキーの瓶とグラスが目に付いた。


 ……午後からは武術鍛練やウィスパー操縦訓練でも思っていたが、どうせ昼近くまで下着姿で居たならこのまま着替えず、ウィスキーでも飲みながら明日まで時間を潰しても良いか。


 紫煙を燻らせる。


 一旦はそこまで考えるも、もう一口煙草を吸ってから灰皿で火をもみ消した。


 酒と煙草にまみれた一日を送るのも自分としては、大いにそそられる所ではあるが締める所は締めておくべきか。


 昼食でも食べた後、ウィスパー操縦訓練にでも向かおう。


 その前に服を着替えて彼女の所に顔を出しても良いな、そう言えばイザベルが男の事で何か揉めているとも言っていたし。


 もし問題が荒事なら自分が出るべきだろう、相手を鼻血まみれで気絶させるのは流石にイザベルには荷が重い。






 カラスの懐中時計で時間を確かめつつ、欠伸混じりでワードローブへと足を向けた。

今年も宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あけましておめでとうございます。 今年も本作品を楽しみにしております。
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