異世界転生できると思ったら女神に現代転生された件
「結論から言うと、あなたが救うのはあなたが今まで生きていた世界、いやあなた自身です。」
「どういう事?」
そういうとアルルは「コホン」と小さく咳払いして説明を始めた。
(ほんとにコホンっていう人いるんだ……)
「あなたが死んだのは間違いです。なぜならあなたは死ぬのはもっと後。あなたは世界的に偉大な開発をする予定だった。それは今後の世界の常識を変えてしまうほど凄い物をね」
「世界の常識を変えてしまうほど? 僕がそんな事できるわけ」
ドン!
アルルはまた杖を地面に振り下ろす。
真っ白い世界に響く強烈な音が耳に大ダメージだ。
「本当なんだから! あんたみたいなやつでもね。でもこんな突発的に死んでしまったのは困るの。全くもって予想外よ! どう責任を取ってくれるのよ!」
(ちょっと酷いこと言ってない? というか感情の起伏が激しいな、この人)
「コホン……ということであなたは別の人に転生して、あなたが死んでしまうこと、なんとかしてください!」
「なんとかしてって……この人???」
アルルがまた杖を地面に叩くと、そこに大きな鏡のようなものが出現した。その中には1人の男性が倒れている姿があった。
「見てみなさい、彼は単純に転んで気絶してここに来てしまったの。あなたより早く来ていたから魔王討伐を依頼して、異世界行っちゃったわけ。」
「なんだと。この人は異世界に行けたというのか?」
「でも彼は転んで気絶しただけみたいなの。つまり現実世界では死んでないのに異世界にいってしまった。魂だけが抜けている状態なの。代わりにあなたが彼の代わりになって、あなたの……いえ瀬川様の死亡フラグを回避してください」
僕「いやいや、話がよくわからないんだけどさ。要するに僕は転生前の僕を死なないようにフラグを折っていくという事?」
アルル「まあ……そうですね。あ、転生先の友人関係、住所、仕事等の情報は転生後自動的にインプットされるのでご安心ください。それでは、いってらっしゃい。」
僕「いやだ!」
アルル「大丈夫です。少し前の時間に転生されます。貴方は貴方が死ぬ前に、なんとかしてください。そして瀬川様が無事に開発が終わったら報酬としてあなたに異世界転生のチケットをプレゼントします。」
僕「嫌だ! 現代社会の波にのまれたくない! 異世界転生する順番が来るまでここで待ってるんだ!」
「そんなわがまま言わないで、大人でしょ? それにそんな事できません!」
「嫌だ嫌だ嫌だ!!! 今行きたい異世界行きたい!!!」
「……」
「このまま転生すれば、いずれ異世界勇者ユウトの最終回みれますよ……」
「そ、そんな取引条件提示されたって、僕は……僕は……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
気付くと僕は家の近くの公園で倒れ転んでいた。
それはもう転ぶ、ではなく転がるレベルだ。しっかりと背中を地面にこすりつけてまるで犬がお仲撫でてほしいとでも言いそうなくらいに派手に転んでいた。
周りの人からの視線が痛い。
「イタタタ」
「あははははは。かっこ悪い!」
近くにいるちっちゃい女の子にめちゃくちゃ笑われた。
「ほら! みちゃだめよ、瑠璃ちゃん!」
お母さんらしき人は女の子に目隠しをさせる。
「あなたも大きくなったらこんな人みたいになっちゃダメよ」
「うん!!わかった!」
(……な、なんで最悪な転生なんだ。)
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身体の状態を起こし僕は近くにあったベンチに座る。
確かアルルは気付いたらポッケのスマホのプロフィールを見ろと言ってたな・・・
ポッケに入っていたスマホを確認する。
僕は自然と脳裏にインプットされたスマホのパスワードを入力し中身を見る。
【塚本春樹】
僕の転生後の名前だ。
確かに僕は転生したようだ。
転んではいるが肩も軽いし視界もいい。
これが若さというものなのだろう。
『救うのはあなた自身です』
女神アルルの声を思い出す。
そういえば……
確かあの時ボールで遊んでた女の子を守るために……
思い出した。
いま、僕を笑ったあの子だ。
今はすごく楽しそうに蹴ったり投げたりして遊んでいるがあの子だ。
おそらく後10分もしないうちに僕が向こうからやってくる。
このまま何もしなければ女の子のボールが車道に飛び出し、そのボールを取りに来た女の子を守るために僕は死ぬ。
僕を死亡フラグから救うためには……
あのボールを道路に出してはいけない。
そのためには!
別の興味を持ってもらい、ボール遊びを終わらせる!!
でもいきなり女の子に声をかけたり、ボールを取ったりなんかしたら僕が社会的に終わる。
転生したばかりなのに。
行動は慎重に行う必要がある。
【mission】女の子の危機を守る。