女神「あなたに救って頂く世界はありません!」
ん……此処はどこ?
僕はゆっくりと目を開けた。
何処までも真っ白な世界。
誰もいない。
どうやら僕は死んでしまったようだ。
でも、あの女の子を救うことができたのであればそれで良かった。
あの会社でこれ以上働かなくて良かったと思ってしまった。
この真っ白な世界は本当に何もない。
『……川様……声……すか?』
ん?なんか声がする。
『……瀬川様……私の……は…・…ますか?』
「だ、誰だ!」
真っ白な世界をきょろきょろと見渡す。
すると急に頭上から女性がゆっくりと降りてきた。
『私はアルル、この世界の秩序を守る女神です。』
その姿はとても美しい、白く長い髪、赤い目に吸い込まれそうになる。異世界勇者でユウトが転生前に見た女神様のようだった。
(しめた!)
そこで僕は気づいてしまった。
これは異世界転生フラグだと。
まるで異世界勇者ユウトのように、僕は異世界できゃっきゃウフフなチート暮らしができるんだなと。
僕にとってはとても嬉しい事だ。
アルルと名乗る女神はきっと僕に異世界転生をお願いしてくるだろう。
女神アルルは僕に向かって、
『貴方は死にました』と言った。
(ほらぁ!)
「アルル、ここはどこなんだ(異世界転生あるあるだな)」
僕は落ち着いたトーンでアルルに話しかける。
アルル『あなたが死んだのは間違いです』
(この流れ、いいぞ!!!)
アルル『本来であればあなたは異世界に……』
我慢できない!
僕「わかりました!! 転生します! 異世界で魔王たくさん倒します!!」
アルル「はい? あ、あの……」
僕「だから僕に世界を救うための聖剣をください!!」
アルル「だから…・…あのですね。あなたに救っていただくというのは・・・。」
僕「よっしゃ、魔王よ待ってろぉおお!!さぁアルル様!僕を異世界へ!」
超絶テンションが高まる。夢にまでみた異世界転生なんだから!
ドコン!
アルルは左手に持っていた杖で地面を叩くと地響きのような大きな音がなった。
「聞いてます? 何を考えていたかは分かりませんが、あなたに救う世界はありません!!!」
「よっしぁああああああ!!!ん? 今なんと?」
聞き間違いを確かめる。
「え? 聞こえませんでしたか。あなたに救っていただく世界はないです。もとより異世界転生なんて倍率が高くてできるわけ無いじゃないですか」
「ってことは異世界にいけないんですか?」
「はい。」
「ってことはめちゃくちゃ可愛いお姫様をパーティに加えることは・・・」
「ないです。」
「ってことはドラゴンに乗ったり魔王を倒したりするなんて未来は……」
「ありません。」
一気に酔いがさめるような感じがした。
そんな事聞いてないよ……
「そ、そんなぁ……アルル様、僕こういう展開にめちゃくちゃ期待していたんですけど」
「ははは、残念でしたね人生そんな上手く行きませんよ。」
「はぁ……じゃあこれから僕はどうすれば……」
「そう、それが問題なんです!」
アルルが目を光らせた。
「結論から言うと、あなたが救うのはあなたが今まで生きていた世界、いやあなた自身です」
「あなた自身……僕!?」