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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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18 ご飯タイム

『タイチ、このまままっすぐでいいのか?』

「うん! 山の上の方に移動してたんだけど、止まったみたいだ」


 山の中腹部分になると、雪が降ってきた。

 寒いけれど、ルークのもふもふの毛がとても暖かい。膝にはケルベロスがいるし、大将は太一の首に尻尾を巻いてくれている。


(幸せの温もりだ……)


 ――と、考えている余裕はない。


「急ごう!」




 山頂に近づくにつれて、雪の勢いが増してきた。

 ルークたちがいなければ、一瞬で凍死していたかもしれない。


『おぉぉっきゅ、これは寒いきゅ!!』


 大将が震えながら、太一の首にしがみついてきた。自慢の毛皮があっても、この寒さには勝てないようだ。


「大将、ここに入ってて」

『ありがとうきゅ!』


 ジャケットの胸元に大将を入れて、少しでも雪から守れるように太一は前のめりになる。


『あ、洞窟だー!』

『あそこからフラワーベアっぽい匂いがするよ~』

『大丈夫かなぁ?』


 ケルベロスが吹雪の先に洞窟を発見したようで、ルークの上から飛び降りていった。様子を見てくれているようだ。


『おーい、誰かいる~?』

『出ておいて~』

『あ、コログリスだ!』

『きゅぅ……!』


 どうやら、コログリスがいるようだ。


「大丈夫そうか? ケルベロス」

『うん!』


 太一の問いかけに、ピノが返事をしてくれた。

 ほっと胸を撫でおろし、太一たちも洞窟へ行く。雪から避けられるだけで、だいぶありがたい。

 体にかかった雪を落とし、ゆっくり洞窟の中を歩いていく。深さはだいたい一〇メートルほどで、中に行くほど広くなっている作りのようだ。


 コログリスが太一のところまでやってきた。


『ご、ごめんなさいきゅぅ! フラワーベアは、人を襲ったりしないきゅぅ……だから、退治しないできゅぅ』

「ああ、そうか……俺たちがフラワーベアを討伐すると思ったのか。大丈夫、そんなことはしないよ」


 安心してと、太一は震えるコログリスへ微笑む。


『きゅぅ……』


 コログリスは安心したようで、『こっちきゅぅ』と太一たちを洞窟の奥へ案内してくれた。


 洞窟の奥へ行くと、一メートルほどのフラワーベアが丸まって寝ていた。

 尻尾の部分に花が咲いている、こげ茶色のクマの魔物だ。まだ子どもだからか、すやすや眠る姿はとても可愛らしい。


 たくさんの落ち葉があり、寝床ということがわかる。その近くにはうさぎクッキーが入っていた袋も落ちていて、コログリスがフラワーベアのために太一の手伝いをしたのだということがわかった。


『フラワーベアは、わたしのことを心配して山を下りてきたんだって言ってたきゅぅ……。ハッチみたいに、わたしが死んじゃうと思ったんだきゅぅ』

「ハッチ?」

『フラワーベアの相方だった、ハチきゅぅ』

「あ……」


 コログリスの言葉に、太一は俯く。

 フラワーベアにとって、ハチは生涯に一匹だけのパートナーだという。そのハチを亡くしただけでも辛いのに、仲の良いコログリスにまで何かあったら……。


「本当に、フラワーベアはコログリスのことが心配だったんだな」

『とっても優しいんだきゅぅ。本当は冬眠だってしないといけないのに、わたしが一人になるのが心配だから……って』

「だから冬眠しなかったのか」

『きゅうぅ』


 それに、魔物と戦ったからか怪我もしているようだ。

 眠れないことや、冬で食料がいつもより少ないこともあり、衰弱しているように見える。


(うさぎクッキーは栄養満点だから、それで少しは元気になったみたいだ)


 そのことに、太一は少しほっとする。


「とりあえず、まずは怪我を治そう。【ヒーリング】っと」


 太一がスキルを使うと、一瞬でフラワーベアの傷が癒える。さすがに空腹はどうしようもないが、それは食料を持っているので問題ない。



 猫の神様が授けてくれたテイマーのスキル、【ヒーリング】。

 テイミングされた魔物を回復することができる。



 怪我がよくなったからか、フラワーベアが目を覚ました。

 ぱっちりしている水色の瞳が、太一に向けられる。


『だぁれ?』

「俺はタイチ。コログリスの友達だよ」

『友達……』


 フラワーベアは起き上がると、笑顔になった。


『怪我を治してくれたのは、お兄ちゃんだよね? ありがとう』

「どういたしまして」


 思っていた以上に、フラワーベアは温和な性格をしているようだ。


(凶暴な魔物からコログリスを助けたりしてあげてたもんな)


 太一はうんうんと頷いて、そうだったと鞄の中からドラゴンジャーキーを取り出す。とりあえずたくさん食べて、元気になってもらわなければ。

 それに真っ先に反応したのは、ルークだ。


『オレの飯だな!』


 目をキラキラ輝かせている。


『あ~ずるい!』

『ボクたちも食べた~い!』

『お腹空いたなぁ』


 ケルベロスも反応している。


『美味そうだきゅ!』


 大将はヨダレを垂らしている。


 コログリスとフラワーベアは、じっと見つめてきている。美味しいというのは匂いでわかるようで、持った手を左右に動かすと目が動く。


(可愛い……)


「ちゃんと全員分あるから、みんなで食べよう。俺も食べるし」


 ドラゴンジャーキー、めちゃうまなのだ。

 全員に渡すと、すぐに食べ始めてくれた。


『んむ、やはりドラゴンの肉は最高だ!』

『『『おいし~~!』』』

『ふおおぉぉ、ドングリの百倍美味しいきゅ!!』

『きゅううぅぅ~!』

『……っ、美味しい』


 あっという間に、ドラゴンジャーキーを食べ終わってしまった。


『タイチ、おかわり!』

「これしか持ってきてないんだ。うさぎクッキーで我慢してくれ」

『仕方ない』


 ルークのもっとよこせコールに、実はもう食べつくしてしまったと言いにくい。言ったら最後、すぐにドラゴン狩りに連れていかれるからだ。


(このままドラゴンを狩りながら帰ろうと言い出しそうだ)


 さすがにそれは勘弁してほしい。

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[気になる点] ・『出ておいて~』 正しくは『出ておいで〜』では。 [一言] https://ncode.syosetu.com/n6919fz/4/ 【ヒーリング】については、他の職業スキルの【…
[気になる点] 【ヒーリング】テイミングされた魔物を回復することができる。 とありますがテイムしてないのにフラワーベアの怪我、直してますよね。 「テイミングされた」とは?
[気になる点] とりあえず、まずは怪我を治そう。【ヒーリング】っと」 ↑ 猫の神様が授けてくれたテイマーのスキル、【ヒーリング】。 テイミングされた魔物を回復することができる。 テイムしていないフ…
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