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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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17 過去の出来事

 コログリスが走っていった方を見ている大将に、太一は困惑しながら声をかける。


「何か知ってるみたいだね。……話してくれる?」

『別に、大したことじゃないきゅ』


 そう言いながらも、大将はコログリスのことを話してくれた。



 ***



 コログリ山は、比較的平和な山だ。

 強い魔物がいないわけではないが、山頂に近づかなければ襲われることもない。ご飯のドングリも豊富で、水も綺麗。


『今日もドングリが美味しいきゅ』


 大将が木の上でドングリを食べているときに、異変は起きた。

 山がざわつきはじめ、魔物や動物たちが何かを警戒し、巣穴の中へと引っ込んだ。


(この感じ……強い魔物がいるきゅ!)


 平和な山にいったい何があったのだと、大将は急いで高い木の上へ登っていく。そして山を見下ろして――見つけた。

 赤黒いウルフが、魔物たちを襲っていた。


『あれは、ウルフの亜種きゅ!?』


 コログリスでは普通のウルフにも敵わないのに、亜種なんてとてもではないが倒すことができない。

 見つかったら殺されるのがオチだ。

 何匹かのコログリスは、すでにやられている。


『ウルフの亜種が出たきゅ! みんな、急いで巣穴に逃げるきゅ!!』

『『『もきゅー!』』』


 大将の声に、山中のコログリスたちが反応する。

 全員素早く巣穴に入った! そう思ったのだが、一匹だけ遅れているコログリスがいた。足が遅く、運動神経もほかのコログリスに比べると、よくはない。

 しかも最悪なことに、転んでしまった。


『きゅぅ~』

『弱虫!』


 大将が焦って声をあげるが、コログリスは足をくじいてしまったらしく動けないようだ。ウルフの亜種が、襲いかかろうとしている。


『――っ!』


 もう間に合わない。

 大将がそう思った瞬間、フラワーベアの吠える声が森に響いた。


 フラワーベアが駆け、そのままウルフの亜種へ飛びかかる。どうやら、コログリスのことを助けてくれたようだ。

 亜種とはいえ、所詮はウルフ。

 この山の中で上位の力を持つフラワーベアに、敵うわけがない。


 フラワーベアは、ウルフの亜種を倒した。


『た、助かったきゅぅ……ありがとうきゅぅ~!』

『…………ぐるぅ』


 コログリスがお礼を言いにフラワーベアのところに行くも、何も喋らずに山を登って行ってしまった。

 それを見て、コログリスも動く。


『おい! 弱虫、行くんじゃねぇきゅ!! そっから先の山は危険だきゅ!!』


 必死に止める大将の声に耳を貸さず、コログリスはフラワーベアを追いかけていった。



 ***



『そのときのフラワーベアが、常に一緒にいるはずのハチを連れてない、ハチナシだったんだきゅ!』


 それ以来、コログリスはそのフラワーベアのところにいるのだと大将が教えてくれた。きっと、助けてもらった恩返しをしたいのだろう。


「そうだったのか……。今の話を聞くと、コログリスはもちろんだけど、フラワーベアのことも心配だ」


 ウルフの亜種に襲われたコログリスを助けてくれたのだから、きっと心優しいフラワーベアなのだろうと太一は思う。

 だからこそ、早く見つけなければと気持ちが焦る。

 何かのはずみに人を傷つけたら、ほかのも冒険者を呼ばれてしまうだろう。そうしたら、間違いなく討伐されてしまう。


(それより先に、俺が見つけ出して話を聞く)


 いつもはルークに頼り切りの太一だが、今回ばかりは自分も頑張らなければと腹をくくる。

 それでも、戦うことはできないけれど。



「――【索敵:フラワーベア】!」



 猫の神様が授けてくれたテイマーのスキル、【索敵:魔物】。

 魔物を指定すると、自分の周囲にいる対象を地図にして表示してくれる。



 太一がスキルを使うと、自分の周囲が地図のように可視化される。これで、フラワーベアとコログリスを見つけることができる。


「って、結構フラワーベアの数が多い……あ、一匹だけ山の下の方にいるのがいるから、それがハチナシのフラワーベアか!」


 ここからは少し離れているが、ルークの足があればすぐに追いつくだろう。


「よし、すぐに行こう! ルーク、ケルベロス、大将――」


 太一がみんなの名前を呼ぶと、大将の周りにほかのコログリスたちが集まっていた。


『フラワーベア、襲ってくるきゅ?』

『大丈夫きゅ?』

『なーに、大丈夫だ! ルーク様は強いから、フラワーベアが襲ってきても楽勝きゅ!』


 大将はどっしり構え、怖いことは何もないと説明している。


(さすがはコログリ山の大将、信頼されてるんだな)


『っと、待たせたきゅ! 早くフラワーベアのところに行くきゅ』

「……うん! 行くぞ、ルーク、ケルベロス!」

『ああ』

『『『はーい!』』』


 索敵を使いながら、太一はルークの背に乗って駆けだした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 弱虫は目印も何も無く走り出したけど、ハチなしのフラワーベアに辿り着けるのかな?
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