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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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16 コログリ山、再び

 帰宅した太一は、大将にコログリ山のフラワーベアのことを聞いてみた。


『フラワーベアが山を下りてきたきゅ?』

「そうなんだ。よくあるの?」

『まさか! あいつらは、冬の間は洞窟で寝てるから起きてこないきゅ!』


 大将はぶんぶん首を振り、『ありえないきゅ!』と言う。

 つまり、ついこの間の調査では平和に見えたコログリ山で、何か起こっているのかもしれない。


「……強い魔物が出て来て、山から下りてきたとか?」


 太一が原因を推測すると、ルークが鼻で笑った。どうやら、その理由はあり得ないと判断したようだ。


『強い魔物が出たのなら、とっくにほかの魔物たちも逃げてるだろう』

「それもそうか……シャルティさんの話では、山から下りてきたフラワーベアは一匹だったっていう話だったし」


 食べ物を求めて? とも思ったけれど、冬とはいえ山の中腹には植物もあった。そこまで空腹になるとも思えないが……。


(というか、どうして冬眠してるのに起きてるんだろう?)


 う~んと悩んでみるが、こればかりは考えてもわからない。

 コログリ山へ行ってから考えるのがよさそうだ。


 ――コンコン。


 すると、ふいに窓を叩く音が聞こえた。


「あ、コログリス」


 うさぎクッキーをもらう代わりにお手伝いをしてくれるコログリスがいた。どうやら、まだクッキーをもらいにやってきたようだ。

 太一は窓を開けて、コログリスを迎え入れる。


「こんにちは」

『こんにちはきゅぅ~! 何かお手伝いを……きゅぅっ!?』

『あ、お前は弱虫コログリス!!』


 手伝いを申し出るコログリスを見た大将が、『何をしに来たんだきゅ!』と声をあげた。


『べ、別にあなたには関係ないきゅぅ……っ!』


 コログリスは大将の迫力に押されたのか、太一の後ろへ隠れてしまう。どうやら、二匹の仲はあまりよくないようだ。


「とりあえず落ち着いて。俺たちは今からコログリ山へ行くところなんだけど、一緒に行く?」

『山に……? 行くきゅぅ~! でも、お手伝い……』


 同行してくれるようだが、うさぎクッキーがほしいようだ。

 かといって、何かを手伝ってもらう時間もないし……どうしようか考え、そうだと閃く。


「それなら、山の話を聞かせてよ。お礼にうさぎクッキーをあげるから」

『わあ、もちろんきゅぅ~!』

「じゃあ、決まり。ルーク、ケルベロス、コログリ山へ行くよ!」


 太一が声をかけると、すぐに二匹がやってきて足にもふもふの尻尾を絡ませてくる。最高に可愛くて尊い。


『仕方ないな、背中に乗せてやろう』

『『『わーい、お散歩だ!』』』


 コログリ山へ行くメンバーは、ルーク、ケルベロス、大将、コログリスだ。

 太一とコログリスがルークの背に乗せてもらい、大将はケルベロスの背に乗せてもらっていざ出発だ。



 ***



 コログリ山までの道のりはいたって平和で、のんびり雑談をしつつ進んだのだが――山の中に入ると、木に爪痕などが残されていた。

 以前の調査では、まったく見当たらなかったものだ。


 大将は木についた爪痕を見て、周囲を見回した。


『これは、フラワーベアの爪痕だきゅ。夏はたまに見るけど、冬に見たのは初めてだきゅ』


 もしかしたら、危険かもしれないと大将は言う。


『とりあえず、話を聞いてみるきゅ。誰かいないきゅ!?』


 大将が声をあげると、木の上から数匹のコログリスがやってきた。少し怯えた様子ではあるが、怪我はしていないようだ。

 そのことにほっと胸を撫でおろし、話を聞く。


『お前たち、山で何があったきゅ? フラワーベアは、冬眠してるんじゃないきゅ!?』

『それが……ハチナシのフラワーベアがいたんだきゅ』

『『――!』』


 ハチナシのフラワーベアという言葉に、大将とコログリスの二匹が息を呑む。

 しかし、太一にはハチナシがどういう意味なのかわからない。ルークとケルベロスなら知っているかと思ったが、同じく頭にクエスチョンマークを浮かべていた。



「大将、ハチナシのフラワーベアってなんだ? 普通のフラワーベアとは違うのか?」

『ああ……タイチは知らないのか。フラワーベアは、それぞれ一匹ずつ相方のハチがいるんだきゅ』

「ハチが?」

『そうだきゅ』



 フラワーベアは、体のどこかに花が咲いているクマの魔物。

 その花からは極上の蜜が取れるため、フラワーベア自身も大好物なのだ。しかし、自分では蜂蜜を採取できないので、フラワーベアには相方のハチがいる。

 生涯に一匹だけのハチに己の花を託し、共存する。

 ただ、どちらかが死んでしまったとしても、互いに新しい相方を作ることはしない。



(なるほど、その相方のハチが死んでしまってハチナシって呼ばれてるのか……)


 なんとも切ない理由に、やるせない気持ちになる。

 とりあえず話を聞いてみようと思っていると、太一の肩に乗っていたコログリスが隣の木へ飛び移り、どこかへ走り去ってしまった。


「え!? コログリス、どうしたの……って、もう見えなくなっちゃった」


 木の上を走られたら、あっという間に見失ってしまう。

 太一が不思議そうにしてると、大将がぐっと拳を握りしめた。


『……ハチナシのところに、行ったんだきゅ』

「え?」

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