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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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14 お手伝いコログリス

「ヒメリが店内にいる間に、俺は在庫の整理でもするかな」


 もふもふカフェには、従魔たちのおもちゃやお菓子、それから備品など、いろいろなものがある。

 日本でしか手に入らないものもあるので、定期的に在庫のチェックなどもしているのだ。


「パスタソースはまだあるからオッケーで、あ……コーヒーメーカーの材料が少なくなってるのか」


 これはあとで追加しておこう。


 それから、従魔たちにあげているおやつのチェックだ。

 カフェでよく出るのは、うさぎクッキー。材料があればスキルで作れてしまうため、かなり楽だが、すごく美味しい。

 見ると、残りが一〇個ほどになっている。


「クッキーは作っておくか」


 棚にしまっていた材料を取り出して、【おやつ調理】のスキルでうさぎクッキーを作る。あっという間に袋につめられたうさぎクッキーの完成だ。


「よしよしっと」


 それからぐるりと部屋を見回して、汚れている個所の掃除を始める。目立つところは毎日しているけれど、棚などは気づいたときに掃除している程度だ。

 ハタキで埃を落として棚を拭いていると、コンコンとノックの音が響いた。


「ん?」


 しかし太一が店内に続くドアを見ても、何もないし、誰もいない。念のため開けてみたけれど、誰もドアの近くにはいなかった。

 気のせいだったろうか。

 そう思い掃除に集中しようとすると、またコンコンとノックの音が響いた。


「あれ? ドアの方じゃないな……」


 よく見ると、キッチンの窓のところに一匹のコログリスがいた。一生懸命ノックして、『すみませんきゅ~!』とこちらに呼びかけている。


「あ、うさぎクッキーをお腹のポケットにしまってたコログリス!」


 コログリ山にいたコログリスの一匹で、最初にうさぎクッキーをあげてからは特に関りのなかった子だ。


(いったいどうしたんだろう?)


 太一は窓を開けて、コログリスを招き入れる。


「こんにちは」

『こんにちはきゅぅ!』


 コログリスは中に入ると、ぺこりと頭を下げた。


『お願いがあってきたんだきゅぅ』

「うん? 俺にできることだったら、もちろん」


 太一が頷くと、コログリスはぱっと表情を輝かせる。どうやら、どうしても頼みたいことがあったようだ。


(もふもふリスさんに頼られた……!!)


 コログリス同様、太一も表情を輝かせ――いや、とろけさせた。


『今はお掃除をしていたきゅ? わたしも手伝うので、またうさぎクッキーがほしいのきゅぅ』

「クッキー? 別に、お腹が空いているならあげるよ」


 太一は作ったばかりのうさぎクッキーを手に取り、コログリスに渡す。けれど、『駄目きゅぅ』と首を振った。


『お手伝い、するきゅぅ~』

「……とってもいい子なんだね、君は。じゃあ、狭くて俺の手が届きにくいところを拭いてくれるかな?」

『任せてきゅぅ~!』


 本当は好きなだけうさぎクッキーをあげたいところだけれど、あんな必死にお願いされては致し方ない。


(偉いなぁ)


 コログリスのために、太一は小さい雑巾を用意する。これで、棚の奥などを拭いてもらえれば綺麗になるだろう。


「棚の一番下の奥、俺だと拭きにくいからお願いできるかな……?」

『おまかせきゅぅ~!』


 太一に仕事を任され、コログリスは嬉しそうに棚の中を雑巾がけしていく。物同士の隙間が多く、放っておいてどうにも埃がたまってしまった。

 タタタタタッと雑巾がけをしていく姿が、なんとも可愛らしい。


(おぉぉ、助かる~!)


 コログリスは、あっという間に棚を綺麗にしてしまった。


『どうですきゅぅ?』

「すごく綺麗になったよ、ありがとう」


 お礼の気持ちを込めて、お礼にもう一袋うさぎクッキーを渡す。すると、コログリスは嬉しそうに飛び跳ねた。


『ありがとうきゅぅ~! これは食べると元気になれる、とっても素敵な食べ物きゅぅ』

「クッキー、気に入ってもらえて嬉しいな」

『また来てもいいきゅぅ?』

「もちろん」


 どうやらまた来てくれるらしい。


(俺が嬉しすぎる……)


 太一がコログリスと雑談をしていると、ヒメリがやってきた。


「お疲れ、ヒメリ」

「うん。ちょっと休憩~! 飲み物、飲み物っと」


 ヒメリはコーヒーメーカーにコップを設置し、太一を見て、目を瞬かせた。


「コログリスがいる……」

「ああ、うさぎクッキーを気に入ったみたいで訪ねてきてくれたんだ」

「タイチのおやつは美味しいもんね」


 コログリスの気持ちもわかると、ヒメリは微笑む。


「そういえば、ここからコログリ山までそこそこあるけど、大丈夫?」


 太一たちは馬車で行ったけれど、コログリスの足では大変そうだ。


(しかもこの子、ほかのコログリスよりちょっと小さいかもしれない)


 コログリ山で見たコログリスたちはだいたい二〇センチメートルくらいだったが、この子は一回りくらい小さいように見える。


『大丈夫きゅぅ。途中で休憩しながら行くきゅぅ』

「休憩するにしても、心配だなぁ……」

『きゅぅ……』


 ルークは無理かもしれないが、ケルベロスあたりに送ってもらうのがいいかもしれない。太一がそんなことを考えてると、ヒメリの「え?」という声が耳に届く。


「待って、待ってタイチ……そのコログリスって、テイムしてない……よね?」

「え? してないけど……」


 何か問題があっただろうか。

 太一が首を傾げると、ヒメリが言葉を続けた。


「どうして、テイミングしてない魔物と喋れるの……?」

「え……?」


 ――え?

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