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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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13 新しいお客様

「は~~~~、やっぱりカフェが一番落ち着く!」


 合同の依頼を終えて帰還した太一は、もふもふカフェの日常を噛みしめていた。

 新たな出会いがあるから外へ行くのもいいけれど、やはり自分の家というのは落ち着くものだ。

 今日はお客さんが少ないので、太一はカウンターでのんびりしている。


『え~! ボクはまた山に行ってみたいなぁ』

『悪くはなかったかな』

『みんなで遊ぶの、楽しかったしねぇ』

「なら、また行こうか」


 ケルベロスの言葉に、太一はあっけなく頷く。

 山では、コログリスたちと一緒に駆け回って遊んでいたので、楽しかったのだろう。太一が途中で『おにごっこ』や『かくれんぼ』を教えてあげた。

 あげたのだが――ケルベロスの身体能力に勝てるコログリスなんて存在しなかった。あっという間に見つかり捕まり、見ていられなかった。


(まあ、それも可愛かったんだけど……)


 そしてもふもふカフェには、コログリスの大将が増えた。

 食いしん坊な一面もあり、いつもお客さんにおやつのうさぎクッキーをねだっている。疲れたらキャットタワーのてっぺんで昼寝をし、くつろいでいる。


「でも、本当に増えたもふもふが一匹だけでよかった……。というか、本当に一匹? 実はどこかに隠してるとかない? 今なら怒らないから、正直に言った方がいいよ?」

「まてまてまて、ヒメリ! テイムしたのは、大将だけだ!!」

「そうかなぁ……」


 太一のテイミングの成功率は100%だが、信頼度は低い。

 ヒメリはジト目で太一を見つつ、すぐに笑顔になった。


「冗談だよっ! でも、カフェ増築まできっとあと少しだね。共同依頼って、ギルドへの貢献度も大きいし……タイチのことだから、すごいことしてるだろうしね……」


 そう言ったヒメリの目は、どこか遠くを見ている。


「そんなことないけど……」

「そそ、そ、そんなことありますよ!」

「うおっ!? って、ソフィア!?」


 太一とヒメリの会話に、突然ソフィアが加わってきた。

 入り口に立っているので、今来たところなのだろう。


「どうしたんですか? あ、もしかして依頼に何か不手際でもありました!?」


 これは大変だと太一は焦るが、ソフィアは首を振る。


「違います。ええと、その、もふもふカフェが気になったので……」

「あ、お客さんとして来てくれたんですか!?」

「……はい」


 ソフィアは小さな声で、頷いた。



「はわ、はわわ、はわ~~!」


 紅茶とチョコレートを注文したソフィアは、さっそくもふもふたちと触れ合い始めた。とはいっても、店内を歩き回ってもふもふたちを見ているだけだ。


「こ、こここ、こっ、鉱石ハリネズミ!? こ、こんにちは!」

『どもです』


 ソフィアにルビーの言葉は聞き取れないけれど、見ている太一は微笑ましくて頬が緩む。


「ひゃ~、すごい、フォレストキャットもいっぱい! こっちの子は、鉱石ハリネズミと仲良しなのかな?」

『いやぁ、自分の番っす。ウメはめちゃくちゃ美人さんで、気が利いて、素敵なんです』

『ちょ、何言ってるの!』

「? なんだかじゃれあってて可愛い」


 あまりにも自然にルビーがウメを褒めるので、太一は見てて恥ずかしくなる。いや、甘酸っぱいような気持ち……と言った方がいいだろうか。


(青春だなぁ……)


 それから、ソフィアはベリーラビットやほかのフォレストキャットたちを撫でたりして楽しんでいるようだ。


(そうだ、せっかくだからおやつでもサービスしようかな?)


 一緒に依頼をした仲なので、それくらいはいいだろう。

 太一はうさぎクッキーを一袋取って、ソフィアのところへ行く。


「ソフィア。これ、魔物たちにあげていいおやつだから、よかったら」

「あ、ありがとうございます」

「みんな大好きなんだよ」


 ソフィアがうさぎクッキーを手に取ると、店内にいたもふもふたちが一斉にソフィアへ視線を向けた。

 どうやら、みんなお腹がすいているようだ。


「あわ、わわわ……っ」


 集まって来たもふもふを見て、ソフィアは瞳を輝かす。


「ああっ、本当に素敵! ベリーラビットの頭の苺は、ポーションの調合時に使うと味がよくなるんですよ。フォレストキャットの花や葉は、それぞれ効能や甘み苦みなど、個体差があるんです。鉱石ハリネズミなんてもう……素晴らしい!!」

「ソフィア……?」

「ハッ! 私ったら、ごめんなさい。興味深いけど、別に摘んだりはしませんから、その、すみません……気になってしまって」

「いや、大丈夫」


(そういえば、ソフィアは薬草とかを前にすると夢中になるタイプだった)


 もふもふではなく、素材としても見れるとは……。


「みんな、このクッキーが好きなんですね。ど、どうぞ……」


 ソフィアがおそるおそるクッキーをベリーラビットに差し出すと、『オレが食べるもきゅ~!』と、空から大将が降って来た。


「「――っ!?」」


 太一とソフィアが驚いている間に、大将が一口でうさぎクッキーを食べてしまった。


「コログリ山の大将じゃないですか……もう」


 ソフィアは笑いながら、残りのクッキーをもふもふたちにあげて、もふもふカフェを堪能した。

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