8 お留守番問題
グリーズたちの話を聞いた太一は、さっそくテイマーギルドにやってきた。シャルティから、依頼の詳細を聞くためだ。
「こんにちは」
「いらっしゃい、タイチさん! お待ちしてたんですよ~!」
ギルドに入ると、シャルティがぱっと顔を輝かせて太一を迎え入れた。
「もしかして、共同依頼の件ですか?」
「あれ、もう知ってるんですか?」
「知り合いの冒険者が受けた依頼みたいで、さっき聞いたんです」
太一がグリーズたちのことを説明すると、シャルティはなるほどと頷いた。
「それなら話が早いですね。依頼の内容は、タイチさんが説明してくれた通りで間違いないです」
依頼の開始は一週間後で、調査はだいたい三日~五日ほど。
テイマーは森と山で魔物を数匹テイミングし、可能であれば会話スキルで話を聞く。それが不可能であれば、テイミングした魔物の様子をみるだけでいいということだ。
「タイチさんはテイミングも会話も、どっちも問題ないですよね?」
「はい、大丈夫です」
中には、レベルが低かったり、スキル自体を持っていないというテイマーもいるのだとシャルティが教えてくれた。
太一の場合は、猫の神様が大サービスしてくれているので問題ない。
とりあえず、依頼の内容は問題なさそうだ。
強いてあげるならば野宿するという点だが、男なのでそこまで気にはならない。むしろ、キャンプみたいで楽しそうだなんて感想を持ってしまう。
(この世界って、テントとかあるのかな?)
あとは、お鍋などを持って行ってカレーを作るのもいいかもしれない。考えただけで、楽しくなってしまった。
太一がそんな妄想をしていると、シャルティがにやりと笑った。
「ちなみに……」
「?」
「この依頼は、ギルドへの貢献度が大きいんです。達成したら、ランクアップ間近ですよ」
「本当ですか!?」
シャルティの言葉に、テンションが上がる。
ついこの間ランクが上がったばかりなので、さらなるランクアップはもう少しさきかもしれないと思っていたからだ。
(グリーズたちと一緒だし、ギルドの貢献度も稼げるし……もしかしたら、新たなもふもふと出会うこともできるかもしれない!)
太一はいい笑顔でシャルティを見て、口を開いた。
「この依頼、受けます!」
***
「冒険者ギルドとの共同依頼? いいと思う!」
太一がヒメリに事のあらましを話すと、大手を振って賛成してくれた。バイトについても、太一が調査に行っている間は任せていいようだ。
正直、ヒメリにあまり負担をかけたくはなかったのだが……。
(めちゃくちゃ助かる……!)
あとは初めてのパーティ依頼で、ポカをしないように頑張るだけだ。
「一緒にいくパーティメンバーは、カフェの常連さんでしょう? なら、余裕だね!」
「だといいんだけど……。気をつけておくことって、何かあるかな?」
ヒメリは冒険者として先輩にあたるので、何かアドバイスがもらえたら嬉しい。
すると、ヒメリは店内を見回した。
(……?)
太一がなぜ店内? と思っていると、ヒメリが申し訳なさそうに口を開いた。
「さすがに、これ以上もふもふの魔物をテイミングして連れて帰ってくるっていうのは広さ的に厳しいと思う……どうしてもっていうなら、小さい子を二匹までかな? ルークみたいに大きい子はアウトだと思う」
「そうじゃなくて」
冒険の心得的なものを教えてほしかったわけで、あとどのくらいもふもふをテイミングしていいかという話ではない。
「え、違うの?」
ヒメリはきょとんとした顔で太一を見ているので、きっと本気で言っていたのだろう。
「森や山で冒険? 調査? するときの注意事項があればなって。あとは、パーティは初めてだからちょっと不安はあるよ」
「う~ん」
太一の言葉に、ヒメリは首をひねる。
「でもでも、どっちかっていうと……私はタイチと一緒にいく冒険者の方が心配。だって、タイチって何かと規格外だし……驚かないといいけど」
「えええぇぇ」
太一はそんなことはないと首を振るが、ヒメリは「あるある!」と言って首を振る。
(規格外なのは、ルークなんだけどなぁ)
おかしい。
太一がそんなことを考えていると、足元にケルベロスが頭をすり寄せてきた。
『ねぇねぇねぇ~!』
『タイチ、ボクたちも行きたい~!』
『いつもルークばっかりで、ずるいの』
「ええぇっ!?」
ケルベロスの言葉に驚くも、確かにいつもお留守番をさせてしまっていたなと思う。
しかし、ルークとケルベロス二匹とも連れて行くとなると……カフェの守りが薄くなってしまうのが心配だ。
太一が悩んでいると、ヒメリが「なんて言ってるの?」とケルベロスの顔を覗き込んだ。
「いや、依頼に一緒に行きたいって言われちゃって」
「ああ……いつもお留守番だったもんね。連れて行ってあげたら?」
あっさりと言うヒメリに、太一は苦笑する。
「一応、ここの番犬的な役割もしてもらってるんだ」
なので、ケルベロスを連れていてしまうと、何かあったときにほかの従魔たちがやられてしまう恐れがある。それだけは避けたい。
すると、ヒメリが「がお!」と鳴いた。
「なら、私が番犬しててあげるよ。結構強いんだぞ、がおー!」
「えええぇぇぇっ!?」
書き忘れていましたが、しばらく一日おきの更新です~!
よろしくお願いします。




