7 共同依頼
「ふああぁぁ、今日もいい天気だ」
太一は店の裏庭に出て、ぐぐーっと伸びをする。
その横では、ケルベロスがボールをコロコロ転がして遊んでいてとても微笑ましい。ウメとルビーはベンチに座って話をしているようだ。
今日はテイマーギルドへ行って、依頼を受ける予定になっている。なお、もふもふカフェは定休日だ。
たまの休日くらいのんびりしたいけれど、ランクアップのためにも受けられるときに依頼をこなしておきたい。
「のんびりするために依頼を受けるなんて、思いもしなかったよ……」
異世界とはなんともハードなものだ。
ルークを連れてテイマーギルドへ行こうと考えていると、「おーい」と呼ぶ声が聞こえてきた。見ると、グリーズ、ニーナ、アルルの三人がいた。
「あ! おはようございます」
彼らは冒険者のパーティで、もふもふの虜になってしまったカフェの常連でもある。
なにかと太一の規格外さを察しているが、平和にもふもふカフェへ通いたいところもあって、気づかなかったことにしてくれている。
小さくて可愛い動物が好きだったが、いかつい顔のせいで怯えられていたグリーズ。
もふもふカフェの魔物たちはそんなことを気にはしないので、懐いてもらえていることに鼻の下をのばしている。
重厚な装備をつけている、前衛職のソードマンだ。
元気いっぱい、もふもふ大好きのニーナ。
もふもふカフェに通った結果、美味しいお菓子を食べすぎてしまってダイエットをしたりしていた彼女だが、スレンダーでスタイル抜群だ。
オレンジのバンダナが似合う、後衛職のハンターだ。
ツンとした態度だが、実はもふもふが大好きなお嬢様アルル。
普段はパーティの三人でもふもふカフェへ来るのだが、アルルだけは一人でも来てくれるほど密かなもふもふ好き。
赤色の宝石のついた杖を持つ、後衛職の魔法使いだ。
太一は裏庭から表へ行き、けれどこの三人は今日が定休日ということを知っているはずだと首を傾げる。
何かあっただろうか?
「休みのところ、いきなりすまないな」
「いえいえ。どうかしましたか?」
どうやら用事があったようだ。
「立ち話もなんですし、中へどうぞ」
「わ、やったぁ~!」
太一がカフェの扉を開けると、ニーナが飛び跳ねて喜んだ。定休日にももふもふたちと触れ合えるチャンスがあって、嬉しかったのだろう。
それにグリーズが諫めるような視線を送るが、ニーナはぺろりと舌を出して笑ってみせた。
グリーズたちにカフェラテとお茶菓子を用意して、太一は話を聞くことにした。
ちなみに準備している間は、三人とももふもふたちに癒されまくっていたのは言うまでもないだろう。
「それで、何かあったんですか?」
「ああ、実は……俺たちのパーティとタイチさんで、依頼を受けることになりそうなんだ」
「え?」
思いがけない言葉に、太一はぽかんとする。
そんな話はシャルティから何も聞いてない――と思ったが、今日はまだテイマーギルドへ行っていないので、太一まで連絡が来ていないだけかもしれない。
「俺たちもさっき聞いたばっかりで、まだ正式に受けたわけじゃないんだが……」
「タイチさんとの依頼ってきいて、いてもたっても居られなくなって来ちゃった! ってわけ」
どうやらもふもふカフェに来たかったのはニーナだったようだ。ちゃっかり膝にベリーラビットを乗せているところが抜け目ない。
ちなみに、アルルの足元にもベリーラビットとフォレストキャットがいる。
つまりグリーズたちは、太一と一緒に受ける共同の依頼の話を聞いたからここへ来たようだ。
(なるほど)
しかし、太一的には誰かと一緒に依頼を受けることなんて考えていなかった。
確かに仲間内でワイワイ冒険ができることは楽しいだろうが、いかんせんルークの強さが規格外なのだ。
(依頼を受け始めてから、シャルティさんの驚き顔をいったいどれほど見たか……)
しかし、グリーズたちは知り合いなので、断るのも申し訳ない。何より、太一と一緒に依頼を受けれることを楽しみにしてくれている。
「どんな依頼なんですか? 戦闘が激しいのはちょっと……」
「……ああ、それなら大丈夫だ」
グリーズはそこのルークさん戦闘大得意ですよね? と言いたいのを飲み込み、依頼の内容を説明してくれた。
「今回の依頼は、冒険者ギルドからテイマーギルドに協力要請っていうかたちになるんだ」
「普段はこんなことないんだけど、タイチさんは凄腕テイマーとして噂になってるからね!」
「まあ、あなたとなら協力するのもやぶさかではないわ」
今回の依頼は、森から山にかけての生態調査。
魔物や植物の状況を調べ、異変などが起きていないか調べるものなのだという。
パーティ構成は、魔物との戦闘をメインに行う冒険者。そこに、テイマーとアルケミストが加わり三パーティ体制になるのだという。
テイマーは魔物を何匹かテイムしてもらい、その魔物と会話で現地に異変はないか、怯えていたりはしないか、と言うことを確認する。
アルケミストは、薬草などの生息状況を確認する。
「つまり、俺の仕事は現地の魔物をテイムして話を聞く……っていうことですね?」
「そういうことになるな」
話を聞き、太一はなるほどと頷く。確かにこれならば、テイマーとしての自分に声がかかるのも頷ける。
(森と山にかけての調査か……新しいもふもふとの出会いがあったりするのかな?)
つい、そんな期待を抱いてしまう。
「内容的には問題ないですけど、期間とかはどうなりますか? あんまり長いと、カフェがあるので……」
いきなり長期間不在にしては、アルバイトをしてもらっているヒメリにも迷惑をかけてしまう。
かといって、依頼の開始時期によってはバイトを雇うのも難しい。
「いろいろ準備もあるだろってことで、一週間後くらいを想定してる」
「一週間後ですか……。とりあえず、ヒメリに相談してみてからの返事でもいいですか?」
「ああ、もちろん。ただ、この街にはテイマーが少なくてな……受けてもらえるとこっちとしても助かるんだ」
「わかりました」
グリーズ曰く、今まではテイマー不在で行くことも多かったようだ。
すぐには返事をできないということで、今日は解散となった。




