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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第三章 テイマー、もふもふ小熊を助けに雪山探索
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4 ドラゴンジャーキー

 ということで、夜。

 太一はルークとともに、ドラゴンの肉を求めてもふもふカフェを出発した。

 ケルベロスも行きたがったけれど、何かあるといけないのでお留守番だ。有事の際、カフェを守ってもらうのだ。


「ひえぇ、寒いっ!」

『この程度で寒いとは、軟弱だぞ!』

「いやいや、ルークの素晴らしい毛並みと一緒に考えないでくれ」


 太一も上着をちゃんと着ているが、それでもやっぱり寒い。もう冬はすぐそこまできていて、雪が降ってもおかしくない寒さだ。


「そういえば、この辺って雪降るのかな?」


 首を傾げつつ、太一はルークの背中の毛に体をうずめるように姿勢を落とす。そう、今はルークの背に乗って移動中だ。

 ルークはやれやれといった感じで、太一に負担があまりかからないように走るスピードを少し緩めた。


『雪は降っていた気がするぞ』

「じゃあ、かなり寒くなりそうだな。どれくらい積もるんだろう」

『俺よりは積もってないぞ』

「基準……!」


 ルークよりは積もらないと言うけれど、そもそもルークの体長は二メートルだ。そこまで積もったら、家から出るのも困難なレベルだろう。


(でも、言い方的に結構積もりそうな感じだな)


 もしかしたら、今から雪かき用の道具を用意しておいた方がいいかもしれないと考える。店の前に雪があったら、お客さんが来られなくて大変だ。


 そんなことを考えていたら、「いたぞ」とルークの声が耳に入る。


「ん?」

『オークだ。あれを倒すんだろう?』

「あ、そうだった。依頼を受けたから、オークを一〇匹。討伐の証明にオークの耳も必要なんだけど……できるか?」


 ルークは鼻が利くため、魔物の居場所を探すのが得意だ。

 もちろんそれだけではなく、めちゃくちゃ強い。なんといっても、孤高のフェンリルだから――だそうだ。


 見ると、緑色で身長が二メートル近くあるオークがいた。

 それぞれ手にこん棒や盾など装備を持っていることもあって、かなり威圧感がある。


『人間とは面倒なことを要求するんだな』


 ルークのとても面倒だと言わんばかりの声に、太一は「同感だ」と苦笑する。


(しかし、依頼の討伐数はオーク一〇匹か……)


 そんなに多くないのでは? と、太一は思う。

 今まで移動する際、通り道にいた魔物たちはルークが倒してくれていた。どんな魔物でも瞬殺だったので、太一は――実はこの世界の戦闘水準もろもろをわかっていない。

 ルークが超絶強いということくらいは理解しているけれど。


『ふん、オークごときに俺の必殺技は必要ないな!』


 そう言うと、ルークは前脚でちょんと蹴る仕草をした。

 すると、その可愛らしい――格好いい仕草とは裏腹に、鋭い疾風が吹きいとも簡単にオークの体を真っ二つにした。


「――っ!」


 オークは声もあげず、自分が殺されたということも気づいてないだろう。

 太一は口元に手を当てて、顔を背ける。

 魔物とはいえ、倒されて死んだところを見るのは初めてではないとはいえ、やはりなかなかキツイものがある。


(うぅぅ、やっぱり俺にこういう依頼は向いてない……)


 無事にランクが二つ上がったら、絶対に平和に暮らそうと太一は心に誓う。そして近くを見ると、器用にオークの耳も風の刃で切り落とされていた。


(さすがルーク、しゅごい……)


 尊敬だ。



 ***



『帰ったぞ! 大事はないか?』

「ただいまぁ~」

『『『おかえり~!』』』


 森や山を駆け回り、散歩――もとい運動とご飯の材料であるドラゴンを無事に狩ることができた。そのため、ルークはとても機嫌がいい。

 逆に、太一は疲れ果ててへとへとだ。


『なんだ、だらしないぞ。タイチはもっと運動をしろ』

「あれは人間の運動量の限界値を超えている……」


 このまま床に倒れて眠ってしまいたい、そんなことを考えていたら、従魔たちが太一の周りに集まってきた。

 もふもふの体や顔を太一の足にこすりつけて、嬉しそうにしている。


(え、かわ、可愛い……ここは天国か)


 このまま昇天しても悔いはない。


『おかえり! ちゃんとお留守番できたよ、エライでしょ!』

『問題なかったよ』

『でも、寂しかったぁ~!』


 とは、ケルベロス。


『みーっ!』

『にゃうぅん~』


 ベリーラビットとフォレストキャットたちは喋ることができないので、可愛く鳴いてすりすり甘えてくれる。


「可愛い可愛い可愛い……!」


 もふもふ最高だ。


『おかえりなさい、タイチ』

『怪我はないようだね』


 最後に、ルビーとウメが出迎えてくれた。魔物も狩ってくると言っておいたので、心配してくれたようだ。


(みんないい子だ……)


 これは頑張って、狩れたて新鮮なドラゴン肉で美味しいおやつを作ってあげるしかない。太一は今、可愛いもふもふたちのために燃えている!



 ということで、さっそく厨房へやってきた。

 といっても、太一にはドラゴンの肉を調理することはできない。おやつ用に加工しようなんて、無理寄りの無理だ。


「でも、俺には強い味方――スキルがある!」



 猫の神様が授けてくれたテイマーのスキル、【おやつ調理】。

 材料をそろえた状態でスキルを使うと、魔物のおやつを作ることができる。



 これを使うと、あっという間に美味しいおやつができてしまうのだ。さらに、人間が食べてもとっても美味しい。

 もふもふカフェで販売しているうさぎクッキーも、このスキルで作っている。


「よーし、ドラゴンの肉を使って【おやつ調理】っと!」



 《調理するには、材料が足りません。『薬草の粉末』『魔力塩』があれば『ドラゴンジャーキー』を作れます》



 太一がスキルを使うと、材料が足りないと出た。ドラゴンの肉は調理台の上にあるので、ほかの調味料を取り出す。

 スキルで料理ができるということもあって、この手の物は一通り揃えてあるのだ。


「魔力塩はちょっと高かったけど、買っておいてよかった~」


 ほっと胸を撫でおろし、もう一度チャレンジだ。


「美味いのができますように、【おやつ調理】」


 太一がスキルを使うと、調理台の上にあった材料が一瞬で消える。それと交換するような形で、袋に入ったドラゴンジャーキーが出てきた。

 一袋に三枚入りで、赤く、硬そうな肉だ。


「おぉ、これがドラゴンジャーキーか……」


 ドラゴンステーキは食べてみたけれど、ジャーキーはどうだろうか。太一は袋を開けて、おそるおそる口にしてみた。


「…………かひゃい」


 さすがはドラゴンジャーキー。普通のジャーキーより硬さがあって、噛むのがなかなか大変だ。


(でも、ルークにはちょうどいいかも?)


 柔らかい肉ばかりより、こういった硬いものもたまには食べた方がいいだろう。


「……でも、噛めば噛むほどドラゴンの旨味が出てくるな」


 最初は硬くて嫌だと思ったけれど、病みつきになってしまうかもしれない。


(……もう一枚、味見しておくか)


 太一がドラゴンジャーキーに手をのばした瞬間、『まだかー!』とルークが勢いよくやってきた。匂いがしたのだろう。


「――あ」

『…………』


 ドラゴンジャーキーをくわえた太一を見たルークの顔から、表情が消えた。

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