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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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16 おかえりなさい!

「えっ! 何これ!!」


 太一が夢中でキャットタワーを作っていると、突然ドアが開いた。見ると、驚いた表情の少女が立っている。


「ヒメリ!」

「びっくりした~! なんだか見慣れないものがあるし、フォレストキャットがいっぱい!」



 店内をキョロキョロ見回しているのは、ヒメリ。

 ピンク色の長い髪は、低い位置にリボンで二つのお団子にしている。黄色の瞳はパッチリしていて、とても可愛らしい。

 魔法系の冒険者で、水色のワンピースと白のローブを着用している。今はその上に、もふもふカフェのエプロンもつけている。



「でも、タイチが規格外なのは今に始まったことじゃないもんね」

「え、そんなことはないけど……」

「そんなことあるよ。っと、おかえりなさい!」

「うん、ただいま」


 店内に入ったときの印象が強すぎてうっかりしていたと、ヒメリは舌を出して笑った。


 ヒメリが見て驚いたのは、太一が作った大きいキャットタワーだ。

 店内の隅に設置してあって、その高さは天井まである。小さいキャットタワーと同様に、こちらもデザインテーマは森。

 葉や花だけではなくて、フォレストキャットが遊べるように小さなネズミのおもちゃなどもつけてある。

 天井までに六段ほどの足場があり、さらに頂上には橋がつけられていて……もう一つ作った隣のキャットタワーまで歩いて行けるようになっている。


「これはフォレストキャットが遊ぶための設備なんだ」


 太一はキャットタワーの説明をして、実際に猫じゃらしを使って遊んで見せる。

 すると、サクラがやってきて、小さな手で必死に猫じゃらしにじゃれている。『みゃっみゃっ』と鳴く声がとても楽しそうだ。


 それを見て、ヒメリがやってみたくならないわけがない。目をキラキラさせて、こちらに手を出してきた。


「私も! 私もフォレストキャットと遊びたい!!」

「もちろん。猫じゃらしもボールもいっぱいあるし、フォレストキャットは一〇匹もいるからね」


 むしろ遊んであげる人間が足りないくらいだ。


(遊ばな過ぎてストレスになっちゃわないようにしないと)


 とはいえ、群れなので仲間内でじゃれて遊んだりはするだろう。


(俺が遊びたくて仕方ないというのもあるけど……)


 太一がヒメリに猫じゃらしを渡すと、後ろから『ボクたちも遊ぶ~!』ケルベロスが突進してきた。


「うおっ」

『遊ぼ~!』

『お留守番頑張ったもん!』

『……遊びたいな』


 ケルベロスのつぶらな瞳……だけではなく、その後ろにはベリーラビットもいる。みんな、太一と遊びたくて仕方がないようだ。

 本当はヒメリと話をしたら寝ようと思ったのだが……それはやめだ。

 カフェを経営している以上、昼夜逆転生活はあまりよくない。夜まで頑張って働いて、早めに寝るのがいいだろう。


「よし、遊ぶか!」

『『『やった~!』』』

『『『みっ!』』』


 ということで、今日は思いっきりみんなと遊ぶデーだ。




 カシャカシャっと、ヒメリが猫じゃらしを使う音が響く。

 それに合わせて突撃してくるのは、サクラとカエデだ。この二匹は体長二〇センチほどと一番小さくて、ひときわ仲もいい。


「わあああぁっ、すごいジャンプ力!」


 ヒメリが猫じゃらしを上にあげると、サクラとカエデがジャンプする。そのまま空中で体をひねり、綺麗に着地。

 さすが、運動神経がいい。


『みゃーっ!』

『みゃううっ!』


 思い切り猫じゃらしを追いかけたら、二匹はいったん離れ、獲物を狙う姿勢をとる。そして再び機会をうかがい――飛びつく!


『『みゃっ!!』』

「おっとおぉ~!」


 それをヒメリが華麗な猫じゃらし捌きで回避し、二匹を遊ばせる。


(あれ、ヒメリってもしかして俺より猫じゃらし上手くないか?)


 ヒメリは手首のスナップがよく利いていて、さらに小柄な体も存分に生かして猫じゃらしを操っている。

 おそらく生まれつきセンスがいいのだろう。


 さすがだなあと感心していると、『タイチー!』と名前を呼ばれた。

 見ると、ケルベロスがボールをくわえてやってきた。太一が投げたボールをとってきてくれたようだ。

 首が三つあるので、投げたボールも三つ。

 内二つは、鈴入りの毛糸ボール。どうやらこの鈴入りを誰がとるかが決まらず、戻ってくるのに時間がかかっていたらしい。


 太一はケルベロスからボール三個を受け取り、壁に向かって投げる。

 すると、チリリンと軽やかな音が鳴り、転がっていく。ケルベロスが楽しそうに追いかけて、ボールをぱくりと口でくわえた。

 今度は誰が鈴入りボールにするかもめなかったようで、すぐに戻ってきた。


「おー、早い!」

『えへへ、すごいでしょ~!』

『これくらい朝飯前だよ!』

『上手くとれたよ!』


 三匹とも、とっても嬉しそうだ。


「んー……ここだと、ちょっと狭いかな?」

『『『ん?』』』


 太一は再びボールを受け取りながら、うーむと考える。

 今までは特に気にせずボール遊びをしていたけれど、フォレストキャットが一〇匹増えたのでなかなか走り回りづらくなった気がするのだ。


(せっかくだから、裏庭に遊べるスペースを作ってみるとか?)


 ミニドッグランのようなものだ。


「よし、せっかくだから少しやってみるか!」

『何をするの?』

『どういうこと~?』

『なになに?』


 ケルベロスが首をかしげて、もう遊ばないの? と、言いたそうにしている。やはり、店内でおもいきり遊ぶには限界がある。


(いや、ケルベロスの限界っていったら果て無いかもしれないけど……)


 そんなことを太一が考えていると、ヒメリから声をかけられた。


「タイチ、そろそろ開店時間になるよ。フォレストキャット、まだテイマーギルドに登録してないでしょ?」

「あ、そうだった」


 従魔を使って人とかかわる仕事をする場合は、テイマーギルドへの登録が必要になる。


「じゃあ、フォレストキャットを連れてちょっと行ってくるよ。店をお願いしててもいい?」

「もちろん。いってらっしゃい」

「いってきます」


 残念そうな顔を向けてくるケルベロスにはあとで遊ぶ約束をし、太一はフォレストキャット一〇匹を連れてテイマーギルドへ向かった。

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[気になる点] ケルベロスはギルドへの登録なしですか?
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