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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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9 手作りキャットタワー

「よっせーい!」


 スコン!

 と、とてもいい音が辺りに響いた。

 宿の裏庭で、サラが壁につけるキャットタワー用の板を用意してくれているところだ。木材を斧でいい感じの大きさにして、いい感じにノコギリで形をとってやすりで磨けばでき上がりだ。


 サラが手際よく作業してくれたので、あっという間に板の準備が終わった。


「上手いね」

「これくらいはね。薪割は私の担当だし。……実はお兄ちゃん、運動神経はそんなによくないんだよね」


 だから家事全般をアーツがやって、こういった仕事はサラがしているのだと教えてくれる。

 もふもふカフェは、ほとんどが太一だけでやっているので、そういった面は少し羨ましいなと思う。

 とはいえ、太一には便利なスキルがたくさんあるので一人いるだけで何人分も働けている気はするが。



 ***



 板がそろったので、さっそく食堂と廊下の壁に板を設置してみた。

 サラは日曜大工も得意だったらしく、あっという間に設置してくれた。


「お~すごい」


 できあがった壁を見て、太一は拍手をする。

 アーツとマリリア、シャンティーもやってきて、サラの手際のよさに感心している。


「サラは冒険者より大工の方が向いていた……?」

「ちょっとマリリア、なんてこと言うのよ!」


 うっかり転職を進められそうになって、サラが怒る。

 それにアーツが笑いながら、板に手を置いてその強度などを確かめていく。力を入れて押してみても、びくともしない。かなりしっかり設置されている。


「これなら、乗っても問題はなさそうだね」


 アーツは足元にいるフォレストキャットを手招きして、「乗れる?」と問いかける。

 すると、フォレストキャットは『にゃあ』と鳴いて床を蹴った。トンっと軽やかに板の上に乗り、トントントンと板の上を渡り歩いてみせた。

 一番上まで行くと、そこが気に入ったのかころんと寝ころんだ。


「わあ~、私が作った階段気に入ってくれたんだ!」


 やった、とサラが喜ぶ。

 様子を見ていた二匹も気になったようで、続いてキャットタワーとトントンっと上って見せた。

 やっぱり一番上が好きみたいで、三匹で取り合いをしているのがなんだか可愛らしい。


『にゃうっ!』

『にゃにゃっ!』

『にゃ~!』


 それを見て、サラが慌てる。


「ちょっとちょっと、ほかにも設置してあるんだから仲良く使ってよっ!」

『『『にゃ』』』


 サラが注意をしたが、そんなのは聞き入れてはくれないようだ。フォレストキャットはぷいっと顔をそむけた。


「ぐぬぬ、私が作ってあげたのにその態度……!」

「猫は気まぐれだからしかたないよ。激しい喧嘩じゃないから、様子を見たらどうかな?」

「……そうですね。まったく~!」


 太一の言葉に、サラはしぶしぶながら頷く。

 もしかしたら、普段からもこういったことがあるのかもしれない。


(猫の気まぐれは人には理解できないからな……)


 こちらは常にご機嫌を伺い、どうにか遊び撫でさせてもらうしかないのだ。

 ――が、例外はあった。


「こら、あまり迷惑をかけたら駄目だよ。おいで」


 アーツがフォレストキャットたちにそう呼びかけると、三匹はすんなり下りてきた。


(やっぱりテイムしてるテイマーの言うことは素直に聞くのか……)


 フォレストキャットを従えるアーツは、まるで神のようだと太一は思う。そして自分も、あんな風に猫と触れ合い――さらには群れのボスとは会話ができる。


(やばい……今日、寝れないかもしれない)


 フォレストキャットをテイミングしに行くのは明日だが、いっそ今からでも行きたい衝動に駆られてしまう。


(ああ、早く明日が来ますように……)


 太一がそう祈っていると、アーツが「ご飯にしようか」と声をかける。


「マリリアとシャンティーもたべていってよ。今日はシチューだよ」

「わ、いただきます!」

「ありがとうございます!」




 食堂に移動してシチューの匂いをかぐと、太一のお腹がぐうと音を立てた。


(フリスビーでずっと遊んで、それからキャットタワー作りだったもんな)


 そりゃ腹ペコにだってなるはずだと苦笑する。

 アーツが作ったシチューは絶品で、食べながら会話も弾む。その内容は、もっぱらフォレストキャットのことだ。


「タイチさんがくれたおもちゃ、頑張れば私でも作れる気がするのよね。布切れを棒の先につけても、遊んでくれそうだし」

「あ、それもいいですね。長くてヒラヒラしたものは大好きだと思いますよ」


 猫のおもちゃは激しく遊ぶこともあって、比較的壊れやすい。なので、サラが自分で作れるのなら一番いい。

 鈴を中心に毛糸をきつく巻けば、ボールのおもちゃも作ることができるだろう。


「あ、ボールに紐をつけて、作ったキャットタワーにぶら下げておくのもいいかも!」

「それいい!」

「でしょう? 絶対に楽しく遊んでくれるわね」


 提案されたひも付きボールは、キャットタワーについているものも多い。


(サラさんて、猫のおもちゃ作りの才能があるんじゃないか?)


 次々とサラがとても楽しそうに、どんなおもちゃを作ろうか話してくれる。

 それを聞くのはとても楽しくて、もし次にこの宿に来たら――いったいどれくらい、すごい猫の宿になってるのだろうと考えてわくわくしてしまう。


(俺も頑張ってフォレストキャットをテイムしないとだな!)



 より一層、太一はフォレストキャットのテイミングが楽しみになった。

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