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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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8 もふもふを世界に!

 これでもかというほどフリスビーで遊んだ太一とルークは、へとへとになりながら宿へと戻ってきた。なおへとへとなのは太一だけだ。

 ルークは思いのほかフリスビーを気に入ってくれたようで、尻尾をぶんぶん振って機嫌がいい。


 フォレストキャット亭に戻ってくると、中から「可愛い~!」とテンションの高い声が聞こえてきた。

 どうやら、声は食堂からしているようだ。


「なんだろう?」

『オレたち以外に客はいないのかと思ってたぞ』

「さすがにそれはないだろ……」


 お客さんが少ないというだけで、ゼロというわけではない。

 太一が食堂を除くと、アーツと数人の女の子が猫じゃらしとボールを使ってフォレストキャットと遊んでいるところだった。


(おおっ! 俺の作った猫おもちゃが大人気だ!!)


 太一がこっそり入り口から遊ぶ様子を見ていると、気づいたアーツが手を上げた。


「おかえりなさい、タイチさん」

「ただいま。おもちゃ、かなり人気みたいだね」

「そうなんですよ。めちゃくちゃ遊びたいみたいで……あ、紹介しますね。僕の妹の、サラです」


 アーツの紹介を聞いて、そういえば兄妹でやっていると言っていたことを思い出す。


「あなたが、おもちゃを作ってくれたタイチさん? 私はサラ、宿の手伝いをしながら冒険者をしてるの」

「タイチです、よろしく。おもちゃを気に入ってもらえたみたいで、よかったよ」



 アーツの妹で、冒険をしたいお年頃なサラ。

 黄緑色の髪と、セピアの瞳はアーツと同じ。髪はポニーテールにしており、衣服はエプロンをつけてはいるが、確かに近場で狩りをするくらいならば問題はないだろう。

 元気いっぱいの、一五歳の少女だ。



 それから、サラと一緒にいるのは二人の女の子だ。


「こっちの二人は、私の冒険者仲間よ!」

「マリリアです。フォレストキャットって、こんなに可愛かったんですね!」

「私はシャンティー。もう、これからはフォレストキャットと戦えない……っ! いっそテイマーだったらよかったのに!!」


 どうやら彼女たちはフォレストキャットの魅力に気づいたようだ。


「タイチです、よろしくお願いします。フォレストキャット、可愛いですよね」

「「とっても!!」」


 太一の言葉に、マリリアとシャンティーの二人が声をはもらせる。よっぽどお気に入りになってしまったようだ。

 アーツを見ると、トンネルをくぐって遊ぶフォレストキャットを嬉しそうに見ている。


(やっぱり猫は最高だ……)


 ひとまず猫の神様に祈りを捧げておく。


 今の状況を考えると――猫と触れ合える宿、というのは成功する可能性が高い。こんなにすぐ虜になってしまう人がいるのだから、口コミで客も増えるだろう。

 となると、もう少し猫に特化した宿づくりにしてもいいのでは……と、考える。


(でも、さすがに客室へ自由に出入りさせるのはよくないな)


 フォレストキャットの移動範囲は、受付と食堂のある一階部分。それから、二階も廊下であれば問題ないだろう。

 部屋から出て猫がいたら、朝からやる気もテンションもマックスだ。


 想像して、自然と太一の頬が緩む。


 となると、必要なのは……キャットタワーだ。

 ただ、太一のスキルでほいほい作るのはあまりよくない。簡単なおもちゃくらいであればいいが、立派なものだとただであげるわけにもいかなくなる。


(難しいところだな……)


 兄妹二人でやっている、ちょっとさびれた宿屋。できれば費用は押さえたいだろうし、お手軽にできるもの――と考え、閃いた。


「キャットタワーを、壁に板をつけるタイプにしたらいいんじゃないか?」


 太一がぼそりと言葉を漏らすと、サラが「板?」と反応した。


「猫って、上下運動や高いところが好きなんですよ。だから、壁に何枚か板をつけて階段みたいにできたらいいかな……って思ったんですけど」

「へぇ……それくらいだったら、私にもできると思う」


 サラがぐっと拳を握りしめる。


「宿はいつもお兄ちゃんに任せっぱなしだったから、それくらいはね! 裏に木材があるから、一緒に見てもらってもいい?」

「あ、それはもちろん。でも、そんな簡単に決めていいの?」


 宿の経営方針に関することだし、自分で言い出したことだが、もっと慎重になった方がいいのでは……と、太一が心配する。

 けれどサラはあっけらかんとしていて。


「大丈夫! それに、やっぱりお客さんが少ないのは寂しいから……お父さんとお母さんが残してくれた宿だから、残したいんだ。冒険者してる私が言っても説得力はないかもしれないけどねっ!」


 サラの言葉に、そんな事情があったのかと太一は口を閉じる。


(お父さんとお母さんが残してくれた宿、か)


 これはかなり責任重大ではないだろうか。

 でも、サラの気持ちは大事にしたいとも思う。となると、太一にできることはフォレストキャットと遊べるおもちゃや設備のアドバイスを可能な限りすることだ。


「猫じゃらしって、私もお兄ちゃんも初めてだったんだよ。こんなに反応してくれるとは思ってなかったから、すごく嬉しかったんだ」


 サラが話すと、アーツもこちらにやってきた。


「タイチさんが出かけている間に、少しサラと話したんです。こんなに可愛いフォレストキャットを、知ってもらえないのはもったいない! って。だから、ここはフォレストキャットと遊べる宿に決めました」


 これも太一のおかげだと、アーツが微笑む。


「だから、その壁に板をつけるっていうのもお願いします! いや、お客さんにこんないろいろしてもらうのは駄目かもしれないですが……」

「いえ、全然! 俺も従魔と触れ合えるカフェをしてるので……嬉しいです。もふもふの魔物と触れ合える場所が、もっともっとできたらいいなって思ってます」

「タイチさん……ありがとうございます! 頑張ります!! 宿が軌道に乗ったら、サラと一緒にカフェに遊びに行かせてもらいますね」

「わ、ぜひ!」


 太一とアーツはがしっと手を取り合って、もふもふを世界に広める決意をした。

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