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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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6 可愛いが止まらない

 太一はフォレストキャットをテイミングするのは明日にし、まずは猫のおもちゃ作りをすることにした。

 フォレストキャットが喜んで遊んでくれるのならば、身を粉にして働いたって構わない。

 そんな太一を、ルークがため息をつきながら見る。


『顔がだらしないぞ、タイチ』

「え、そう……かな」


 太一がルークを振り返ると、にへへと笑った顔。

 自分の顔を手で触り、確かにだらしなかったかもしれないと思う。けれど、だからと言って引き締めるのは無理だ。


(だって、俺の膝でフォレストキャットが寝てるんだから~~!)


 もっと猫のおもちゃを作ると太一が告げたところ、それなら実際にすぐ遊ばせられるように……と、アーツがフォレ

 ストキャットを一匹よこしてくれたのだ。

 頭の上に葉っぱがついている可愛らしい猫だ。

 先ほど太一が猫じゃらしでたくさん遊んだからか、とても懐いてくれている。今は太一の膝の上で丸まって、とても気持ちよさそうに熟睡している。


(膝がぬくぬくで、あったかい……!)


 たくさん撫でてあげたいが、猫は撫ですぎると怒ると本に書いてあったので……我慢しながらおもちゃをつくっているというわけだ。


「そういえばルーク」

『ん?』

「フォレストキャットとは会話ができるのか?」


 通常テイミングした魔物とは、スキルで会話をすることが可能だ。しかし、知能が低く、言葉を理解していない場合は会話をすることができない。

 太一がテイミングしている魔物だと、ベリーラビットは言葉を話すことができない。少し寂しいが、太一の言っていることはなんとなく理解はしてくれている。


 ルークはフォレストキャットを見て、首を振る。


『そこにいるフォレストキャットには、無理だろうな』

「え?」


 ルークの言い方に、太一は首をかしげる。


「個体によって違うってことか?」

『フォレストキャットは確か群れで移動するはずだ。そこのボスは、会話ができたはずだ』

「なるほど……」


 つまりフォレストキャットをテイミングするならば、群れをまとめてした方がいいということだろうと太一なりの解釈をする。


(離れ離れは可哀相だもんな)


 たくさんフォレストキャットをテイムできそうで、思わず顔がにやけてしまう。

 しかも、そのうちの一匹とは会話もできるというのだから、楽しみでしかたがない。今まで猫の気持ちはまったくわからなかったが、それを聞くことだってできる。


(猫と……会話か……)


 そう考えると、なんだか緊張してしまう。

 猫の神様とも話はしたことがあるが、あれはまた別次元のすごさがあったし、神様なのでノーカウントだ。


(あ、ということは……猫のおもちゃの感想を聞いて、改良していくこともできるんじゃないか?)


 テイマーってすごい!!

 そう思わずにはいられない。


『また顔がにやけているぞ。今はおもちゃを作るんだろう?』

「あ、そうだった」


 ルークはふんと息をついて、ビーズクッションに顎を載せて休む体勢に入った。それを見て、太一は少し猫のことで熱くなりすぎたかなと反省する。

 まあ、ルークに寂しい思いをさせた――なんて言ったら、孤高のフェンリルだぞ! と、怒られるのが目に見えている。

 その姿が簡単に想像できてしまって、ちょっと笑える。


「せっかくだし……【創造(物理)】」


 太一がスキルを使うと、手の中に現れたのは『フリスビー』だ。これならば、広い草原でルークと一緒に遊ぶことができる。

 太一が猫じゃらしやボール、トンネルを作ると言っていたのを聞いていたルークは、なんだそれは? とじと目で見てきた。


「これはルークと遊ぶ用の、フリスビーっていう円盤」

『何っ⁉』


 太一が用途を説明すると、ルークの耳がぴくぴくっと動く。

 どうやら、太一の意識が自分に向いたことが嬉しくて仕方がないようだ。


「でも、広い草原みたいなところじゃないと試せないんだけど……」

『なんだ、そんなのオレが走れば一瞬だ! 普段なら遊ぶなんて子どもっぽいことはしないが、せっかくタイチがスキルで作ったものだからな……試さないのはもったいないだろう!』


 そう言うルークの顔には、すぐ行こう、さあ行こうと書かれている。寝そうな感じだったのに、今はもうカッと目を見開いているし、尻尾もゆれている。


(こっちも可愛すぎるだろう……)


 今から草原に行くのはいいが、フォレストキャット用のおもちゃも作ってしまいたい。とりあえず、ボールとトンネルだ。


「ちょっと待ってくれ、ルーク。おもちゃも二種類作るから……【創造(物理)】」


 太一がスキルを使って、ボールとトンネルを作り出す。

 ボールは毛糸で作られたもので、中に鈴が入っていて転がすとチリンチリンと音がする。

 トンネルは、一メートルほどの長さがあり、少しカーブをしているタイプ。ビニール素材でできているため、中を歩くとカシャカシャ鳴って楽しく遊ぶことができる。


 ボールは猫カフェにあったから何度か太一も使ったことがあるが、トンネルは猫が楽しそうに遊んでいるのをネット動画で見たことがあるだけ。


(楽しんでくれるといいんだけど……)


 太一がボールを持つと、チリリンと音が鳴る。それを聞いて、膝の上にいたフォレストキャットが顔をあげた。

 そのつぶらな瞳が、『そのボールは何?』と訴えかけている。

 チリンと音が鳴るのが気になってしかたないようだ。


「…………」


 試しに太一がボールを投げてみると、チリリリンと音を立てて転がっていく。フォレストキャットの耳がピンと立ち、ひと呼吸おいてからダッシュでボールへ跳びついた。

 前足でちょんちょんとボールに触れて、チリンと鳴るのを楽しんでいるようだ。


(可愛いっ!)


 思わずきゅんとときめいてしまう。

 そんな太一を見て、ルークがぐいっと腕に鼻をこすりつけけてくる。


『フォレストキャット用を作り終わったのなら、そのフリスビーとやらを早く試すぞ!』

「ああ、わかったわかった!」


 ハンガーにかけておいた上着を羽織り、太一はフォレストキャットを呼ぼうとして――まだボールで遊んでいた。

 さすがに出かけている間、太一の部屋で一匹……というわけにもいかない。


 どうしたものかと悩んでいると、ちょうどアーツがやってきた。


「チリンって、なんの音……って、すごく楽しそうに遊んでますね」


 ボールにじゃれついているフォレストキャットを見て、アーツは驚く。やっぱり、今までこんな風に遊ぶことはなかったようだ。


「戦闘訓練ならやったことはあるんですけど、こういうものだと喜ぶんですね。……知りませんでした」


 感心しっぱなしだ。


「すみません、ちょっとルークと出かけてきます。夕飯までには戻るので……」

「ああ、わかりました。フォレストキャットをテイムするんでしたっけ」

「それは明日にして、今はルークと遊んで――いや、運動ですかね。してきます」


 遊ぶと言ったら怒られてしまうかもしれないので、急いで運動に変える。これなら、鍛錬をしているニュアンスに近いので大丈夫だろう。

 アーツはルークを見て、確かにと微笑む。


「いってらっしゃい。――あ、このボールお借りしていてもいいですか? 僕も少し遊んでみたくなっちゃって」

「もちろんです。トンネルも作ったので、みんながいるところにおいてあげてください。もしかしたら、入って遊んでくれるかも……」


 太一の希望はかなり入っているが、前に広告で見た猫トンネルは、99%の猫が大好きに! という謳い文句が入っていたはずだ。


「わかりました、トンネルも試してみます!」

「ぜひ感想も聞かせてください!」

「もちろんです。今日会ったばっかりで、しかも宿のお客さんなのに……ありがとございます、タイチさん」

「いえいえ、こちらこそ」


 フォレストキャットと触れ合えただけで、太一はかなりの満足度だ。

 アーツと二人でのほほんと会話をしていたら、またもルークに鼻でつつかれせかされてしまった。

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