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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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5 猫じゃらし

 部屋に案内してもらった太一は、さっそくこの宿が繁盛する方法を考えることにした。とはいっても、宿の経営のノウハウは一切持っていない。

 できることといえば、猫――フォレストキャットの素晴らしさを人々に伝えるということだけだ。


『いったいどうするつもりだ? 見た目が可愛いとはいえ、フォレストキャットは魔物だ。そう簡単に人間が受け入れるわけないだろう』


 太一がベッドに座りながら計画を練っていると、ルークが鼻でため息をつく。さらにそのまま口を大きく開けてあくびまで。


(眠いのか……?)


「大丈夫、とっておきの秘策があるんだ。うちのカフェだって、少しずつだけどお客さんが増えてきただろ?」


 一日二日で増えたりはしないが、長い目で見ればお客――もとい、ファンが増えるはずだ。


「そのためには、これ! 【創造(物理)】で猫じゃらしを作る!」


 太一がスキルを使うと、頭の中で考えた通りの猫じゃらしができあがった。

 魔物と触れ合ったことがない人が大半だと思うので、ワイヤーで長く作っているタイプの猫じゃらしだ。先端には羽とセロハンが何個もついていて、動かすたびにシャラシャラ音が鳴って猫の興味を引くようになっている。


「バッチリ、想像通りのできだ!」



 猫の神様が授けてくれた固有スキル、【創造(物理)】。

 名前の通り、太一が頭の中で思い描いたものを現実のものとして作ることができる。



 できあがった猫じゃらしを見て、ルークが「なんだそれは」と怪訝な顔をする。


(やっぱりルークは犬系だから猫じゃらしにはそそられないのかな?)


 ためしにルークの前で猫じゃらしを振ってみるが、特に反応はしない。大変残念だ。


「まあ、ものは試しだ! アーツさんに言って、フォレストキャットと遊ばせてもらおう!」




 宿の一階に行くと、受付には誰もいなかった。

 すぐ隣にある食堂に、三匹のフォレストキャットがいた。アーツは横にある厨房で夕食の仕込みをしているようだ。

 宿泊客は朝食付きで、希望者のみ夕食を出してもらうことができる。

 どうやら今日の夕飯はシチューのようで、いい匂いは太一とルークの鼻をくすぐった。


『なかなかいい匂いだな』

「夕食が楽しみだ」


 太一とルークが話しながら食堂に入ると、フォレストキャットが『にゃー』と鳴いた。


「あれ、タイチさん! どうしましたか?」


 鳴き声に気づいたアーツが厨房から顔を出したので、太一は作った猫じゃらしを見せる。


「もしかして、それがフォレストキャットと触れ合えるためのアイテム……ってことですか?」

「そうです。それで、その……遊んでみてもいいですか?」


 そう言って、フォレストキャットに視線を送る。


(うぅっ、かんわいいいいぃぃぃっ!!)


 ぱっちりおめめのフォレストキャットに見つめられて、太一はメロメロだ。

 すぐにアーツから「もちろん」と許可が下りたので、さっそく猫じゃらしで遊ぶことにする。


 三匹いるフォレストキャットは、床にちょこんと座っている。体長は、それぞれ五〇センチほどだろうか。

 抱っこしたい衝動にかられるが……いきなりそんなことをしては驚かせてしまうので、ここはぐっと我慢だ。


「ほーら、楽しいおもちゃだよ」


 太一はしゃがみ込んで、机の脚の影から猫じゃらしを見せたり隠したりしてみせる。すると、フォレストキャットの耳がぴくりと反応した。


(お、これは手ごたえがありそうだ……!)


 猫を前にすると、ドキドキワクワクしてしまう。

 ただ、太一が知っているのは猫カフェの猫と、野良猫くらいで……一般的な飼い猫がどんなものかわからない。もちろん、テイミングされた魔物なのでまったく違うという可能性もある。


 太一がこまめに動かすと、カシャカシャと音がする。

 これは猫が好きな音で、夢中になってしまうのだ……と、言われている。


(猫って、俺くらいの猫じゃらしテクだとあんまり遊んでくれないから……!!)


 ――という不安があったのだが、結果。

 動く猫じゃらしに狙いを定め、一匹のフォレストキャットが低姿勢からとびかかってきた!


『にゃうっ!』

「おぉっ!!」


 あまりにも一瞬でフォレストキャットが釣れて、太一は大歓喜だ。


(すごい、俺のねこじゃらしにこんなに嬉しそうに飛びついてきてくれるなんて!!)


 感動の涙が止まらない。


 それを見ていたアーツが、驚いた顔を見せる。


「わ、すごい。こんなに楽しそうに遊んでる姿は、初めて見たかも」

「本当ですか⁉ 俺もこんな楽しそうにじゃれついてもらえたの、初めてで……」


 いつもはもっとドライな反応をされていることが多かったので、こんなに嬉しいことはない。

 もっとじゃれついていいんだぞと、太一はねこじゃらしを振り回す。

 猫カフェではフェイントを利かせないと見向きもされなかったのに、今は振り回すだけでアイドル状態だ。

 残り二匹のフォレストキャットもやってきて、夢中で太一の動かすねこじゃらしにかわるがわるとびかかってくる。

 これは大成功どころではない。革命と言ってもいいのかもしれない。


『にゃっ!』

『にゃううっ』

『みゃ!』

「ああああぁぁ可愛い、可愛いよおおぉぉぉ」


 こんなに喜んでもらえるなら、もっと猫じゃらしを用意しなければいけない。


(それだけじゃない……ボールやトンネル、ほかの猫おもちゃも作ってあげたい!!)


 太一の創作意欲と猫愛に火が点いた。

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