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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第二章 テイマー、もふもふ猫を求めて隣国へ
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3 アーゼルン王国に到着!

 太一とルークの旅は順調に進み、五日でアーゼルン王国との国境へ到着した。国境の警備兵がいて、通行人の確認をしているようだ。

 とはいえ、今はまだ早朝なので人は少ない。


「ルーク、国境を超えるから小さくなってもらっていいか?」

『仕方ないな……』


 太一がお願いすると、ルークは一メートルほどの大きさになった。これならば、警備兵に警戒されたり、街の人たちに怖がられることもないだろう。


(緊張するなぁ……)


 国境を通る列に並びながら、ドキドキする。

 別に悪いことをしているわけではないのだが、兵士とは今までも関りがなかったので、落ち着かないだけだろうか。


『通るのに並ばないといけないなんて、人間は不便だな……。山の中でも通っていけばいいじゃないか』

「それは駄目だろ……」


 確かに、国境といってもずっと壁が続いているというわけではない。

 しかしそれでは、国境が意味をなさなくなってしまう。


「別に悪いことをしてるわけでもないし、まして俺はフォレストキャットをテイムしに行くんだからな。きちんと手続することも大事だぞ」


 それに、好き勝手して兵士に目をつけられたらたまったものではない。平和にカフェ経営をして過ごすというのも、大事なことだ。


(うちにはルークやケルベロスがいるからな……)


 この二匹が実はすごい魔物だということは、秘密にしている。そのため、太一以外にフェンリルとケルベロスだと知る者はいない。

 ……ことになっている。



 しばらく待っていると、太一の順番がやってきた。


「うお、大きな……これは、ウルフ系の魔物か?」

「いい毛並みをしているな」


 警備兵の二人がルークに驚くも、どうやら魔物には慣れているらしい。ルークも毛並みを褒められてうれしそうだ。


「こんにちは。俺はテイマーの太一。こっちは、従魔でウルフキングのルーク。人に危害を加えるようなことはしません」


 自己紹介をしつつ、太一は自分の『テイマーカード』を見せる。これが、この世界で太一の身分証明をしてくれる。

 名前と、テイマーギルドランクの『F』が記載されている。


「ウルフキングか! 本物は初めてみたぞ」

「すごいなぁ、よくテイムできたもんだ。きちんと登録もされているし、問題はないな」


 すぐに通っていいという許可が下り、太一はほっと胸を撫でおろす。


(ルークも大人しくしてくれててよかったぁ)


 いつもだったら、『ウルフキングとはなんだ!』と怒ってくるのだけれど……成長したものだと太一は感動を覚える。

 ……まあ、ルークの顔は不機嫌そうだけれど。


「ありがとうございます」

「ああ、気をつけて」


 すんなり国境を越え、太一とルークはアーゼルン王国の大地を踏みしめた。



 ***



 アーゼルン王国に入って二日ほどで、フォレストキャットが生息している森の近く――大森林の街『フォレン』だ。

 街の周囲には野生動物や魔物が多く生息し、兵士や冒険者も多い。危険は多いけれど、警備面もしっかりしている。


 路面店も多く、木などの自然物を扱ったものが多い。


(見てるだけでも楽しいなぁ……)


 木の食器はぬくもりがあって、もふもふカフェでも使いたい。木彫りの置物は、受付に飾ってみてもいいかもしれない。


『なんだ、そんなものがほしいのか?』

「よくできてるだろ?」


 太一が手に取っていたのは、魔物をモチーフにした木彫りの置物だ。クマが鮭を銜えているものはないけれど、勇ましいポーズをとっているものはある。

 ウルフが子ウルフと昼寝をしているやつなんて、最高に可愛い。


「ほら、これなんかルークに似てないか?」

『そんな弱いやつらと一緒にするな! オレはフェンリルだぞ!!』

「いやいや、外見の話だって!」

『俺の方が強そうだ』


 どうやらかたくなにウルフと一緒にされるのが嫌なようだ。太一が肩を落とすと、店主から「従魔には気に入ってもらえなかったかい?」と声をかけられた。


「俺はすごくいいと思うんですけどね……すみません」

「いやいや。これはウルフを見て彫ったからね、その従魔は……もっと強い魔物だろう? そりゃあ、一緒に考えたら失礼だ」

『なんだ、わかっているではないか!』


 ルークが『その通りだ!』と鼻息を荒くする。


「しかし大きいね……フォレンには来たばかりかい?」

「そうです、つい今さっき。だから、これから宿も探さないといけなくて」


 だからまだ、のんびりお店を見て回る前に拠点を決めなければいけない。

 フォレンは大きな街なので、テイマーの数も多いだろう。そうなると、テイマーギルドに早めに行って宿の確保をしたいところだ。


(大きな荷物を従魔に引かせている商隊もあったからなぁ)


 そんなことを太一が考えていると、「それなら」と店主が近くの通りを指さした。


「そこの道をしばらく歩いた右手側にある、『フォレストキャット亭』っていう宿がおすすめだよ」

「え、それは素敵な名前……」


 ではなく。

 ではなくはないのだが。


「従魔がいるので、宿は断られてしまうと思うんですよね。だから、テイマーギルドの宿泊施設を利用しようと思って」


 ルークがいるため基本的に断られてしまうことを説明すると、大丈夫だと首を振られてしまった。


「そこは元テイマーが経営している宿でね、従魔もオッケーなんだ」

「おおおおぉぉ、それはありがたいです!」


 テイマーギルドの宿泊施設も悪くないのだが、せっかくなので宿に泊まりたい。

 なんなら温泉がついていれば最高だけれど……さずがに異世界でそこまで高望みはしない。お風呂文化すらまだあまり浸透していないから。


『オレが泊まれるとは、なかなかわかっている宿じゃないか』

「ルーク」


 ふふんと鼻を鳴らすルークに苦笑して、ひとまずその宿に行ってみることに決める。


「ありがとうございます、行ってみます」

「ああ。俺も世話になっているところなんだが、とてもいい子だからよろしく頼むよ」

「はい」


 太一はもう一度店主にお礼を告げて、フォレストキャット亭へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告です。 「さすが」が「さずが」になってます。(下から18行目) [一言] キュンキュンしながら読ませてもらってます!! もふもふ最高~!! ルークのツンツンにもキュンキュンしち…
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