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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第一章 テイマー、もふもふフェンリルと出会う
33/90

33 隣の国へ行きたい!

「ルーク、ルーク!!」

『気持ちよく寝ていたのに、なんだって言うんだ』


 太一が名前を呼びながら家に戻ると、不機嫌そうなことを言いつつ、自分に一番に声をかけてもらえたことが嬉しくてしっぽをふるルークがいた。

 それを見てにやにやしたいが、言ったらルークに怒られてしまうのでお口はチャックだ。


「実は、隣の国に行きたいんだよ」

『隣? アーゼルン王国だったか』

「知ってるのか?」


 太一が話を聞くためルークの横に座ると、膝の上にケルベルスが乗ってきた。どうやら一緒に話を聞くようだ。

 ただならぬ空気を察したのか、ベリーラビットたちも大集合して太一の周りがもふもふだらけになる。


(ここは天国なのか……?)


『何しに行くの?』


 膝に乗ったクロロが不思議そうに問いかけてきたので、太一はよくぞ聞いてくれましたと口を開く。


「隣の国――そのアーゼルン王国の森にいる、フォレストキャットをテイムしようと思うんだ」

『仲間が増えるの?』


 ぱっと嬉しそうにしたのは、寂しがり屋のノールだ。


(よかった、嫌じゃなさそうだ)


 そのことにほっとして、太一は話を続ける。


「それで、馬車で行くと一ヶ月くらいかかるって言うんだ」

『一ヶ月? ふん、人間に媚を売る馬はやはり遅いな! オレのように崇高なフェンリルにかかれば、あっという間だ!』

「ルークはすごいな」


 馬の扱いが酷いけどと思いながらも太一が褒めると、ルークは『そうだろう!』と誇らしげにしている。


『タイチがどうしてもと言うなら、背中に乗せてってやらんこともないぞ!!』


 ルークを煽ててアーゼルン王国に連れて行ってもらおうと思っていたが、自分から行くと言い出してくれた。


 しょうがないなぁと言っている風なのに、尻尾がめちゃくちゃ揺れているのが最高に可愛い。

 太一がルークを見てにまにましていると、『なんだ……』とじと目を向けられてしまう。


「えっ! いや、ルークが連れてってくれるって言うからさ。嬉しくて!」

『そ、そうか? ふふんっ』


 喜んでもらえたことが嬉しかったのか、ルークの頬もわずかに緩む。

 すると、自分だけ頼りにされなかったからかケルベロスが『ボクも行きたい!』と声をあげた。


『ボクの背中に乗っていいよ!』

『おい、これはオレとタイチの話だぞ!』

『えぇ~!』


 勝手に話に加わるなとルークが言うと、ケルベロスは不満そうに頬を膨らめる。


『お前はオレに負けたんだから、従うのは当然だろう!』

『ぐぬぬ~!』

『これはひどい正論!!』

『お留守番なんて寂しい……』


(弱肉強食的な……)


 どうやらルークはケルベロスに戦いで勝ったので、上下関係ができあがっているようだ。

 とはいえ、決着がつく前に太一がケルベロスをテインミングしてしまったけれど。


 太一はどうしたものかと思いつつ、ケルベロスを見る。


(連れてってやりたいのはやまやまなんだけど……)


 そうなると、ベリーラビットたちだけで留守番をさせることになってしまう。それはきっと、よろしくない。


(ピノとクロロとノールがいれば、ベリーラビットたちをまとめ上げてくれると思うんだよな)


 そのため、留守番をしておいてほしいというのが太一の考えだ。

 全員で行けたらいいが、さすがにそんな大移動は難しい。帰りは可愛い猫ちゃん……フォレストキャットも増える予定なのだ。


「ピノ、クロロ、ノール、お前たちにはここでベリーラビットたちを見ていてほしいんだ。俺とルークのいない間だから、お前にしか頼めなくて」

『えっ!』

『ボクたちにしか……?』

『たのめないの!?』


 ケルベロスは太一に頼られたのが嬉しかったようで、目をキラキラしながら尻尾を振る。ちぎれてしまうのではと心配してしまうほどの勢いで、太一が思わず手で触れる。


『ふふー、もふもふでしょ?』

「とっても!!」


 笑うケルベロスに、太一は力いっぱい頷く。もっと触っていいよとばかりに尻尾を振ってくるので、もふもふする手が止まらない。

 これはやばい……。


(はあぁ~すきいいぃ~~)


 もうこのままもふもふに埋もれて死んでしまいたい……。そんな衝動に駆られていると、ルークの尻尾がべしんと太一の顔面にヒットした。


『デレデレしてるんじゃない! だらしないぞ!!』

「あっハイッ……」


 太一は反射的にきゅっと唇を引きしめて、正座する。


『お前も留守を任されたくらいではしゃぐんじゃない! それくらいできないでどうする!』

『わわわっ、ちゃんと留守番をします!』

『お任せを!!』

『頑張るよ!』


 ルークが喝を入れると、ケルベロスが背筋を伸ばしてしゃんと座る。まるで訓練された軍隊みたいだ。

 しかしそれももふもふが言っていると可愛くて仕方がない。


『ふん、わかっているならそれでいい! いいか、オレとタイチが留守にしている間、この家を守るんだぞ!』

『『『ラジャー!』』』


 二匹の間で話が進んでしまったが、さすがにそれだと餌の用意が難しい。長期間になるので、水と食べ物を置いておくわけにもいかない。


(……短期間だけのバイトって、雇ったりできるのかな?)

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