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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第一章 テイマー、もふもふフェンリルと出会う
30/90

29 察した冒険者たち

 もふもふカフェでは、開店直後が魔物たちのご飯の時間になっている。そのため、最近は開店と同時にきてくれるお客さんも増えた。

 とはいっても、ほとんどが常連客だけれど……。


 カランとドアベルがなり、いつもの冒険者三人組がやってきた。


「いらっしゃいませ。いつもは冒険帰りの夕方なのに、今日は早いんですね」


 太一が迎え入れつつ問いかけると、グリーズが疲れた表情を見せた。


「実は早朝から緊急招集があって、今まで働きっぱなしだったんだ。まあ帰って寝るだけなんだが、それならもぐもぐタイムを見て帰ろうと思ってさ」

「そうだったんですか……。お疲れ様です」


(早朝から呼び出されるなんて、それなんてうちの会社だ?)


 いや、もう死んで異世界転移したから元勤め先……だろうか。どこの世界でもブラックはなくならないものだなと、太一は首を振る。


 こんなときにもふもふで癒されたい気持ちもよくわかる。


「あ、そうだ。いつも来てくれてますし、よかったら餌をあげてみますか? ……ほかの人には内緒ですけど」

「本当か!?」

「やったー!」

「――!!」


 グリーズ、ニーナ、アルルがそれぞれ嬉しそうな反応をしめす。アルルだけは何も言わないが、気になっているようだ。


「今日から新入りも加わったので、餌の数が増えたんですよね」

「おお、もふもふが増えるのはいいな!」

「でしょう! おいで、ピノ、クロロ、ノール」

『わんっ!』


 太一がケルベロスを呼ぶと、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。そのまま太一に飛びついて、ほっぺをペロペロしてくる。


「えっ!」


 それを見て驚いたのは、グリーズたちの三人だ。

 ケルベロスを構っている太一から少し離れ、聞かれないように小声で話す。


「あの犬……? なんで顔が三つあるんだ?」

「私たちが早朝に必死で探した突然消えたケルベロスも、首が三つあったよね……?」

「首が三つある魔物なんて、普通はいないわよ!」


 グリーズたち三人が早朝から冒険者ギルドに緊急招集されたのは、廃墟にいたケルベロスがその姿を消してしまったからだ。

 大きなウルフ系統の魔物と戦闘に入ったというところまでは見張りの冒険者から連絡はあったが、戦闘途中に気を失ってしまったため結末は誰も把握していないのだ。

 そのため、ケルベロスがどこかに移動していないかなどを調査していたのだ。――結果として、誰も見つけることはできなかったが。

 あの強いウルフとの戦闘でやられてしまった。そういう判断しか、冒険者ギルドにはすることができなかった。


 ――という事情をグリーズたちは知っているため、体長が三〇センチといえど、首の三つある魔物なのでケルベロスでは……という結論に辿り着いてしまったのだ。


「もしかして、あそこの廃墟にいたケルベロスの子ども……とかじゃないか?」


 グリーズが仮定を立てると、ニーナが「ありえる!」とさらに経緯を想像する。


「あそこの廃墟にずっとケルベロスがいたのは、きっと子どもを守ってたのよ!」

「……そう考えると、辻褄は合うかもしれないわね。ケルベロスは子どもを守るため、ウルフと戦い……ってことかしら」

「それだ!」

「それよ!」


 そして偶然通りかかったかもしれないテイマーの太一が、ケルベロスの子どもだとしらずにテイミングしてしまった……あり得る話だ。


「それにしても、ケルベロスの子どもをテイムなんて……そんなことできますの?」

「うぅ~ん。テイマーって、不遇職だとばかり思ってたけど……タイチはなんだか不思議だよね。従魔もたくさんいるし」


 アルルが悩むも、ニーナは太一ならば……と思っているようだ。


「……まあ、テイムしているのであれば魔物は安全だ。可愛いし、俺たちは……何も気づかなかったんだ」

「そうね。ただ首が三つある可愛いわんちゃんね」

「たとえケルベロスの子どもでも、テイムしてしまったらわたくしたちにはどうしようもないもの」


 安全だ。

 ということで、ヒソヒソ話は無事にまとまった。


「話し合いは終わったんですか?」


 太一はグリーズたちが何か話をしている間に、朝ご飯の準備を終わらせていた。

 ベリーラビットたちにはニンジンと苺、ルークには肉盛りと野菜、そしてケルベロスには果物の盛り合わせだ。


 最初は肉を用意していたのだが、本人の希望で果物になった。


「ああ! すまないな、もう大丈夫だ」

「いえいえ。冒険者という仕事柄、どうしても話せないこともあるでしょうし」


 気にしないでくださいと、まさか自分のことを話し合われていたとは夢にも思わない太一が微笑む。

 三人にニンジンと苺の入ったお皿を渡して、もぐもぐタイムの時間だ。


「ほら、ルーク、ピノ、クロロ、ノール! ご飯だぞ」

『やっと食事の時間か!』


 まっさきにルークがやってきて、用意していた肉に美味しそうにかぶりつく。まさに豪快だ。

 ケルベロスは、ゆっくり味わうように食べている。


『わー! この林檎美味しい~』

『この果物はなんだろう? でも、美味しい~』

『みんなで食べるご飯って美味しいね~!』


(賑やかだなぁ)


 ケルベロスが一匹増えただけなのだが、首が三つあるので賑やかさは三倍だ。


 すぐ横では、グリーズたちもベリーラビットに『こっちにおいでー!』と声をかけてご飯のお皿を置いた。

 すると、すでに臨戦態勢だったらしくダッシュでお皿へ向かってきた。小さな口で一生懸命もぐもぐしている姿は、実に可愛らしい。


 ケルベロスが増えましたが、今日ももふもふカフェは平和です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] また今さらですが、ケルベロスの従魔登録をギルドでしましたか?
[気になる点] クマやパンダもモフモフに入りますか?登場したらいいと思います!
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